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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第八十九話 code:


「はぁ!?」

「え、なに!?」


 私は何が起こったのかよくわからず、思わずエルヴィンの方に顔を向けるも、エルヴィンも訳が分かっていない様子で、驚きの表情を見せながら、魔王ヨルの方を見つめていた。

 すると、激突した岩壁の瓦礫の中から、魔王ヨルがゆっくり歩きながら現れた。


「標的はズレてしまったが、取り敢えず、まずは一人か」


 そう言いながら現れた魔王ヨル後ろには、砕けて転がる岩の瓦礫と、そこに倒れるアランの姿が確認できた。


「なっ!?!?」

「アランさん!!!!」


 思わず叫ぶ私とエルヴィン。

 魔王ヨルの後ろで倒れるアランは、岩の瓦礫の中で全身に血を流しながら、横腹を抑えてうずくまっていた。


「……本当にこの身体は扱いづらいな。力の加減が難しい。さすがは魔神の依代なだけはある。まあ、他の部位が集まれば、それもどうにかなるだろう。その為にも、邪魔な奴はここで消しておかなくてはな」


 そう言いながらまっすぐ私だけを見つめる魔王ヨル。

 今のは本来、私を狙っての攻撃だったのだろう。


 断片的に聞こえた、魔神とか他の部位とか、物騒過ぎる言葉の数々。

 魔王ヨルは確実にろくでもない事を企んでいるのだろうが、その企みに私の存在……というか、神級鍛治師の存在がよっぽど邪魔だと言うことだろう。

 そして、それによって私に向けられた攻撃が運悪くアランの方へ行ってしまった。

 私のせいだ。私のせいでアランがあんなひどい目に……。

 くそっ。


「――ふん、よそ見とは随分と余裕だな」

「!?」


 魔王ヨルはそんな私の逡巡の隙を突いて、素早く右手の黒い神剣で二度三度と魔力弾を撃ち放った。


「速い……!!」


 その魔力弾は、以前よりも段違いに速く、ある程度の距離があったおかげで何とか咄嗟に回避は出来たが、しかし、それと同時に走り出していた魔王ヨルは、すでに私の目の前まで迫り寄っていた。


「なっ!?」

「残念だがここで終わりだ」


 そして魔王ヨルが、私に向けて龍の左腕を突き出したその瞬間。


「させるか!!」


 すぐ横からそんな声が聞こえて来たのとほぼ同時に、エルヴィンが捨て身の体当たりで魔王ヨルに激突した。


「エルヴィン!?」


 そしてエルヴィンは激突の反動でバランスを崩しながらも、魔王ヨルの竜の左腕を瞬時に掴み、そしてそのまま捻り上げる。


「捕まえたぞ魔王ヨル!! エト!!今のうちに――」

「邪魔だ。どけ」


 直後、魔王ヨルは捻り上げられた腕を逆に力で捻り返し、そのままエルヴィンに強烈な蹴りの一撃を放ちはなった。

 そしてエルヴィンはその先の岩壁へと、大きな衝撃と共に打ち付けられた。


「ぐあああああっ!!!」

「エルヴィン!!!」

「これで二人目。弱過ぎて話にならんな。さあ、次こそお前の番だぞ。赤猫の鍛治師」

「くっ、よくも二人を!!」


 私は左手の槌を強く握り、瞬時に目の前の魔王ヨル目がけて振り抜いた。


 だが、魔王ヨルは私の槌の攻撃を竜の左腕であっさり防ぐと、そのまま力押しで跳ね返した。


「残念だったな。今のオレにその槌は通用しない」

「ちっ!」


 そしてそのまま流れるように、右腕の黒い神剣を後ろに大きく振りかぶる。


 やはり星砕の槌の持つ特殊効果、"カラミティに対するノックバック"は、魔王ヨルには無効の様だ。

 今の魔王ヨルは、完全にカラミティの身体を掌握してしまっているという事なのだろう。


 でも、まだいける!


 私はすぐに体勢を戻し、今度は右手の神刀に力を込めて瞬時に魔王ヨルに切り掛かる――


 ――え?!


 しかし、魔王ヨルはその攻撃に迎撃せず、一転、後ろに飛び退きながら、竜の左腕をこちらに向けて突き出してきた。


 悪食!?


 まずい!!神剣の構えはフェイクか!!このタイミングでは回避が!!


「焦ったな。俺の勝ちだ」


 既に魔王ヨルは悪食発動の溜めのフェーズに入っており、もはや私の回避は間に合わない。


「――消え去れ!!」

「くそっ……!!」


 突き出された魔王ヨルの左腕に魔力が集まり、発動までの溜めが完了する。

 そして、私の目の前で悪食が発動しようとしたその瞬間、


「ん!?なにっ!?!?」

「!?!?」


 まるで火花が散るように、魔王ヨルの身体がほんの一瞬光りを帯び、そしてその一瞬の間だけ、魔王ヨルが硬直した。


 突然の事に驚きつつも、私はそれを見逃さず、すぐに地面を強く蹴って横方向へと飛び退いた。


 いける!


 直後、魔王ヨルの悪食が発動し、飛び退く私のすぐ横を悪食の光の軌跡が通り過ぎた。


 よし!何とかギリギリ回避できた!

 これで魔王ヨルは、悪食発動後の硬直中になってるはず!!

 ずっとこの時を待っていた!!


 さあ――――


「今だよ!!!」

「な、なに?!?!」


 私の叫びのその直後、硬直する魔王ヨルに向けて一直線に、片手で大剣を振り上げながら縮地で高速移動する、マチルダの姿が現れた。


「覚悟しろ!!魔王ヨル!!左腕を失ったこの恨み!!お前にきっちり返させてもらうぞ!!」

「きっ!貴様!!」


 マチルダはその叫びと同時に大剣を勢いよく振り下ろし、魔王ヨルの突き出された左腕を一刀両断に斬り落とした。


「グアアアアアアッッッ!!!」


 その瞬間、魔王ヨルは断末魔の様な叫び声を上げながら、力なくその場に崩れ落ちた。


 先程までの雨も止み、辺りに静寂が広がり始めると、魔王ヨルの身体がみるみると縮み始め、やがて、元のカラミティの姿へと戻って行った。

 カラミティの右腕も神剣の形から普通の腕に戻っており、どうやらカラミティ自身も気を失っているようだ。

 やはり竜の左腕を切り落とすことによって、狙い通りカラミティの中から魔王ヨルを切り離し、元に戻すことが出来たらしい。

 とりあえずその目的は達成できた。


 これでひとまず、ピンチを脱することが出来たと少し安堵したその瞬間。

 事態は突然、またしても予想外の展開へと動き出した。


「お、おい、エト!?」

「わかってる。信じられない程のすごい魔力。全くっ、あの子は次から次へと……」


 その時、元の姿に戻ったカラミティの身体からは、禍々しい膨大な魔力が溢れ出し、右手を地面につきながらのそりと身体を起き上がらせると、そのまま足が地面から離れ、ゆっくりと宙に浮かび始めた。


「なっ!?!? お、おい、エト!!」

「わかってるってば、いや、わかんないけども!」


 マチルダが驚くのも無理はない。

 私だって驚いている。


 宙に浮いているのももちろん驚きだが、それよりも何よりも、

 この圧倒的な魔力に恐怖すら感じている。


 こんなの、異常どころの話じゃない。

 これまでいろんな非常識や理不尽にも出会って来たし、私自身がちょっぴり非常識である自覚もある。

 だが、この魔力……いや、この存在は話にならない。

 何と比べるにも足りないほどの、そんな絶対的な魔力だった。


 そんな魔力を放ちながら宙を揺蕩うカラミティは、ゆっくりと目を見開き、そして小さく呟いた。


「緊急システム……起動ヲ確認」

「え??」


 カラミティの口から聞こえたそれは、これまでに聞いたことのない無機質な言葉だった。


「――"管理者コード:カラミティ"……承認……管理者権限モードヘ移行……エターナルワールドオンラインシステム再構築……成功……」

「え、なに!? てか、エターナルワールドって……」


 まるで機械音声の様なその声に、私は戸惑いと嫌な予感を感じながら、咄嗟に両手の槌と神刀を構え直す。


「――システムチェック……成功……異常プログラム"エト"ヲ検出……対象ヲ目視ニテ確認……対象ノユーザー情報ヲ消去……失敗……再試行……失敗……再試行……失敗……。――対処方法ヲ変更」

「まさかアンタ、私のキャラデータを……っな!?」


 その直後、宙に浮いていたカラミティの姿が突如消え、一瞬にして私の目の前に現れていた。


「――対象ノ直接排除ヲ実行」

「!!」


 私は咄嗟に両腕を体の前でクロスさせ、瞬時に防御の構えを取るが、気づいた時には吹き飛ばされ、大きく宙を舞って地面に叩き付けられた。


「――ぐうっ……っ!」


 私はその衝撃に一瞬意識を手放しかけたが、何とかギリギリ踏みとどまり、頬を撫でる地面の固さを感じながらも、すぐに起き上がろうと両手をついた。

 しかし、その両腕には上手く力が入らずに、少し身体を浮かせただけでズキズキと傷みが込み上げ、見るとその両腕は、痣だらけでとても大きく腫れ上がっていた。


 くそ、早く起きがらなくちゃ、次の攻撃に対応出来ない!!


 そんな逸る気持ちとは裏腹に、やはり私の両腕は言うことを聞かず、そのまま身体を地面に落とした。


「おい!エト!大丈夫か!!」


 その時、すぐ耳元からエルヴィンの声が聞こえ、同時に腕の痛みが引いて行った。


「……エ、エルヴィン??」

「いいから動くな!今、回復魔法をかけている!!」

「エトちゃん!!少しの間動かないでね。すぐに治してあげるから」


 え?

 回復魔法??


 と言うか、どうしてエルヴィンがここに……。


 それに、もう一人の声は誰??

 最初はアランさんかと思ったが、どうも別人の声の様だ。

 私は頭を少し動かし、その声の方へと顔を向けると、そこにはとても意外な人物の姿があった。


「え、シーラさん!?」

「こんにちは、エトちゃん」


読んでいただきありがとうございます。

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