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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第七十八話 マチルダの実力

「お、おい、エト。この救援信号の発信者って……」


 そう言いながら、慌てたように私の元へと駆け寄って来るエルヴィンと、そのパーティーメンバー達。

 表情から察するに、エルヴィン達も事の異常さを感じ取っているようだ。


「う、うん。マチルダさんだね……。マチルダさんもこの近くに来てたみたいだね。それに……」

「ああ。突然出て来たこの気配、やっぱりそうだよな」

「うん。間違いない。カラミティだね」


 やはりエルヴィンも、カラミティの気配に気が付いたようだ。

 まあ、以前にあれだけの死闘を繰り広げたわけだし、さすがに覚えていたらしい。


「どうなってるんだ!?奴はあの時、倒したはずだろ!?」

「……倒したのは確かだけど、死んではないよ」

「はあ??」

「エルヴィンも見たでしょ、あれは人間でも魔物でもない。カラミティの本体は神剣だから。おそらく魂みたいなのはあるんだろうけど、例え粉々に切り刻まれても、たぶんそれで死んだりしない。きっと、私達みたいな生死の概念自体がそもそもないんだよ」

「なっ!?……それじゃ要するに不死身って事かよ!?何だよそれ……」


 それでも、私が修理をしなければこんなに早くカラミティが動き出す事はなかったはずだ。

 それこそ、粉々に砕いて海にでも撒き捨ててしまっておけば、少なくともそれなりの時間は稼げただろうが、それでも結局、いずれは復活してしまうだろう。

 何ならまた魂を移動して、別の魔道具になる可能性だってある。

 だとすれば、いくら粉々にしあところで、それはただの問題の先送りに過ぎない。

 それに、トコの事情を知ってしまった私としては、とてもそんな事をしようとは思えない。


「どうしてカラミティが現れたのかはわからないけど、マチルダさんが救援を出してるってのは間違いない。細かい事は後回しだよ」

「ま、そうだな」


 とにかく、マチルダさんを助けに行かなくちゃ。


 何が起きているかはわからないが、救援信号の発信ポイントは、ここからそう遠くはない。


 カラミティの気配が出たタイミングや、その気配の方向的に、たぶんカラミティが関係しているのだろうが、どうにもこのマチルダさんの救援信号自体に違和感がある。


 この救援信号がゲームの時と同じ仕様なら、その信号を受け取れるのは一定の範囲内の冒険者のみ。

 近くにいる不特定多数への一斉救援信号であって、私たちがその信号を受け取ったのはたまたまだ。


 あのマチルダさんの性格上、カラミティが現れたからってそれで救援信号を出すだろうか。

 信号に気付いた冒険者達がたとえ何人駆けつけようとも、カラミティが相手となれば、無駄に被害者を増やすだけだ。

 カラミティの強さを知っているマチルダさんが、そんな事をするはずがない。

 

「とにかく。今はマチルダさんの救援が優先だよ。ええっと、アランさん。悪いけどエルヴィン借りてもいいかな?アランさん達にはマリンとトコを連れて戻ってもらえると嬉しいんだけど」


 私は、話の途中でエルヴィンから後ろのアランに視線を変え、マチルダ救出にエルヴィンを貸してもらう許可と、トコとマリンの護衛を頼む。


「もちろんよ。エルヴィンなら好きに使って」

「おい!なんでお前が俺の許可出してんだよ!俺の意思は?」

「なによ。行ってあげないの??ヒドくない??」

「いや、別に行かないとは言ってないだろ!」

「じゃあいいじゃない。それじゃエトちゃん、エルヴィンをよろしくね」

「え?あ、はい」


 やっぱりこのパーティのリーダーはエルヴィンじゃないと思う。

 でもまあ、おそらくはいざとなったら頼りになる感じなんだろう。

 少なくとも実力でいえば、パーティーの中では頭一つ抜けてるからね。

 でも、もしかするとあのカラミティと対峙するかもしれないのに、そんなに簡単にエルヴィンを私に貸してくれてもよかったのだろうか。

 見た感じ、それほど心配している様子には見えないけど……。

 


「じゃあ、私たちはトコちゃんとマリンちゃんを護衛しながら、二人の後ろをついて行けばいいのかしら」

「え??」


 おかしなことを言うアラン。

 いや、アランさん達にはマリンとトコを連れて戻ってもらおうと思ってたんだけど……。

 アランさん達ならともかく、マリンとトコはさすがに危険すぎるでしょ。


「ねえ、エトちゃん」

「はい?」

「心配なのはわかるけど、マリンちゃんは十分戦力よ。この状況であんな顔ができるなら問題ないわ」

「え?」

「あと、連れて行ってほしそうにしているトコちゃんの可愛さも、超・破格級よ」


 アランの言葉に、思わずマリンの方を向くと、”私も連れて行ってください!!”と言わんばかりに目を見開き、必死にこちらを見つめていた。

 その隣のトコも、無表情ながら私に何かを訴えかけるようにこちらをじっと見つめていた。


 二人とも肝が据わっているというかなんというか。

 マリンはさすがサフィアの妹って感じだし、トコは”ガベルに会いたい”って顔に書いてる。


「二人とも……」

「ね?まあ、決めるのはエトちゃんだけど」


 アランは私にそう問いかけ、その後ろにいるエイナとサラも、アランと同じく私の言葉を待っていた。

 私がどちらの選択をしたとしても、トコとマリンの護衛はしてくれるつもりのようだ。

  

「うーん……」


 マリンもトコも私をじっと見つめて、連れて行けと強い目力で訴えてくる。


 トコに関しては、いざとなれば変形して硬質化も出来るし、カラミティと同様に最悪死ぬことはないのだが、できればそれらをあまり明るみにはしたくない。

 そしてマリンに関しては、サフィアからよろしくと言われて預かっている以上、こんな危ない場面に巻き込みたくはない。


「エトさん。私、皆さんの力になりたいです!」


 だが、確かにマリンの付与術があれば戦力は大幅に上昇する。

 むしろ、何があるかわからない場所に行くこの状況において、それはかなりのアドバンテージになる。

 それに、先程までのマリンの立ち回りは悪くなかった。むしろ、その辺の下手な冒険者よりもずっと良かったまである。

 もしもカラミティ戦になって、万が一ピンチな場面になったとしても、私とエルヴィンがいれば他のみんなを逃がすことくらいは出来るだろう。

 だったら、あまり過保護になりすぎる必要もないのかもしれない。


「……仕方ないね。わかったよ」

「!?!?本当ですか!!」

「でも、危なくなったらすぐに逃げるって約束してね。あと、私が逃げてって言った時も絶対」

「わかりました!危なくならないように頑張ります!」

「……」


 いや、頑張るのはまあ、そうなんだけど、なんかちょっとズレてる気が……。

 本当に大丈夫かな……。


「どうやら話はついたようね。エトちゃん大丈夫よ、二人は私達が守るから」

「ありがと、アランさん」


 私とマリンのやり取りを見届けたアランは私にそう声をかけてくる。

 やはりアランさん。いろいろと察してくれたようで、やはりとても頼もしい。

 

「それじゃ、みんなでマチルダさんの救援に向かうよ!!」


 待っててね!マチルダさん!

 私達が着くまで、絶対に死んだりしちゃダメだからね!!







 エト達がマチルダの救援へ向かう事になったその少し前。


 ちょうどマチルダがガーネットと言う仮面の男と別れ、本来の目的地へと向かい始めた頃の話。



———



「ふむ、気持ち悪いくらいに魔物と遭遇しないな。おかげで予想以上に早く到着しそうだが、どうにも嫌な感じだな……」


 私はそんな事を思いながらもバジリを走らせ先を急ぐ。


 レーヴェン川の川沿いにある、新規建設中の第三レーヴェン大橋。

 私はそこで働く父親達の手伝いをする為、現場近くに設けられた詰所に向けて、急ぎバジリを走らせていた。


 あのブラックフェンリルとの戦闘はあったものの、そのブラックフェンリルの出現の影響か、その後は魔物と全く遭遇していない。

 普段ならばあるはずの魔物達との戦闘も一切発生せず、おかげでブラックフェンリル戦での時間のロス分をあっという間に取り戻していた。


「よし。どうにか予定の時間には間に合いそうだ」


 私が向かっている場所は、王都への新たな関所となる予定の第三レーヴェン大橋の建設現場。

 そこには私の父親と、その父親が抱える十数名の作業員達がおり、今現在もその建設作業を進めている真っ只中というところだろう。


 しかし、その場所は比較的安全とはいえ、日が暮れれば川辺の魔物達の活動も活発になり、多少の危険が無くもない。

 なので、日が落ちて暗くなり始める前に私が駆け付け、作業員達の護衛がてら建設の手伝いをするという事になっている。


 要は、父親の立ち上げた建設組合のお抱えの護衛要員という訳なのだが、しかし、私は冒険者として護衛の依頼を受けているという訳ではなく、形式的には建設組員の一人。組員という事になっている。


 父親曰く、別で護衛を雇うよりも安上がりだから。という理由らしい。

 なんだか父親にいいように使われている感もあるが、そのぶん割と自由にやらせてもらっているし、それほど不満は抱いていない。

 

「さて、もうそろそろか」


 そんな事を考えながらバジリに乗って走らせていると、次第に前方から建設中の大きな橋の骨組みと、父親達のいる詰所の姿が見えて来た。


「よし。どうやら間に合ったようだ。親父の姿もあそこに……って、ん?何だ?なにやら様子が……」


 バジリで走らせながら現場近くの様子を見ると、どうにもいつもとは違うような違和感を感じる。

 いぶかしげに眉をひそめながらもその現場に近づいていくと、すぐにその違和感の原因が目に飛び込んで来た。


「!?!?」


 そこにあったのは、作業員達が大量のサファギンに襲われ、怪我を負って倒れている姿と、そのサファギンと戦う作業員たち。そして、そんな彼らに倒されたであろうサファギン達も、あちらこちらに転がり落ちていた。


「魔物との戦闘!?!?何があった!?!?くそっ、急ぐぞ!!」

『キュイーーー!!』


 私は思わずそう叫び、手綱をバチンと弾かせると、バジリはそれに応えて全速力で走り出す。

 そして直ぐに作業員達の元へと駆けつけると、私はそのままバジリの背中から勢いよく飛び降り、作業員達とサファギン達が揉み合う中へと、一直線に走り出した。


「加勢する!!戦えない者は退避を!!余裕のある者は怪我人を連れて行け!!」


 私はそう叫びながら、作業員達を襲うサファギンの群れの中に飛び込んでいく。


「加勢!?」


 突然の私の乱入に、作業員たちは少し驚いた様子を見せるが、私は構わず視界に入るサファギン達を手あたり次第に攻撃して行く。


『キキギギギ!!』

『キギッ!!』


 私は縦横無尽に駆け回り、次々と攻撃を仕掛ける。

 その攻撃を受けたサファギン達は、標的を作業員達から私へと切り替えて、こちらの方に向かって来る。

 よし、これでいい!


「コイツらのヘイトは極力私に引き付ける!だから早く怪我人を!!」


 サファギン達と戦いながら、再度大声で声をかける。


「おお!あれはマチルダの嬢ちゃんか!!なるほど、やっぱさすがの強さだな!!」

「助かった!!ありがてえ!!」

「よし、みんな!今のうちに、動ける奴で怪我人達を避難させるぞ!!」

「おう!!運び終えたら直ぐに戻るからな!!嬢ちゃん、それまで堪えてくれ!」

「お嬢!頼んだぜ!!」


 私の言葉に、作業員達からはそんな言葉が返って来る。


 作業員達はすぐにそれぞれ動き出し、動ける者の半分は怪我人たちの避難に向かい、そしてもう半分は、戦闘中の作業員の元へと加勢に向かう。


 これまで何度もここの手伝いに来ていたおかげで、いきなりの私の乱入でもそれほどの混乱はないようだ。

 むしろ、私の事を信用してくれているようで、話が早くてとても助かる。


「ならば、期待を裏切るわけにはいかないな」


 私はそう言って、さらに速度を上げていく。


 サファギン達の攻撃は、極力最小限の動きで躱すか弾くかして受け流し、その度ニヤリと微笑みかけて挑発する。

 そして、それらのサファギン達は完全に放置して、まだこちらに向かって来ていないサファギン達に次々と攻撃を仕掛けて行く事で、敵のヘイトを一身に集めて行く。


 これは凄いな。

 私一人を攻撃する為に、サファギン達の中で若干の渋滞すら出来始めている。


 私は剣と盾を駆使しながら、その密集地帯にど真ん中から突っ切って行き、出来つつあったサファギン達の渋滞を物理的に解消して行く。

 そうして着実にダメージを与えながら縦横無尽に動き渡りながら、どんどんその数を増やして行った。


「自分でやって言うのも何だが、これはなかなかおぞましいな。一瞬でも足を止めれば、直ぐに囲まれタコ殴りでは済まなくなるぞ」


 私は思わずそんな言葉をポロリと溢すが、その言葉とは裏腹に、再びニヤリと口端を上げる。


 やはり今日はとても体が軽い。

 思った通りに体が動き、予想以上に多くのサファギンにダメージを与えられている。

 先刻のブラックフェンリルとの戦いでも、親玉のブラックフェンリルには不意を突かれて遅れを取ったが、その取り巻きの狼相手にはかなりいい動きで圧倒できていた。

 はっきり言って、自分から見ても以前に比べて数段強くなっているのが実感できる。

 おそらくはあの鉱山での戦いで、かなりの経験値と熟練度を得られたせいなのだろうとは思うが、それでもこの成長具合は予想外だ。

 これがいわゆる、死線をくぐり抜けた者だけが手に入れられる境地という物なのだろうか。


「とは言え、決して油断は出来ないがな!」


 そんな事を考えながら無数のサファギン達と戦っていると、私の視界の隅から数人の作業員達が、こちらに向かって走って来る姿が入ってきた。


「待たせたな嬢ちゃん!怪我人は避難させた!俺達も戦闘に戻るぜ!!」

「なっ!?早いな!!」


 予想外の早さに驚き、私は思わずそう言葉を返す。


「ああ!言っても俺達の大半は元冒険者だからな!重症な奴はほとんどいないぜ!」

「そうだぜ!だから俺達の事は気にしないで、嬢ちゃんは好きに暴れてくれていい!!」

「だな!奴らの数もだいぶ減ったし、半分くらいなら俺達で何とか出来る!お嬢一人に任せっきりにはさせられないからな!」

「……そうか。承知した!!」


 作業員達のその言葉に短くそう答え、私はサファギン達への攻撃やめて群れの中から一旦外へと走り抜ける。

 そして、少し離れた場所で踵を返し、武器を構えて、追いかけてきたサファギン達を真正面から迎え撃つ。


「ふむ。思ったよりもたくさん釣れたな。果たしてどれだけ残るかな」


 と私がそう言うと、こちらへ向かって追いかけてきたサファギン達の背後から、武器を構えた作業員達の攻撃が降り注いだ。


『キキギギギ!!』

『キギッ!!』


 流石は元冒険者。

 私の咄嗟の機転にも、当然のように合わせてくれた。


「さあ!こっからは俺達の反撃の番だ!!」

「おうよ!!」

「くう~っ!!久々に腕がなるぜ!!」


 何だかやけに盛り上がり始める元冒険者の作業員達。

 それぞれいろんな理由で冒険者を辞めたのだろうが、やっぱり根っこは皆同じと言うことか。


「私も負けてはいられないな!」


 私も同じ冒険者だ。根っこはやはり、彼らと同じだ。


 私はサファギン達のヘイト集めの戦闘スタイルから、サファギン達の各個撃破へと切り替える。

 私の攻撃力自体は、エトやサフィア、ガルカンらに比べればかなり非力ではあるものの、サファギン程度が相手ならば問題ない。


「では、確実に一体ずつ倒して……」

「ぬおおおおおお!!マチルダ!!!そこをどけ!!!」

「な!?」


 私が近くのサファギンに攻撃を仕掛けようとしたその時、後ろの方から野太い叫び声が聞こえて来た。


「な、何だ!?って、親父!!!」


 振り返ったそこにいたのは、作業用の大きなシャベルを右と左の両手に持って走り込んでくる、私の父親、ドルガンだった。

 彼もまた、他の皆と同じく元冒険者ではあるのだが……


「ちょ、親父!!何をしている!?てか、何でシャベル!?!?武器はどうした!?」

「んな物はとっくの前に折れたわ!!だか問題ない!!低ランクの魔物などこのシャベルで十分!!しかも二本だ!よって、こうすれば攻撃力も二倍だっ!!」


 親父は両手に持った二本のシャベルを一つに束ね、両手で握って頭上に大きく振りかぶる。


 いや、二本だから2倍とか、絶対そうはならんだろ!

 どう言う理論だ!


 しかも、二刀流のようにして使うのならばまだしも、どうして二本束ねて両手で持った!?それではただ重くて持ちにくくなっただけなのでは!?!?


「うおおおお!!死ねえっ!!」

『ガガガギギギギッ!!ギギ!!』




「……ちいっ、仕留めきれなんだか」


 しかも結局、殺れてないし!!


「ちょ、何やってんだ親父!!」

「むう、ならばいつもの三倍の速さで振り下ろせば二倍の三倍で合計六倍の攻撃力に……なっ!」

「危ない!!親父!!」


 いつもの三倍っていつの三倍だよ、なら最初からそれでやれよ、とかそんなツッコミを入れる暇もなく、私は瞬時に父親の前に躍り出て、今まさに父親へ反撃しようとしていたサファギンを、右手の剣で叩き斬る。


「ふう、間一髪だった……」

「何をする!ワシのせっかくの見せ場が!!」

「何が見せ場だ!!普通に殺られそうになってたじゃないか!」


 まったく、この馬鹿親父が。

 普通に戦えば普通に強いはずなのに、どうにも余計なことをやりたがる。


「それより親父、これは一体どう言う騒ぎだ」

「知らん。むしろこっちが聞きたいくらいだ。前もってわかっていれば、もっと活躍できたんだがな」

「ふむ……」


 いや、もし前もってわかっていたなら、そこは素直に避難して欲しいものだが。

 まあ、無理だろうが。


「それよりマチルダ」

「ん?ああ、そうだな。喋ってないで残りのサファギン達を倒しに行かなくてはな」

「いや、そうじゃない。ここはワシらだけで何とかなる」


 そう言われ周りを見回すと、先程の作業員達がやたらと張り切り、あちらこちらで次々とサファギン達を倒していた。


「まあ、確かにこの感じだと彼らだけでも全部倒してしまえそうだが」

「うむ。だからお前はバッツの所に向かってくれ」

「バッツ??ん?そう言えばバッツの姿が見当たらないが……」


 私は再度周りを見渡し、バッツを探す。

 バッツは私の弟で、ランクは低いが、私と同じ冒険者だ。

 ならば、バッツもどこかその辺でサファギン達と戦っているはずだが……。


「この魔物達は、恐らくバッツが何かやらかしたせいだ。全く、あの馬鹿息子が」

「は?」


 私は思わず親父の方へと向き直る。


「それは、どういう事だ!?」

「少し前に、現場から少し離れた場所におかしな横穴が見つかってな」

「横穴??」

「ああ。昨日まではなかったはずの無理矢理こじ開けられたような横穴でな。今思えば、ちょうどその方向からこのサファギン達もやって来たように思う」

「!?!?」


 おいおい、それってまさか!!


「親父!もしかしてバッツは!?」

「ああ。横穴の存在の知らせを聞いてすぐ、ちょっと調べて来るとか言って、一人で勝手に行きよった」

「!?あの馬鹿……!」

「一応、心配だからとその後何人かもそっちに向かって追いかけていったが、直ぐその後にこのサファギン達に襲われてしまってな。で、この有様だ。十中八九、バッツが何かをしたのだろう」


 なんて事だ。

 もう嫌な予感しかしない。


 ただでさえ、道中でブラックフェンリルに遭遇したり、魔物の気配が消えたりして、全く何が起こっているのか分からない状況だと言うのに、そんなの、どう考えてもその横穴がこの異変の元凶じゃないか!!


 そんな場所にノコノコと一人で……。

 くそ!アイツはなんて人騒がせな弟だ!


「親父!私もそこに向かう!ここは任せたぞ!!」

「わかった。そっちも頼んだぞ」

「ああ、必ずあの馬鹿な弟を連れ帰って来る!!」


 私はそう言い切るよりも早く、その横穴の方へと駆け出して行った。






読んでいただきありがとうございます。

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