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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第九十五話 世界の繋がり

 おかしい。

 思ってたのとだいぶ違う。


 なんだか二人がいい感じでいい空気のいい話になってたもんだから、私は口も挟まず全力で気配を消していたのに……。


 うちの天使め、悪魔だったか。


「ではガーネット、またいずれ」

「ああ」


 そう言ってマチルダはガーネットの元を去り、そして他のみんなと帰って行った。


 私一人を取り残して。


「鍛治師エト」

「は、はい。な、何かな?」


 そのガーネットの声は思ったよりも平坦だった。

 てっきり怒りの籠った声で来るのかと思っていたが、まるでそんな感じはなく、どちらかと言えばとても真剣そうな声色だった。

 それはそれで怖いのだが。


「安心しろ。私は別に、先程の件でキミを怒ったり何か説教をするつもりもない。まあ、随分ふざけた真似をしてくれたとは思うが」

「そ、そうなの?じ、じゃあ何よ」

「言った通り、キミと話をする為だ。まあ、キミが望むのなら、先程の所業についてじっくりと詰めてからでも私は別に構わな」

「話をしましょう」


 そう、人は話せばわかるのだ。

 話して分かり合う生き物だ。

 話せばわかる。何事も。

 あの時のあれは私のちょっとした悪戯で、悪意はない。

 ちょっと雰囲気がサフィアに似ていたので、同じ様な絡み方をしてしまっただけだ。

 なので総合してまとめると、これはサフィアのせいと言えなくもない。

 そうだ。そう言う事にしておこう。


「そうか。ならば良かった」

「ま、まあ、私もあなたには聞きたい事が無いでもないし」


 そう。それは本当だ。

 これまでのガーネットの言葉には気になる点が多すぎる。

 むしろ、これはいい機会だったかもしれない。


「ほう。聞きたい事か。ちなみに何だ」

「それは、」


 ただ、その気になる点を問い詰めるとなると、その問い詰める内容によってはそれに関して私も何か知っているという事の証明になってしまう。


 別に私の細かい素性が他人にバレる事自体は気にしないが、ただ、このガーネットに限っては、それが今後どのような意味を持つのかわからない。

 それだけに、私は慎重に言葉を選ばざるを得ない。


「なるほど。キミのその警戒はとても正しい。思ったよりもなかなか頭が回る様だ。しかし、ならばそこで言葉を詰まらせたのは良くなかったな。やはりキミは、500年前から来た冒険者と言うだけでは無さそうだ」

「……」


 そう言ってこちらを真っ直ぐに見つめるガーネット。

 確かに、あの場面での逡巡は、何か裏に思惑があると思われても仕方ない。

 別に企みとか無いんだけど。


「沈黙か。まあ、話したく無いと言うのなら別にそれでも構わない。だが、素直に話してくれた方がこちらとしても手間が無くて助かるんだが」


 それって、話さないなら手間のかかる方法で聞き出すって事だよね。

 まずいな。こんな所でガーネットと戦闘とかまっぴらゴメンだ。

 多分、私じゃとても勝てない。

 何故だかわからないが、それだけは理解できる。


「……」

「どうする。私はただ情報交換をしようと言っているだけだ。キミも聞きたい事があるのだろう?」


 かと言って、情報を伏せながらこのまま腹の探り合いを続けても、結局ろくに情報も得られず、ただ、ガーネットとの関係を悪くするだけだ。

 だったらいっそ、開き直って直球で聞いた方がマシな気がする。

 既にこれだけややこしい展開になってるんだから、いまさら何が起こったとしても、そんなのはほとんど誤差みたいなものだ。

 まあ、その誤差の尻拭いをするのは多分マチルダ達になるんだろうけど、それは私を見捨てた罰って事で。


「ああ、もう。わかったわよ。話せば良いんでしょ。話せば。でも、そっちの事もちゃんと聞かせてもらうからね」

「勿論だ」


 とは言え、ガーネットが本当の事を言うかはわからない。

 ……が、そんな事を疑い出したらキリがない。

 それが本当のことかどうかは後で考えれば良いのだから、取り敢えず今は、少しでも多くの情報を聞き出す事が重要だ。

 少なくとも、ガーネットが私の知らない情報を知っている事は、恐らく間違いないのだから。

 

「わかったわよ。で、なに。私のスリーサイズなら教えないわよ」

「まあ、それも興味深くなくも無いが、あまり利用価値を感じないので結構だ。それよりも」


 そう言うとガーネットは、視線を私の顔から下に下ろし、途中で「ふん、」と鼻で笑うと、そのまま私の腰のポーチに視線を向けた。

 

「それは“無尽蔵のポーチ“というやつだな。私も見るのは初めてだが、とても希少なレアアイテムだ」

「……それが何よ。てか、今どこ見て笑ったのよ」

「何の事だ。気のせいだ。それよりそのポーチは、キミが自分で作ったものか」

「は?そうだけど。まあ、素材は仲間と集めたけど。って、それよりさっきの笑いはーー」

「そうか。となると裁縫スキルもカンストか。それに、レアドロップ素材まで自力で集めるとは相当だ。なるほど。キミはいわゆる廃プレイヤーというやつか」

「あん?アンタそれ私を褒めてんのか馬鹿にしてんの……か……って、えっ!?」


 あれ?

 いま、廃プレイヤーって言った?

 スキルカンストとかレアドロップとかも……。

 何でそんなゲーム用語が……。

 もしかして、ガーネットも私と同じ……。


「その反応は間違いないな。やはりキミは本当にあの時代の冒険者という事か」

「ちょっと、ガーネット!!もしかしてアンタも!?」

「いや、私は違う」

「でも!!」


 私は思わず取り乱し、声を荒げてガーネットに掴み掛かる。

 そんな私にガーネットは、そのまま動かず私を見つめ、

 そしてゆっくりと優しくその手を引き離した。


「落ち着け。まずは先に、キミが勘違いしているであろう事実を、ここで一つ正しておこう」

「……どう言う事よ」


 私はそう言うとガーネットにつかみ掛かっていた腕を戻し、一旦気持ちを落ち着かせる。


「まず大前提として、この世界は今も昔も、ゲームの世界だったことはない」

「え」


 ガーネットの口から突然出てきた“ゲームの世界“というワード。

 突然の言葉に私は思わず目を見開き、驚きのあまり言葉を失い固まってしまった。


「それこそ、キミがプレイヤーとして存在していた500年前より、もっと遥か昔からな」

「……」


 間違いない。

 ガーネットはゲームの知識を持っている。

 プレイヤーなんて言葉、普通なら絶対に出てこない。

 しかし、だったら今の発言はどう言う事だ。

 この世界がゲームの世界でないのなら、ガーネットはどうしてゲームの事を知っているのか。

 言ってる事が矛盾している。


 ガーネットが嘘を言っているのか、それとも他に私の知らない何かがあるのか。

 私はどうしても、ガーネットに懐疑の視線を向けざるを得なかった。


 そんな私の視線を受けて、ガーネットは少し肩を落として小さく首を横に振った。


「ならば納得できるように話してやろう。キミ達がこの世界に現れるより少し前、この世界のとある地域に、ゲームの世界が召喚された」

「……は?」

「召喚したのはこの世界の人間だ」

「え、ちょ、ゲームの世界を……召喚!?」

「そうだ。そしてその召喚の際に、同時に一つの都市も召喚された。それが、“城塞都市ソレント“だ」

「え……」


 ガーネットは私の目を真っ直ぐ見つめながらそう言った。


 ソレントを、この世界に召喚した??

 もしかして、この世界がゲームの世界なのではなく、召喚されたゲームの世界が部分的に存在している世界……?

 もし本当にそうだとしたら、それって……


「そして、その城塞都市ソレントから現れたのが、」

「!?!? ちょ、ちょっと!それってまさか!!」

「そう。キミ達、冒険者プレイヤーだ」

「なっ!!」


 そんな無茶苦茶な!!


 と言う事は、私はゲームだと思いながら、この世界の中をプレイしていたって事!?!?


 ……そうか!確かこの城塞都市ソレントは、エターナルワールドオンラインのプレイ開始時のスタート地点……。

 まさか、私がこのゲームを始めた最初から、ずっとこの世界で……!?


「キミがゲームで見ていたあらゆるものは、現実に存在するこの世界に他ならない。キミはそのゲームという媒体を介して、こちらに干渉していたと言う事になる」

「そ、そんなこと……」


 そんな事、信じられない。

 そんな荒唐無稽な事、とても信じられるはずがない……。


 でも、考えれば考えるほど、悔しいくらいに全てに説明がついてしまう。

 この城塞都市ソレントとその周辺、そしてそこから現れた私達冒険者達にだけ、この世界の理とは異なる、プログラム的な摂理が働いていたのだとすれば。

 私のスキルやステータス、それに、この装備やエリクサーなどのアイテムが、私たち冒険者のいなくなった今の時代に於いて、全てロストテクノロジーとなっているのも辻褄が合う。


 いや、そんな馬鹿なことって……。


「それを踏まえて、最初のキミからの質問についてだが。恐らく、こう言えばキミにはわかりやすいか」


 ガーネットはそこまで言うと、そこで一度言葉を区切り、そして静かに言葉を続けた。


「私はかつて、NPCと呼ばれていた存在だ」

「!?!?」




読んでいただきありがとうございます。

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