我こそは佐藤である!
うちには、どうやら佐藤と呼ばれる何かがいるらしい。
小さい頃、家族で出かけて帰った後にお父さんの部屋に、灯りがついていると、お父さんは、
「佐藤さん、また、電気をつけっぱなしだ!」と言った。
これは、まだ小さい僕なりに、厳しいうちの母親に怒られないように、父さんなりにボケて和ませようとしていると思っていた。
そう言えば、兄がふざけて馬鹿なこと事をしている時も、
「おまえ、誰も見てないとか思って馬鹿なことしてるけど、
佐藤さんはみてるぞ!」と、父さんはたしなめていた。
こんな感じで、僕が小学生に上がったばかりの頃は、佐藤さんが話題にあがるのは主に父さんからだった。
佐藤さんが話題に出る時、父さんはいつも笑顔だった。母さんも笑っていたし(内心は、またくだらない冗談をあの人は…と考えていたんだろう)、兄も笑っていたので家族じゃない人がうちにいると言うのに、怖いとか思ったことはなかった。
「佐藤さんって何なの?」
父さんに聞くと、よくわからんが、床下に住んでいるとの事。
いろいろとおかしい…。
まず、うちの苗字は佐藤なんて、名前番付に常に存在する強豪ではない、むしろマイナーよりな、高丘と言う。
ちなみに僕の名前は、快い人になれと願いを込められた、快人だ。
うちには、床下に部屋など無い。
僕がまだ幼稚園に通っていた頃に買った、典型的な建売住宅だ。
床下には収納ボックスがキッチンにあり、中には非常時の水の入ったペットボトルが数本はいっている。
僕が中学に入ったくらいは、たまにとは言え、佐藤さんの事は、お父さん以外の会話にも普通に出るようになっていた。いわく、
「佐藤さん、俺のおやつ食ってる!」
「佐藤さん、今日は雨が降るって言ってたよ。」
「佐藤さんの言うこときいて、洗濯を外に干さなくて助かったわ」
適当な事を、架空の佐藤さんがいるように、皆んなが何となく話していた。
読んでいただきありがとうございます。
暖かく助けて頂けると助かります。




