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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
60/106

第五十八話 決着(中編)

この度、第4回キネティックノベル大賞にて、大賞を受賞させていただきました。

とても驚いたと共に、とても嬉しい限りです!!

これからも頑張りますので、よろしくお願いします!


あと、今回は決着の後編の予定でしたが、やはりと言うかなんと言うか、中編になってしまいました。

すみません。

次回こそ後編です!たぶん!

今後ともご愛読のほど宜しくお願い致します!


「——どう言う事だ。この気配は……神剣??」


 カラミティは、突然遠くから感じられた神剣の気配に、思わず脊髄反射のようにその場から飛び退き、それまでの攻撃の手を止めた。


「おかしい。この時代に俺以外の神剣などあるはずが……いや、まさか!」


 カラミティの知る限り、歴史上この世界に存在する神剣は、神剣カラミティである自分自身と、500年前に作られたと言われる神剣エターナルの二本のみ。

 さらに、その神剣エターナルは作られてすぐに、製作者と共に消息を絶ったと言う事も、カラミティは知っていた。


「まさかあの女……」


 カラミティはそう言うと、視線をサフィア達よりもっと奥の方へ飛ばし、恐らくそこにいるであろう、エトの方へと意識を向けた。


「まさかあの女、500年前に神剣と共に姿を消したと言う、神剣の作り手、神級鍛治師か!?……なるほど。これが奴の言っていた、最後の奥の手か」


 カラミティはそう言うと、その幼い容姿にはとても不釣り合いな程に顔を歪め、ギリリと歯軋りを立てながら、眉間に深く皺を刻む。


 そして少しの沈黙の後、ボソリと小さく呟いた。


「それで流星があの槌と……。そうか。それがお前のやり直しか」


 少女は思った。

 それで本当にいいのかと。


 少女は思った。

 それでお前は満足なのかと。


 少女は思った。

 こんなはずでは無かったと。


 少女は思った。

 そんなの絶対認めない!!


「ふざけるな!!あの女、何から何まで俺の邪魔をしやがって!!しかも流星はその鍛治師を選ぶと言うのか!!そんなのは俺が絶対に認めない!!!!」


 カラミティは突然そう叫び、顰めた眉を吊り上げる。

 その顔は、まるで先程までとは別人かと思う様な程の怒りに満ちたものになり、そしてギロリと目を見開き、その視線をある一点へと固定させた。


 その瞬間、マチルダが叫ぶ。


「!!!まずい!奴はエトに向かうつもりだ!」


 そんなマチルダの叫び声に、サフィアとガルカンは瞬時にカラミティの方へと飛び出して行く。


「させるかああああああああ!!」

「お前の相手は俺達だ!!」

「うるさい!!どけ!!!!!」


 カラミティはまるで鬼の様な形相で勢いよく走り出し、行手を阻むサフィア達を振り払い、エトの方へと一直線に突き進む。


「まずい!そいつを行かせるな!」

「言われなくてもわかってる!」

「エトの元には行かせない!!」


 マチルダはそう叫びながら突進し、盾を突き出し、自分の身体ごとカラミティにぶつかるが、その攻撃はカラミティの動きを一瞬止めただけで、すぐに力押しで弾き返され、そのまま真後ろに吹き飛ばされる。

 カラミティはそんなマチルダに目もくれず、再びエトに向かって走り出す。


 しかし、マチルダの作ったその一瞬の隙で、サフィアとガルカンは再びカラミティの前に並び立つ。


「マチルダ!よくやった!絶対にコイツを行かせるな!」


 サフィアとガルカンがカラミティを塞ぐように立ちはだかり、再びカラミティに剣を斬りつける。


 が、しかし、カラミティはそれを邪魔だと言わんばかりに神剣の右腕でサフィアの剣を弾き返し、続けて繰り出された逆側からのガルカンの攻撃も、神剣の左腕で振り払い、その直後、再び正面に立ちはだかったマチルダを、構える盾ごと弾き飛ばし、そしてそのまま真っ直ぐに突き進む。


「ぐっ!まずい!!このままでは!!」

「クソッタレが!!!おい!エト!逃げろ!!!」


 カラミティの両腕の神剣で弾き飛ばされ、完全に体制を崩した二人はもう、カラミティには追いつけない。


 カラミティの意識は完全にエトに向いてしまっているため、タゲを取れない二人の連携は全く意味をなさず、足止めするための後手後手の対処も、時間稼ぎすら出来ずにあっさりと振り切られてしまった。


 唯一、カラミティの進む直線上近くに吹き飛ばされたマチルダだけは、最後の悪あがきと言わんばかりに、歯を食いしばってすぐさまその場で立ち上がる


「くそ!!まだ私は諦めない!!」


 そしてカラミティを追いかけるために走り出そうとしたその時、


「——なっ!?エト!?!?」


 マチルダの視線の先。そこには、迫り来るカラミティを待ち受けるかの様に静かに佇む、エトの姿がそこにあった。


「待たせてごめん。最後のケリは私がつけるよ」

「!?エト!!何を言って……と言うかお前!その腕は!!」

「大丈夫。問題ないよ」


 そこにいたエトの衣服は、右袖の大部分が大きく引きちぎられており、そこから見える右腕全体、肩の付け根あたりから下の全部が、全て真っ黒に染まっていた。

 そしてその右腕の先には、白銀に輝く細身の剣が、布で無理やり縛り付けられていた。


 “馬鹿を言え!全然大丈夫では無いじゃないか!!”


 思わずマチルダはそう叫びそうになるが、もはやそんな言葉を発する間も無く、既にカラミティはエトの目前まで辿り着き、そしてそのまま神剣の右腕で、斜め下から抉り上げる様に、素早い一撃が撃ち放たれた。


「エト!!!」


 代わりに吐いたその言葉に、それに反応するかの様に、エトは小さく体を捻り、その攻撃をひらりと躱す。

 しかし、上に振り抜かれた神剣の勢いそのまま、カラミティはその小さな身体をその場でくるりと回転させ、その回転の勢いを乗せた左腕の神剣をエトの脇腹あたり目掛けて横薙ぎに切り付ける。

 間髪入れずに繰り出されたその攻撃を、エトは真上に飛び跳ね回避すると、そのまま空中で体を捻り、カラミティの顔面に回し蹴りを直撃させた。


「ぐあぁっ!貴様……」


 防御も間に合わず、モロで食らったカラミティは、そのまま身体ごと吹き飛ばされ、地面を転がりながらもすぐに体勢を取り直し、エトを睨み付けながら地面に剣を突き立て起き上がる。


「悪いね。今まで戦闘をサボってた分、アンタの動きは把握済みだよ」


 一瞬の攻防。


 サフィア達があれほど苦戦していたカラミティ相手に、エトは最小限の動きだけで、あっという間にカラミティを退けた。


 それを見ていたマチルダは、目を大きく見開きながら、ただただエトの底の知れなさに驚くしかなかった。


「何だ……いまのは……」


 元々、エトの身体能力の高さはマチルダも十分知っていた。

 しかし、本来生産職である鍛治師のエトには、戦闘経験が圧倒的に不足しており、エトはそのポテンシャルの高さだけで、なんとかこれまでカラミティと渡り合っていた。

 しかし、前線での戦闘を経験した今のエトは、これまでの実践に加えて、カラミティと戦う三人の動きをその目で学び、驚く程の成長を見せていた。


 今、マチルダの目の前で起こった事は、エトがカラミティの攻撃を躱して蹴りのカウンターを決めた、ただそれだけの事だったが、その意味はとてつもなく大きい。

 それはまさに、先程までの絶望的な状況をひっくり返す、形勢逆転の狼煙となる様なものだった。


「エト、お前と言う奴は……。だが……」

 

 しかし、マチルダの表情はすぐれない。

 マチルダは気付いていた。

 エトの右腕が、ここまで一度も動いていない事を。


「エト……」


 本来であれば、すぐにでも援護に向かいたいマチルダだったが、誰よりも状況判断に優れているマチルダには、自分の今の力量や、耐久値を削り切ったこの武器では、エトとの共闘や連携はむしろエトの邪魔になりかねない事を理解していた。


 マチルダはただ黙って、歯を食いしばりながら、二人の戦いを見守ることしか出来なかった。

 そしてそれは、少し遅れてやってきた、マチルダの後ろで静かに佇むサフィアとガルカンも同じだった。


「マチルダ。無理だと判断したらすぐに出る。準備はしておけ」

「……ああ」

「おい!エト!!邪魔はしねえから好きなだけやっちまえ!!」


 そんなガルカンの掛け声に、エトはカラミティから視線を逸らさず口端を少し上げ、未だこちらを睨み付けるカラミティに声をかける。


「だってさ。じゃあ、続きをやろうか」



読んでいただきありがとうございます。

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