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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
第1章
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第六十八話 ゲラルドの大工道具(後編)

今回は前・後編の2話同時投稿となっていますので、前の話をまだ読んでいない方は先にそちらをどうぞ。




「でもまあ、ステラさんのお墨付きをもらえて安心したよ。実は、ちゃんと直せてるからちょっと不安だったんだよね」

「あら、そうなの?どこからどう見ても完璧じゃないのよ」

「まあ、それならいいんだけど」


 ステラさんは私のように鑑定スキルを持っていなくとも、その下位互換とも言える目利きスキルは間違いなく持っているはずだ。

 そのステラさんが違和感を感じないのであれば、まぁ大丈夫だろう。

 どうしてもこの道具たちのランクが下がっている事は気になってしまうが、取り敢えず、今のところはこの世界ではそう言う仕様なんだと割り切る事にしておこう。

 どのみち、言ってもろくに説明も出来ないわけだし。

 何かあったらその時に考えよう。


「でも、エトは納得していない」

「な!ちょっとトコ!」

「あら、そう言えばずっと気になってたけど、そちらの女の子は?ずいぶん可愛らしい子ね。あと、納得してないって言うのは??」

「え、いや、えーっと……」


 最悪だ。

 ただでさえ説明の難しい話題を、それ以上に説明の難しいトコが、掘り返して来ちゃったよ!何の仕打ち!?!?


「エトさん??」

「あー、えっと、そのー、んー……妹、、かな?」

「あら、エトさんの妹さん??でも、猫耳は付いてないわよね??」


 うわああ!そうだった!!

 今の私は猫耳族だった!!

 姉妹なわけないじゃん!!


「いや、……妹……的な?みたいな??」


 的な、ってなによ。何も誤魔化せてないよ!もっと頑張れ、私!


「??ああ、なるほど。店子(たなこ)さんを雇ったのね」

「そう!!トコは店子!!」


 私はステラさんの勘違いに迷う事なく全力で乗っかることにした。

 ステラさん、グッジョブです!!


「エト。店子って何?そんなの私聞いてな」

「大丈夫!不安なのはわかるけど、でもトコなら絶対大丈夫!店子って言うのはね、言わばお店の顔なわけ!だからトコは私の店の看板娘よ!なんならもう、立ってるだけでいいくらいなんだから!」

「……店子……ん。わかった。それなら昔にやった事ある。私、店子する」

「そ、そう?ありがと」


 ホッ。


 どうにかトコを誤魔化す事にも成功した。

 昔やっていたと言う事は、恐らく、ギルトランと暮らしていた時に、ギルトランの作った武具を売る店で、店子をしていた事があるのだろう。

 いやあ、偶然とは言え助かった助かった。


「なるほどね。エトさんもなかなかやり手ね。確かにこんな可愛らしい店子さんがいれば、駆け出し冒険者や中年冒険者あたりなら、割とチョロいかもしれないわね」

「え?……あー。デスヨネー」


 いや、チョロいとか。

 思いのほか腹黒いな、ステラさん。

 まあ、このくらい出来ないと、こんな大きな商会のトップにはなってないんだろうけど。

 なるほど。言われてみれば生産者ギルドの受付(たぶん裏の支配者)のナーシャさんと同じ匂いがしなくもない。

 よし、この二人は絶対に敵に回したりはしないぞ。


 と、何とかこの場を乗り切り、そんな事を考えていたその時。


 一人の男が、私達に声をかけて来た。


「おいおい、さっきから何騒いでんだ??他の客の迷惑なんじゃねえのか?」

「あら、ゲラルド。早かったわね」


 そこにいたのは、この大工道具の持ち主で、その修理の依頼主でもある、トカゲ族の大工士、ゲラルドさんだった。


「そうか?別に早くはねえと思うが……って、おい、待て!ちょっと待て。それって、まさか……!?」

「ふふ。そうよ。あなたの大工道具よ。エトさんが完璧に直してくれたわ。こんなのほとんどあり得ない事なんだから、しっかり感謝する事ね」

「おおお!!マジか!!!」


 何故かドヤ顔のステラさん。

 まるで自分の手柄かのように嬉しそうだ。

 まあ、ほとんど壊れかけてた自分の作品が生き返ったのだから、ステラさんとしても嬉しいのだろう。


「マジだ。完璧に直ってやがる!握り具合も……いや、確かにこの感じだ!問題ない!」

「うふふ。良かったわね」

「ああ!嬢ちゃん、いや、鍛治師エト。心の底から感謝する!!」

「いいっていいって。喜んで貰えたらのならそれでいいよ」


 鍛治師としては、その言葉が一番嬉しい。

 ゲラルドさん本人からも納得の言葉をもらったし、取り敢えず修理依頼は完了だね。


「しかし、あの状態の道具を、まさかここまで完璧に直すとはな……。さすがは伝説の鍛治師の系譜だ。とんでもねえ技術だな」

「……ん?伝説の??ゲラルドそれはどう言う事かしら?」

「うあっ!!いや、えっと、それは違くてだな、えー……」

「??エトさん?」

「……は、はい?」


 ちょ!ゲラルドさん!なにを口滑らせてるのよ!!

 いや、ステラさんになら別に構わないけど、他の人だったらどうするつもりよ!!


「その様子だと、やっぱりそう言う事のようね」

「ま、まあ……」

「私ももしかするとそうなんじゃないかとは思っていたけど、まさか本当にそうだったなんてね」

「え、そうなの?」


 どうやらステラさんは、私の素性には何となく気付いていたらしい。

 さすがこの若さで商会のトップに立っているだけあって、人の見る目もあると言うことか。


「もちろん、最初はただの私の直感でしかなかったし、単なる名前からの連想でそう思ったのかななんて考えてたけど、でも、このゲラルドが自分の道具を簡単に人に預けるなんて、まず有り得ないことだったしね。それに、あのナーシャにも気に入られてるって言うじゃない?それだけで、少なくとも只者じゃないって事はわかってたわ」

「な、なるほど……」


 さすがステラさん。直感も洞察力も素晴らしい。

 というか、やっぱりナーシャさんてヤバイ人なんだ。

 いや、いい意味でね。


「黙っててごめんなさい。あんまりそう言うので目立ちたくなかったから」

「わかってるわよ。同じ立場なら私でもきっとそうするでしょうし。というか、何でエトさんが謝るのよ。悪いのはこの間抜け男でしょ」

「いやぁ、面目ねぇ……」


 その後、私は自分の素性を明かし、一応口止めもお願いした。

 もちろん、素性を明かしたとは言っても、私が伝説の鍛治師本人ではなく、その後継者だって言う方の作り話の方ではあるが。

 まあ、ステラさんにはその嘘も見抜かれていそうだけどね。


「なるほど、そう言う感じね。了解したわ」

「う、うん。よろしく」


 うん。やっぱりバレてるみたい。


 でもまあ、流石に私が時代を超えて来ているなんて、思ってもいないだろうから、せいぜいまだ何か秘密を抱えてるなってくらいの感じだろうけど、でもそれをわかっていてあえて追求はしないって感じだ。

 空気の読める、出来る女って感じでカッコいいなぁ。


 そうして私は、修理依頼の納品も済ませ、自分の素性も明かしたところで、とっととこの場をおいとまする事にした。

 これ以上ここにいても、やる事も別にないし、また面倒な話題になっても困るので。


「それじゃ、ゲラルドさん。私のお店の方、よろしくね」

「おう!まかしとけ!!この直してもらった道具で、しっかりといい仕事させてもらうぜ!!」

「うん、期待してる」


 私はそう言って店を出ると、もう外は少し日が落ちており、道に並ぶ露店のいくつかは、そろそろ店じまいの準備に取り掛かっている頃だった。


「さて、帰りますか」

「ん」


 私がそう言うと、トコはボソリとそう返す。

 そう言えば、ステラさんとゲラルドさんとの会話中、トコはだいぶ大人しかった。

 大人しかったというか、まあ、単に暇だったんだろうな。

 思えば、今日はほとんど一日中、私の用事に付き合わせただけだ。

 なのに特別文句を言うでもなく。

 なんか、ちょっと悪い事をしちゃったかな?


「ねえ、トコ」

「ん?」

「帰りに何か美味しいものでも食べて帰ろっか。トコの好きなので」

「ん!」


 トコの元気な返しの言葉に、私は目尻を緩ませる。

 そして、


 なるほど。魔道具もちゃんと食事はするのかぁ。食べたもの、どこに消えるんだろう……。


 なんて事を考えていた。

 

 と、そんな時。


「あれ?エトちゃんとトコちゃんじゃないの」

「ん?」


 突然後ろの方から聞こえて来たその声に、私は思わず振り返ると、そこにいたのは、鉱山での戦いで知り合った、回復術師のシーラさんだった。


「あ、シーラさん」

「あら、覚えててくれたのね。嬉しいじゃない」

「そりゃ、覚えてるよ。あの熊のクランでの唯一の良心だし」

「え、なにそれ?笑」


 彼女は、あのガルカン率いるクラン【動猛獣の牙】の紅一点。かつ、常識人だ。

 こんな人が何故あんなクランに居るのかは全く謎だが、彼女のおかげであのクランは機能していると言っていいだろう。

 その証拠に、あの戦いの中での会話でも、ガルカンはシーラさんにだけはあまり頭が上がらなかったように思える。

 それに、サフィアの妹のマリンの師匠的存在でもある。

 それに関しては、ただシーラさんが面倒見のいい人だっただけと言う事もあるのだろうが。

 どちらにせよ、あの奇人変人大集合の中で、数少ない常人の一人だ。


「そんな事より、ちょうど良かったわ。エトちゃんにちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「ん??私に聞きたいこと??」


 そんなシーラさんは、再会の喜びもほどほどに、私に何かを尋ねようとして来た。


「ええ。サフィアとマリンちゃんなんだけど、どこに居るか知らない?」

「サフィアとマリンさん?」

「ええ。ちょっと気になる話を聞いちゃってね。少し心配になったから。特に、マリンちゃんについてね」

「え?」


読んでいただきありがとうございます。

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