第八十三話 エトvsカラミティ
私はカラミティを一旦退けたあと、一人で時間稼ぎをしてくれていたエルヴィンの元に素早く駆け寄り合流する。
「お待たせエルヴィン!」
「お、おう……」
先程からエルヴィンの様子が少し変だが、特に怪我をしている様子でもない。
よく分からないが、特に問題はなさそうなので、あまり気にする事はないだろう。
もしかしたら、さっき私がエルヴィンを持ち上げ過ぎたのにちょっと照れているのかもしれない。
いや、普段から周りにハーレムを侍らしているくらいなのに、まさかそんな事はあるわけないか。
まあ、なんにせよ、頑張ってくれたエルヴィンにはとても感謝しなくちゃね。
「エルヴィンのおかげで助かったよ。流石に無茶振りだったかなって最初はちょっと心配だったけど、まさか本当にあのカラミティを一人で抑え切ってくれるとは思わなかったよ。ありがと」
「あ、ああ。どういたしまして……って!ホントだよ!!一人であれの相手とか、お前は俺を殺す気か!!」
私の言葉に、まるで思い出したかのようにそう怒鳴り返すエルヴィンに、私は「まあ、まあ、」と言いながら何とかなだめて落ち着かせる。
もう、照れ隠しで怒ったフリとか、意外に可愛いところもあるんだから。
「ごめんてば。まぁそう怒らないで。本当に感謝してるから」
「ったく。まあ、事情も理解してるからそんなに怒っちゃねぇけど。それで、エトが戻って来たってことは、マチルダの怪我はもう大丈夫なのか?」
「うん。結構危なかったけど一応ギリギリ何とかね。マリンにエリクサーも渡したから、取り敢えず心配は無いよ。あれの効果はエルヴィンが一番よく知ってるでしょ」
「エリクサーか。なるほど。それならひとまず大丈夫そうだな」
エルヴィンは過去に一度、鉱山での戦いで重傷を負った際にエリクサーで一命を取り留めたことがある。
しかもエリクサーで回復した後、普通に戦闘に復帰していたくらいだから、その効き目は折り紙付きだ。
「で、この後はどうするんだ?流石に今の攻撃だけで奴がやられるとは思えないが」
「うん。見た目は派手だったけど実際はただ打撃を二発入れただけだし、私の打撃なんて軽過ぎてほとんどダメージは無いだろうからね」
「だろうな。でもエトの事だから、この後思いもよらないぶっ飛んだプランを用意してるんだろ?得意の非常識なアレやこれやで」
私とエルヴィンは遠巻きながらにカラミティの様子をうかがいながら会話を続ける。
「ちょっと、私を何だと思ってるのよ。こんな予想もしてない展開でプランとかそんなのあるわけないでしょ。ちょっとしか」
「あんのかよ」
「あってないようなもんだけどね。ただの気休め程度だよ。大体、カラミティが左腕に竜を飼ってたとか初耳だし。なによあれ」
「いや、俺に聞かれても。むしろこっちが聞きたいくらいだ」
「んー。まあ、そりゃそうか」
やはりエルヴィンはあの左腕の竜に関しては全く何も知らないらしい。
でも、実のところ私には大体の予想はついていた。
何しろ、私はあれにそっくりなものを、この世界に来るより前に見たことがある。
もちろん、会ったことも戦ったこともないが、その存在だけは知っていた。
「あれは……魔王ヨル。エターナルワールドオンラインの多分ラスボスだね」
「は?魔王?」
この世界にそっくりな、私のプレイしていたゲームの中で時折り登場していたラスボス的存在。
私がプレイしていた頃は、まだメインシナリオも佳境に入る前だったから、イベントムービーで何度か見かけたことがあるだけだったけど、大きさはともかく、見た目はあれとそっくり同じだ。
全くカラミティてば、なんてものを持ち出してきたのよ。
「そうか、貴様はあの時代の冒険者だったな。一目見ただけでこれが何かを理解したか」
私とエルヴィンの会話を聞いていたカラミティは、倒れた身体をゆっくり起こして立ち上がりながら、私にそう言葉をかけて来た。
出来れば私の予想なんて外れていて欲しかったけど、頼んでもいないのにカラミティがあっさり答え合わせをしてしまった。
ラスボスの魔王が相手とか、ちょっと唐突過ぎるでしょ。
いくらゲーム時代で廃人プレイをしていた私でも、流石にまだ未実装だった魔王の倒し方なんて、分かるわけがないんだから。
「で、なんで魔王ヨルなのか聞いてもいい?さすがにそんなのを持ち出してくるなんて、いくら何でも唐突過ぎでしょ」
「ふん、俺は最初から魔王を復活させるために動いていたぞ」
「は?最初から?」
どう言う事??
最初からって事は鉱山で会った時もそうだったって事?
いや、でも……。
「そうだ。前にも言ったはずだが、俺の目的はこの世界を終わらせる事だ。その為には、かつてこの世界の半分を喰らい尽くした、魔王ヨルの復活は絶対だからな」
と言う事は、カラミティのこれまでの行動は……。
「もしかして、アンタの集めていた運命力って、まさか魔王ヨルを復活させる為の……」
「そうだ。もっとも、今は復活の為ではなく、俺自身が魔王となる為に必要な物だがな」
「魔王に……なる?」
「ああ。お前たちのせいでだいぶ予定は狂ったが、結果としては消費も少なく、これが一番手っ取り早い」
カラミティはそう言いながら、まるで左腕の竜を見せつけるように、こちらに向けて突き出して来た。
要するに、最初は魔王そのものの復活を企んでいたが、鉱山での私達との一件が原因でその計画に支障が起きたという事だろう。
そこでカラミティは魔王を復活させるのではなく、その力を自分の体に取り込んで、自らが魔王となることにした、という事か。
「……ほんと、アンタってつくづく無茶苦茶な存在だね」
「ぬかせ。俺からすれば、お前の存在の方が大概無茶苦茶だと思うがな」
「……」
私はカラミティのその言葉に、つい言葉を詰まらせる。
そして、私はカラミティに何も言い返す事が出来なかった。
私はこの世界においてかなりイレギュラーな存在だ。
目の前のカラミティもかなり非常識な存在ではあると思うが、それでもきっと、私の方が上だろう。
今のこの私の姿は本当の私の姿ではなく、私がゲームで育て上げた赤髪の猫耳族の鍛冶師の少女。
そもそも私はこの世界の人間ではなく、この世界をゲームとしてプレイしていた側の別次元の存在だ。
しかも、そこから500年以上もの時間を超えて来たと言うのだから、もう、自分でもさっぱり意味がわからない。
きっかけは、神剣エターナルを完成させた直後に見つけた、あの『裏クエスト』。
やっぱり私はそのクエストをクリアしないと、いつまで経っても元の世界に戻れないという事なのか。
不気味な文字で書かれていた“世界を救え“というメッセージ。
依頼者も不明なあのクエストは、一体私に何をさせようとしているんだ。
世界を救え……か。
要するに、このカラミティの目論見を阻止しろと言う事なのだろうか。
そもそも、どうしてカラミティはこの世界を終わらせようとしているんだろう。
どうにもカラミティの言動には違和感がある。
何か別の目的の為にではなく、まるで世界を終わらせる事こそが目的であるような……。
仮にそれが最終目的だったとしても、そこには必ず何らかの理由はあるはずだ。
カラミティは突然急に黙り込んだ私を見て、怪訝な表情でこちらの方を睨み付ける。
「どうした、鍛治師の女。一体何を企んでいる」
「……いや、何でもないよ」
どちらにせよ、このままカラミティの好き勝手にはさせられない。
それに、あの裏クエストが元の世界に帰るための鍵だとするなら、カラミティの目論見を阻止すれば、私はここから元の世界へと帰還する事ができるかもしれない。
逆に言えば、このカラミティを何とかできなければ、私は元の世界に戻れないと言う事になる。
まあ、そんな事は関係なく、今すぐ元の世界に戻れたとしても、流石にここまで深く関わった以上、全部投げ出して帰るなんて出来っこない。
結局のところ、私の為にも、この世界のみんなの為にも、あのカラミティの暴走を止めなくちゃならないと言う事だ。
「まったく。鉱山でもあれだけ苦労したって言うのに、今度は魔王の力でパワーアップした状態とか」
どこの誰のクエストかは知らないけど、それで帰れなかったらほんと怒るからね。
私はそんな事を考えながら、ポーチの中からおもむろに、神刀・穂月を取り出した。
「……ほう。どうやら急にやる気になったみたいだな。元々、この力の使い方をある程度把握したらさっさと次の場所へと向かうつもりだったが、まあいいだろう。この先余計な真似をされるのも面倒だ。お前はここで殺しておくか」
「奇遇だね。私もマチルダさんを連れてさっさと撤退するつもりだったけど、私もアンタがこれ以上おかしなことになる前に、ちょっと判らせておかなきゃって思い始めたところだったよ」
「フン、ならばこの“悪食“を止めてみろ!」
カラミティはそう言うと、構えていた竜の左腕に力を込め、例の消滅技を放って来た。
「エルヴィン!!離れてて!」
「お、おう」
私は隣のエルヴィンにそう言って、カラミティの放った消滅技“悪食“をすんでのところで回避する。
あと少しでもタイミングが遅ければ、身体の何処かを持っていかれていたかもしれない。
流石にこの技は厄介過ぎる。
「ちっ、わざわざ慣れない背負い投げまでして直接左腕に打撃を入れたのに、やっぱりあの程度じゃ腕のダメージはほとんど残ってないみたいね」
「当然だ。あの程度で俺の悪食が封じられる訳がないだろう。お前もそれ程期待していたわけでもあるまい」
「まあね」
もちろん期待はしていなかったが、ひょっとしたら何かの間違いで都合のいい事でも起こらないかと思っただけだ。
となると、あとはもう頑張って避けるしかない。
カラミティの消滅技は、分類的には放出系の技ではあるが、それ自体に実態が伴わないため魔力弾のように目視で確認してからの回避が叶わない。
なのでその技を回避するには、完全に回避に徹してカラミティの腕の角度や力を込める仕草などで、その発射方向とタイミングを推測するしか手段がない。
エルヴィンはそれに加えて持ち前の予見の能力で何とか凌ぐ事は出来ていたが、他のみんなはそんな力を持っていない。
私とエルヴィン以外の回避のすべを持たない者にとって、この場所は死地そのものと変わらない。
「エルヴィン、みんなの避難をお願い!今度は私が時間稼ぎをしてるから!」
「エト!?」
「大丈夫、ちょっとしたプランはあるって言ったでしょ。でも、早めに戻って来てくれると助かるけど」
「……わかった!」
エルヴィンはそう言い、すぐにマチルダやマリンの元へと走っていった。
私はそんなエルヴィンを横目でチラリと見送ると、改めて神刀・穂月を両手で握り、竜の腕を突き出したままのカラミティに向かって全速力で走り出した。
「馬鹿め。この間合いで突っ込んで来るとは、この悪食の餌食にしてくれと言っているようなものだ」
「それはどうかな!」
私はそう言葉を返したその直後、地面を蹴って大きく前に飛び跳ねた。
その瞬間、私の真下の地面が一瞬光り、えぐれるように消失した。
タイミング的にあと一歩進んでいれば、私の身体の半分以上は、あの光と共に消えていただろう。
なるほど。”悪食”とはなかなかぴったりなネーミングだ。
私は間一髪でそれを飛び越え地面に着地をしたその瞬間、その勢いは決して殺さず、前方向に体を肩から地面に落とす。
そしてそのまま転がるよう前へと進み、すぐに上体を起き上がらせる。
その直後、私の真後ろの岩壁が、光と共にえぐれて消えた。
「ひええ。やっぱり連射もアリなんだね。ちょっと今のはヒヤッとしたよ」
「貴様……何故避けれる」
「さあ、なんでだろうね!!」
私の的確な連続回避に、カラミティは若干驚きながらそう言葉を漏らし、私はそれに短く言葉を返すや否や、一気に距離を詰めて行く。
「チッ!」
「さあ、これだけ距離を詰めればアンタの悪食とか言う技の脅威も半減だよね!」
直後、私は神刀を振りかぶりカラミティ目掛けて振り下ろす。
「調子に乗るなアァッ!!!」
が、カラミティは右腕の黒い神剣で即座にそれを打ち払う。
それは、以前のカラミティよりも明らかに、重く、速い一撃だった。
恐らく、魔王の一部を取り込んだ事により、身体能力そのものが各段にパワーアップしているのだろう。
「なるほどね。魔王の力を取り込んで手に入れたのは、そのやっかいな腕だけじゃないって事ね」
「当然だ。この世界を終わらせるためには、魔王そのものの力が必要だからな」
「そう。ならやっぱり、アンタの企みは全力で止めないとね!!」
私はそう強く言葉を飛ばすと、カラミティに弾かれた神刀を再び振り上げ、もう一度強く、両手でまっすぐ振り下ろす。
そんな私の攻撃に、瞬時にカラミティも反応し、まるで先程のやり直しかのように再び黒い神剣を振り上げた。
甲高い金属音。
私の神刀とカラミティの神剣が再び打ち合い、そのまま鍔迫り合いのような力比べが始まった。
今度は弾き飛ばされはしなかったものの、カラミティは右腕だけで私の攻撃をしっかり受け切り、しかも、その表情は一切変えず、その片手のみでジリジリとこちらの方へと押し返して来た。
「ふん、鍛治師如きが扱う剣術など、神剣そのものである俺に通用すると思うなよ」
「ぐっ、でもそれを言うならアンタだって同じでしょ。剣自身が剣を振り回すとか聞いた事ないよ。そもそも擬人化状態の魔道具には戦闘能力は皆無だって話でしょ。その設定はどこに……って、ちょっ!」
私は言葉を途中でやめ、すぐに地面を蹴って斜め後ろへと飛び退いた。
その直後、カラミティの正面方向にある岩壁が、弾けるような光と共にえぐれて消えた。
その消えた岩壁とカラミティとの直線上には、つい先程まで私がいたのは言うまでもない。
「あっぶな……あのタイミングで悪食とか、流石に今のは肝が冷えたよ」
「なるほど。理解した。そう言う事か。やはりお前はこの悪食が見えている訳では無いようだな。単に、悪食を撃つ瞬間がわかるだけだ。どんなカラクリを使っているのかは知らんが、それでこの悪食を攻略したつもりか」
「……」
カラクリはわからないけど理解した、か。
まあ、そりゃいい加減気付くよね。
私が悪食を回避できている理由は、カラミティに仕掛けたとある小細工。
背負い投げからの竜の左腕への一撃の際に、その腕の付け根にくっつけた、魔力を流すと光る鉱石『発光石』。
以前、私が鉱山に向かう時に準備していたランタンの、中心部分に入っていた物だ。
私はそれのおかげで、カラミティが竜の左腕に魔力を込めるタイミングを察知して、何とかギリギリ躱してきた。
でも、そんな私の動きを把握された今、その仕掛けもすぐに看破されてしまうだろう。
たとえ看破されなくとも、撃つ瞬間が察知されていることを念頭に置いた動きに変えればいいだけだ。
もしそうなってしまったら、あの悪食に100%対応できるとは言い切れない。
一度でも当たればアウトなこの技がある以上、これ以上の長期戦は悪手でしかない。
「だったら速攻で倒すまで!!」
私は気合を入れてそう叫ぶと地面を強く蹴り飛ばし、全速力でカラミティに向かって突っ込んだ。
「させると思うか」
私の突然の叫びと突進にカラミティは無表情でそう答えると、こちらに向けて右手の黒い神剣を勢いよく振り抜き、魔力弾を撃ち放った。
それは以前に見た衝撃波のような攻撃とは別物で、明らかに威力も速度も桁違いの放出技。
悪食とは違い、その実体も軌道も速度も、目視で確認できるため、私は反射的にすぐに飛び退き、その攻撃を回避した。
いや、違う!
私は咄嗟にカラミティの方へと視線を戻すと、そこには竜のに左腕をこちらに突き出すカラミティの姿があった。
やられた!今のは誘い弾か!!
カラミティがその腕に力を込める様子を見て、私は悪食の発動を察知するが、飛び跳ねて宙に浮いた状態の今の私には、それを回避する術がない。
だめ!避けれない!!
「これで終わりだ」
「!!」
私が悪食の被弾を覚悟した、その刹那。
「――アースウォール!!!」
その瞬間、私の目の前に突然岩の壁が出現し、一瞬の眩く白い光と共に、悪食を相殺して消滅した。
「チッ、邪魔が入ったか」
「え!?!?」
まさか、これはエイナの土魔法!?
いや、でも、私はエルヴィンにみんなの避難をお願いしたはず。なのに、どうして!?
「くだらん。だが無駄な事だ」
カラミティはそう言いながら、伸ばした竜の左腕を、私の着地場所へと向け直した。
カラミティの悪食は連射が可能だ。
タイミングはかなりシビアだが、私の回避は恐らくギリギリ間に合わない!!
「なっ!?」
その直後、私の着地場所から少し逸れた場所の地面が、光と共に消滅した。
「え、悪食が外れた!?」
私は驚き、カラミティの方へと視線を戻すと、カラミティの左腕に一本の矢が突き刺さっているのを確認した。
もしかして、今度はサラの弓矢!?
驚きの連続に私は思わず動きを止めると、そこに今度はエルヴィンとアランがやってきた。
「エト、待たせたな」
「エトちゃん、後は私たちに任せていいわよ」
二人はそう言い、それぞれ私の肩をポンと叩くと、そのまますぐにカラミティの方へと走り出した。
「え、エルヴィン!?アランさんも!!何で!!私はみんなの避難を頼んだはずでしょ!!」
「ああ!だが、エトを置いて逃げられないとか散々わがまま言われてな!」
「エトちゃん、大丈夫よ!!あなたのおかげで向こうのパターンや手の内は大体全部把握したわ!だからそろそろ私達も、ちょっとは活躍しないとね!!」
エルヴィンとアランはそう言いながら、カラミティの元へと肉薄し、そして縦横無尽に動き回る。
確かにあの動きならば、悪食を放つ隙はなさそうだ。
しかし、二人同時の接近戦闘をカラミティは右腕の黒い神剣一本で全ていなし、なおも、左腕での悪食のタイミングを粛々と狙っているようだ。
「ふん、それで優位に立ったつもりか。どうせならあのまま逃げ去っていればよかったものの。二人がかりで俺の片手に完封されてしまっているお前達に、もはや勝ち目は存在しない!その逃げない選択を取った者を、せいぜいあの世で恨むんだな!!」
カラミティはそう言うと、右腕の黒い神剣で二人を大きく跳ね飛ばし、竜の左腕をまっすぐ前へと突き出した。
「!?」
その瞬間、カラミティの魔力が信じられないほど膨れ上がり、伸ばした竜の左腕へとみるみるうちに集まり出した。
あれはダメだ!
あれは本気でシャレにならない!
あんな魔力で悪食なんか放ったら、どれだけの質量が持っていかれるの!?!?
避けるとか、防ぐとか、もうそんなレベルの話じゃない!!
あんなの、辺り一面丸ごと全部なくなってしまう!!
「これで終わりだ。この場所ごと、丸ごと全部消し去って……!!!」
「させはしない!!」
直後、辺りが激しい光で埋め尽くされ、一瞬視界が奪われる。
そして、すぐに戻った視界の先にあったのは、この洞窟の天井がすべて消え去り、雲一つない真っ青に広がったとてもきれいな青空と、カラミティの竜の左腕を掴み上げる、マチルダの姿がそこにあった。
「――悪いな。私のわがままで皆を残らせてしまった以上、死んでもお前の好きにはさせん」
「き、貴様……何故!!」
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