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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第九十三話 隠し事

「消えたか。どうやらこれで終わりの様だな」

「ええ、取り敢えずはね」


 カラミティが消え、私達はこの戦いに於ける一応の結末を迎える事ができた。

 だが、結局最後はカラミティを逃がす形で終わり、実際のところは何も解決していない。

 解決どころか、むしろ謎が増えただけで、この先のことを考えると頭が痛い。


 だがそれでも、私達はこの戦いをギリギリ何とか生き延びたのだ。今は素直にそれを喜んでおくべきだろう。

 でなきゃ、体を張ってまで私を助けてくれたトコに、きっと怒られてしまいそうだ。

 怒ったトコの毒舌は、地味に破壊力があるからね。

 

 トコは私が必ず直す。

 そしてトコが元気になったら徹底的に甘やかそう。

 そして後日談でも話してあげよう。

 きっと興味なさそうに、でも、ちゃんと聞いてくれるだろう。


 私はそんな事を考えて、気持ちを一旦リセットした。


「さて」


 私はそう一言呟いて、ガーネットの方へと体を向ける。

 ガーネットもそれに気付き、こちらの方へと向かい立った。


「私はエトよ。自己紹介が遅くなったけど、一応、改めてさせてもらうわ。まあ、何故か既に色々と事情を知ってるみたいだけど。あとそれから、助けに入って来てくれてありがとう。助かった」


 そう言って私は小さく頭を前に下げ、もう一度ありがとう、と言葉にした。


「気にしなくていい。私はガーネットだ。たまたま知り合いの救援要請に気付いて来ただけの、ただの通りすがりだ。まあ、キミの気持ちを無碍にするのも良くないし、ここは、どういたしまして、と答えておこうか。力になれたのなら何よりだ、エト」

「うん。ありがとう、ガーネット」


 私はもう一度そう感謝を述べて挨拶を済ませると、仮面の奥の瞳を見つめて言葉を続けた。


「ーーで、結局あなたは何者なの」

「何者……とは?」

「とぼけないで。どうしてただの通りすがりが、私やトコ達のことを知ってるの。おかしいでしょ」

「……」


 私は仮面の奥を見つめながら、少し低めの真面目な声でそう言った。


「何もおかしなことは無い。彼女達は覚えていないかも知れないが、私は一度、あの二人とは会っているのでね」

「……は?会ってる?」

「ああ。もっとも、その時の二人は揃って私に興味がなかったようで、特にこれと言った会話はしなかったがね。ただ、金床の方とはその後にもう一度会う事があって、そこで少し話はしたが」

「そ、そうなんだ……」


 そうか。トコと私が出会ったのは、思えばつい最近の出来事だ。

 なら、ガーネットが私よりも前にトコ達と出会っていても、それはおかしな事じゃない。

 だったら、ガーネットが二人の事を知っていても、何もおかしい事は……ん? いま、二人揃ってって……。

 あれ??二人が一緒に居たのって、カラミティがまだガベルって名前だった頃のはずだから……んん?


「だが、その姉妹の事は知っていたがキミの事は知らなかった」

「は? 誤魔化さないで。だってあの時、私のことを伝説の神級鍛治師って、」

「それは見れば分かったからな」

「は?どう言う事よ」

「まず、キミのその鍛治師服は明らかにこの時代の代物ではないし、そして私が見た事もない剣も持っている。さらにはこの時代の冒険者としては規格外とも言えるあの身のこなしに、挙げ句の果てには名前がエトだ。どう考えてもキミがあの時代の冒険者、伝説の神級鍛治師エト本人だとしか思えないだろう。実際、そうなのだろ?」

「な!?そ、そんなわけ……」

「違うと?」

「あ、当たり前じゃない。そんな荒唐無稽な……」


 まさか、知っていたんじゃなくて、この短い間でそこまでバレてしまったってこと!?

 いや、でも、いくら条件が揃っているからって、500年前の人物だよ!?

 普通、そんなこと信じられる!?

 

「そうか。だが、後ろの彼らの反応からは、とてもそうは思えないのだが」

「え?」


 そう言われて咄嗟に後ろを振り返ると、そこにはエルヴィンとアラン、そしてマチルダ、シーラさんの四人が私のすぐそばで立っていた。

 そして、その中からマチルダが私の方へ一歩進むと、右手の大剣を地面に突き刺し、私の肩をポンと叩いた。


「エト。諦めろ。この期に及んでそれを隠し通すのには無理がある。と言うか、ここに居るみんなはもうとっくに気づいている。むしろ私は、お前が未だにそれを隠しているつもりだったと言う事に驚きだ」

「え、うそ!?」


 その言葉に私は思わずたたらを踏み、マチルダの後ろにいるエルヴィンの方へと顔を向けた。


「気が付かないわけがないだろ。馬鹿」

「へ??」


 そのエルヴィンの言葉に、私は気の抜けた声を漏らし、そしてその後ろのアランとシーラも、微妙な表情を浮かべながら、そして深く頷いていた。


「まあ、エトちゃんだしね。常識とかもう、今更でしょ」


 がーーん!!


 え、何で!?

 私が500年前から来た伝説の神級鍛治師だって事は、マチルダとサフィアとマリンの三人にしか言ってないはず。

 何で!?うそ!?

 もしかして、みんな人の心を読める超能力者!?!?


 しかし、確かに隠す気ゼロで好き放題にやりすぎた感は否めない。

 ガーネットでなくても流石に気付くか。

 どのみちあの状況では、隠してる余裕なんてなかった訳だし。


 そんな事を考えながら、私はマチルダに向かって苦笑いの顔を作る。

 それを見たマチルダは眉を八の字にしてヤレヤレ顔で微笑み返すが、すぐに真面目な顔に戻り、私の肩に乗せた手を下ろしてガーネットの方へと身体を向けた。

 そういえば、マチルダはガーネットと面識があったのだったか。


「ガーネット。昼間に続いて二度も助けられてしまったな。本当に助かった。感謝する」

「いやいや、気にしなくて構わない。聞いていたとは思うが、ここにはたまたま通りかかっただけだからね。だが、もう少し早く来れていれば、キミの左腕がそうならずに済んだかもしれなかったのだが」


 ガーネットのその言葉に、マチルダは肘から先の無くなった左腕を少し上げ、苦笑いを顔に浮かべる。


「まあ、こればっかりは仕方がない。むしろ、よくこれだけで済んだものだと言うべきだろう」

「そうか。もし冒険者を続けると言うのなら、そこの神級鍛治師に義手でも作ってもらうといい。神級と言うくらいだ、どうせ彫金や細工のスキルも持っているだろう。ひょっとすれば、弾丸や光線が出るような凄い腕が手に入るかも知れないぞ」

「いや、普通でいいのだが……」


 なるほど、義手か。

 その手があったか。

 もちろん私は全スキルカンスト済みなので余裕で作れる。

 ガーネットの言ったような物も、当然余裕だ。

 腕からロケット弾やレーザービーム、ついでに毒霧や超音波装置なんかもアリかも知れない。うん、熱いなっ!!


「まあ、流石に今のは冗談だが、頼ってやっていいと思うぞ。その鍛治師なら本当に凄い義手を作れるはずだ。本人も随分とやる気のようだし」

「いや、あの顔は信用しては駄目なやつだ。私の直感がそう言っている」

「そ、そうか?……まあ、キミがそう言うのなら何も言わんが。ところでマチルダ」

「なんだ?」


 ガーネットの言葉にマチルダがそう返事をすると、ガーネットはおもむろに、洞窟の入り口の方へと顔を向けた。


「あれは何だ」

「ん?あれと言うのは……」


 ガーネットのその問いかけに、マチルダもガーネットの向いている方へと顔を向ける。

 すると、洞窟の入り口付近で見知らぬ複数人の男達と小競り合う、サラとエイナとマリンの三人の姿がそこにあった。


「み、皆さん!!ちょっと待ってください!」

「いや、待たん!!なぜ待たねばならん!!いいからここを通すんだ!!」

「そうだ!俺たちが助けに来てやったぞ!!」

「いやいや、危ないからダメだってば、ちょっと、何なのこれ!」


 そこでは、よく分からない小競り合いが発生していた。

 その男達の数は十人前後で、どれもガタイのいい体格はしているが、後衛職のマリン達女子三人に抑えられている時点で、見た目の通りの一般人だ。

 まあ、マリンのステータス上昇の付与のおかげではあるのだろうけど。


「いいから通せ!!危険なんて承知の上だ!!」

「ちょ、ちょ、貴方達なんなんですか!?ちょっと落ち着いて!!」

「これが落ち着いていられるか!!」


「おい!!マチルダ!!無事か!!!ワシが助けに来てやったぞ!!!」


「お、親父!?」


 え!? マチルダの親父さん!?!?







読んでいただきありがとうございます。

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