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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第九十四話 不毛な争い

 今、私の目の前にはとても不思議な光景が広がっていた。


「お、お前ら、何をいきなり」


 そこでは、あの仮面の男ガーネットが、十人ほどの剣やシャベルやバールの様な物を振り回す男達に囲まれて、何故か総攻撃を受けていた。


「黙れ!俺たちがマチルダの嬢ちゃんを助けるんだ!!」

「そうだ!嬢ちゃんの腕をあんなにしやがって!!」

「絶対に許してなるものか!!たとえ死んでもお前だけは許さない!!」

「喰らえ!ワシの二刀流シャベルの破壊力を!!」


 どうやらこの男達は、マチルダの親父さんの仕事仲間の人達らしく、マチルダのピンチを知った親父さんとその仲間達が、一気呵成に乗り込んできたと言うわけだ。

 そして、なぜガーネットが襲われているかと言うと、


「落ち着け、むしろ私は助けに」

「デタラメを言うな!!こんな怪しい仮面を着けた奴が、味方なわけがないだろうが!!」

「そうだ!白々しいにも程があるぞ!!俺達そがんな嘘に騙されると思うなよ!!」

「悪党め!!俺がこのバールのようなものでお前の仮面を引っ剥がしてやる!!」


 と、言う事らしい。


 うん、そうだね。確かにあの仮面は怪しいけども。


 ちなみに、男達の怒涛の波状攻撃は、当然ガーネットに当たる訳がなく、まるでモグラ叩きでもしているかの様に、全て軽々と片手だけで叩き落とされている。

 それでも男達は攻撃をやめず、ひたすらガーネットに襲いかかるが、どうやらそろそろバテ始めて来たらしく、その攻撃はみるみるうちにグダグダなものになって来ていた。

 

 いくら冒険者ではないただの一般人の戦いとは言え、なんと言うか、これは酷い。


 そんな男達のもはや攻撃と言えるのかも分からない攻撃の相手をしているガーネットは、バネの壊れたモグラ叩きを続けながら、ゆっくりとこちらに顔を向けた。


「……」

「……」


 何だろう、仮面のせいで表情は一切わからないはずなのに、めちゃくちゃ困っていそうな様子が感じ取れた。


「どんまい!」

「……」


 うん。私に助けを求められても私も困る。

 そんな仮面を着けてるのが悪い。


「さて、マチルダさん。そろそろ何とかしてあげた方が良いんじゃないの?流石にこのガーネットも困ってるっぽいし」

「あ、ああ。それはそうなんだが……」

「それに、私への視線にどんどん殺気が混ざり始めてちょっと怖いし」

「それは知らん」


 流石にそろそろガーネットが可哀想だと思えて来たので、あの集団の身内であるマチルダにそう声をかけるも、マチルダは何だか歯切れの悪い様子で、こちらはこちらで何やら困った様な顔をしていた。

 

「どうしたの?」

「いや、自分で言うのもあれだが、私は彼らにだいぶ気に入られているみたいでな」

「え?あー、うん。まあ、だいぶと言うか過激と言うか」

「聞くと、彼らは私をまるで自分の実の娘の様に大事なんだと」

「ほう。愛されてるね。羨ましくはないけど」


 いきなり何の話だろう。

 マチルダがあの人達にかなり好かれているのは見ればわかる。

 だったらそんなアイドルみたいなマチルダになら、こんなのはすぐに収めらると思うんだけど。


「でだな、この状況でそんな私が、ガーネットとか言う見知らぬ男を庇う様な真似をしてみろ。どうなると思う」

「ああ……」


 俺の娘に手を出したのか!とか言って騒ぎ出すのが割と容易に想像できる。


 そして、彼らの中でのガーネットはただの怪しい悪い奴から、娘をたぶらかした上に傷モノにまでした許されざる大悪党として、ストップ高のランクアップをしてしまう。

 流石にだいぶ可哀想だ。


「私がずっとソロで冒険者をやっているのも、それが理由だ」

「なるほど」


 冒険者のほぼ大半は男性だから、パーティーを組めば高確率で男が混じる事になる。

 その度にこんな事が起きていては、冒険どころじゃないだろう。

 アイドルにも色々と苦労があるんだなあ。


「じゃあ、あれはどうするの?放って帰る?」

「……お前はあいつに恨みでもあるのか??」

「いや、ないけど」


 別に恨みはないけど、思うところはいくつかある。

 ガーネットは明らかに、私に何かを隠している。

 結局さっきもうまく話をはぐらかされたし。


「まあ、放って帰るのは却下だな。それに、もうそろそろ終わるはずだ」

「え??」


 マチルダのその言葉に私は改めて視線を戻すと、ガーネットを取り囲んでいた男達が、次々とその場で倒れ始めた。


 え?なに!?ガーネットがいよいよキレて何かした!?!?


「思った通りスタミナ切れだ。彼らは基本、その場の勢いだけだからな」

「……」


 あれだけ散々騒いでおいて、最後はぐだぐだになって勝手に自滅。

 結局彼らは何がしたかったのか。

 いや、マチルダを助けに来たんだったか。

 助けるどころか迷惑しかかけてないけど。


「私の身内が申し訳ない。責任を持って私が連れて帰るよ」

「う、うん。あ、私も運ぶの手伝うよ。その腕じゃこの人数を運ぶのは厳しいでしょ」

「……そうか、助かる」


 マチルダは申し訳なさそうにそう言うと、近くでこの騒動を見守っていたエルヴィンとアラン、そしてシーラも、「私達も手伝うわ」とマチルダに声をかけて駆け寄り、そして、あの男達を途中まで必死に抑えていたマリンとサラとエイナの三人も、「私達も!」とか言いながら、こちらの方へとマリンを先頭にして駆け寄って来た。


「ごめんなさい、エトさん、マチルダさん。最後まであの人達を抑えきれなくて。もちろん私達も手伝います」

「ああ。ありがとうマリン。それとサラとエイナも。私の親父達が随分と迷惑をかけてしまったな。あれを実力行使無しで抑えるのはそもそも無理だから、マリン達が気にすることはないよ」


 マチルダはそう言って、にこりとマリンに微笑みかける。

 普段は凛々しく格好いいイメージのあるマチルダだったが、時にはこんな顔もしたりするのか。

 あの男達がマチルダを猫可愛がりする気持ちも、今なら少し理解できる。


 色々あったが最後はいい感じで終わったなあと、私もついつい笑顔を浮かべて一人ほっこりとしていると、何だか私の後ろの方から、やけに鋭い嫌な視線をピリピリと感じる。


 私はゆっくり、本当にゆっくりと、少しずつ少しずつ、誰にも気づかれないくらいの動きで、顔と視線を後ろの方へとそろりそろりと動かすと、バシッ!とガーネットと視線が合った。


「……」

「……」


 私はゆっくり顔を戻す。


「鍛治師エト。少し話があるのだが」

「ヒイッ!!」


 無いです!

 私には話は無いです!!

 そんな殺気を出してる人と話す事なんて何も無いです!!


「あのぉ、エトさん」

「え?な、なにかなマリンさん」


 その時、急にマリンが私に話しかけて来た。

 ナイスタイミングだよ!マリンさん!!

 このまま適当に誤魔化してガーネットから逃げ


「あの、お話があるなら手伝いは私達に任せて貰って大丈夫ですよ!戦闘ではあまり力になれなかったので、このくらいは任せて下さい!」

「え?……いやいやいやいや!!」

「ええ、そうね。エトちゃんは戦闘で疲れてるだろうし」

「いや、ちょ!!」

「ああ、そうだな。これ以上エトの手を煩わせるのも申し訳ない。まあ、しっかりと怒られて来い」

「マチルダさん!?!?」


 多分マリンのは完全な善意での言葉だろうが、その後のシーラさんとマチルダの二人は完全に私を面白がっている。


 思わぬ裏切りに衝撃を受けた私は、思わずその近くにいたエルヴィンの方へと、助けを求めて顔を向けた。


「まったくお前と言う奴は……。エト、どんまい!!」

「なっ!?」


 くそ!!お前もか!!

 お前も私を裏切るのかあああっ!!

 親指を立ててグッ!じゃないんだわ!

 ここでそのサムズアップとか何の煽りよ!!


 そして結局、私はみんなにガーネットの元へと連れて行かれ、マチルダ達はエイナが土魔法で作り出した大きな硬い板の上に、男達を運び始めた。

 どうやらあの男達は、あれに載せられ運ばれて行くらしい。


「ほう、なかなか面白い運び方だ。あれならキミの手伝いも必要ないな。ゆっくりと話が出来そうじゃないか」

「出来ちゃいますねえ……」


 私はまるで蛇に睨まれた蛙の様に肩をすくませ、そう言いながらも逃げ道をさがす。


 ……


 ……


 ……


 ……うん、なさげだ。


 私が諦め悪くそんな事を考えていると、マチルダが一人でこちらの方へとやって来た。


「マチルダさん?」

「いや、少し様子を見に来てみただけだ。この腕では逆に邪魔になるからな。あと、改めて挨拶をしておきたくて」


 あれ??

 もしかしてマチルダさん、私を助けに来てくれた!?

 あんた、なんてええ人なんや……。


 マチルダさんマジ天使!!マジ女神!!

 やっぱりマチルダさんしか絶対勝たん!


 私は心の中でそう何度も叫びながら、マチルダの方を見て涙を流す。

 マチルダはそんな私に少し苦笑いの顔を浮かべ、そしてガーネットの方へと向き直った。

 お願いします!マチルダ様!!


「ガーネット。先程は親父達がとんだ迷惑をかけてしまってすまなかった。本来ならば私が収めなくてはいけなかったのに、何も出来ずに本当にすまない」


 マチルダはそう言うと、ガーネットに向かって深く頭を下にさげた。

 やっぱりマチルダさんは出来た人だ。


「気にするな。概ね事情は理解している。キミも色々と苦労しているようだな」

「聞こえていたか。まあ、悪い奴らではないんだが」

「わかっている。親なんてのはそんなものだ。愛されている証拠だろう」

「そうか。そう言ってもらえるととても助かる」


 マチルダはそう言うと、少しはにかみ、再度小さく頭を下げる。


 うんうん。さっきも一度思ったけと、マチルダさんにはこんな可愛いところもあったんだよね。

 今日はちょっと得した気分だ。

 

 そしてマチルダは頭を戻すと、また申し訳なさそうな表情を作り、ガーネットに向かって言葉を続けた。


「本来ならば何か礼をしなくてはいけないところなんだが……しかし、親父達が起きる前にここを出ないと、また面倒な事になってしまう。なので申し訳ないが私は先に失礼させてもらう」


 うんう、えっ??


「ああ、それがいい。私としてもその方が助かる」

「すまないな。礼はいずれ。取り敢えずエトは置いて行くので気の済むまで話をしてくれ」

「ああ。そのつもりだ」


 あれ!?マチルダさん!?



読んでいただきありがとうございます。

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