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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
56/106

第五十四話 奥の手


 ガルカンの大音声の掛け声と同時に、待ってましたと言わんばかりに叫びながら、こちらへと雪崩れ込んでくる冒険者達。

 ガルカンのクラン【動猛獣の牙】のメンバー達はもちろん、アラン以外の【エルヴィン桃源郷】のハーレムメンバー達も、あちらこちらから同時にこちらへ向かってくる。


「うわ、うわ、すご」


 そして各所から駆けつけて来た冒険者達は、こちらに着くと瞬時にフォーメーションを組み、私達を守る様に一瞬で壁の陣形を作り上げた。


「すごいでしょ。うちのクランの連携力と団結力はかなりのものよ。リーダーのガルカンは凄いバカでアレだけど、何故かカリスマ性だけはピカイチだからね」

「うん、まあ、わからなくはない……」


 私が冒険者達の機敏な動きに驚いていると、シーラは若干ドヤ顔で私にそう説明をして来た。

 確かにガルカンは一癖も二癖もある性格だが、それがカリスマ性だと言われれば妙に納得できてしまう。

 強さは文句なしに飛び抜けてるし、あの癖のある性格も、決断力のあるリーダーシップと捉えれば、前衛冒険者としては憧れや尊敬の対象として映るのだろう。

 ここに来て、私の中でのガルカンの評価は、前より少し上がったかもしれない。


「彼らクランメンバーは何があっても対処できるように、バラけて待機してたのよ。この陣形も、前もって決めていた陣形の一つよ。たしか、【守りの陣・極】だったかしら」

「ほう」

「まあ、極みも何も、ただ壁になる様にそれっぽく並んでるだけなんだけどね。“極“以外のバージョンも見た事ないし。まさかあんな、“カッコいい陣形の練習“や、“派手でイカした連携フォーメーションの練習“が本当に役に立つなんて、思っても見なかったわ」

「な、なるほど」


 やはりガルカンはガルカンだった。

 ついでに、クランメンバーの大半が何故か男の前衛冒険者ばかりだった事にも、私は激しく納得できてしまった。

 同じクランメンバーであるはずのシーラが、ガルカンに対してはわりと雑な扱いだったのも、大いに納得できてしまう。

 ちなみに、アランも冒険者から予備の盾を借り、ほかのハーレムメンバー二人と共に、その陣形に混ざっていた。

 なるほど。飛び入りのメンバーも普通に混ざれるような、なかなかに自由度の高い陣形のようだ。


「それじゃ、最後の仕上げと行きますか」

「仕上げ?」

「そう。この肉壁全員に、強化魔法をね。彼らは馬鹿だから本当に全員で来ちゃったでしょ?敵からしたら、強力な一発で一網打尽出来る、大チャンスよ。まあ、流石にないとは思うけど、一応それなりの備えは必要なわけ」

「なるほど……」


 確かに言われてみればその通りだ。

 あのカラミティなら無いとは言えない。

 どんな可能性も、カラミティに限ってはどんな事でも否定はできない。

 

「でも、今更だけど、強化魔法って回復術師が使えたっけ?」

「いいえ。強化魔法は付与術師の専門だもの。回復術師は治癒と解毒と、あと、解呪とかの神聖魔法くらいね」

「だよね。え?じゃあ誰が強化魔法を?」

「そりゃ、もちろん付与術師様よ」

「??」


 シーラはそう言うと、私達とカラミティのちょうど中間あたりで防御の陣形を作っている、冒険者達の方へと顔を向けた。

 そして、それに釣られるように私も視線を動かすと、その陣形の少し後方でポツンと立つ、一人の少女の姿が確認できた。


 あ。あれって……。  


 そこにいたのは、まるで冒険者らしくない格好をした、私と同じくらいの年頃の女の子。ごくごく普通の質素なワンピースを着た、清楚ながらもどこか凛々しく、短い栗色の髪がとても印象的な、それは、サフィアの妹、マリンだった。


「そろそろ良いわよ!余裕があれば前の三人にもお願いね!マリンちゃん!!」

「はい!!」


 シーラの呼び掛けにマリンは短くそう答え、ピンと両手を前に突き出し、少し何かを念じたその瞬間、冒険者達の身体の周りに光の膜が発生した。


「まさか、その付与術師ってサファイアの妹さんの事!?」

「そうよ。しかも、あの子は相当な才能の持ち主よ。私のかなり曖昧な教え方でもあっさり習得しちゃったんだから。兄妹揃ってとんでも無いわね」

「そりゃ、とんでも無いね……」


 まさかサファイアの妹が付与術師だったとは。

 サファイアからはそう言う話は聞いていなかったし、話の感じでは付与魔法も今日初めて覚えたっぽい。

 もしかしたら、彼女の患っている魔力欠乏症は付与術師として覚醒するための副作用か何かだったのかもしれない。


「出来ました!このまま、前線にも撃ちます!!」


 私がそんな事を考えていると、マリンはそう叫びながら伸ばした腕を少し上げ、カラミティと戦う三人に向けて再び強化魔法を発動した。


「プロテクション!!」


 マリンの放った強化魔法は、真っ直ぐ三人の元へと飛んでいき、縦横無尽に動き回る三人の体へと、的確に命中した。


「凄い……」

「ええ。あんなの私でもそこそこ難しいわよ。ほんと、末恐ろしいわね。でも、無茶し過ぎね」

「??」


 シーラはそう言うと、素早くマリンの元へと駆け出し、それと同時に、マリンは身体を左右に揺らして、その場に膝をついてしまった。


「マリンさん!?!?」


 それを見た私は思わずそう叫び、シーラと同じく飛び出そうとしたその瞬間、まるでそんな私の行動を静止するかのように、後ろの方から誰かが私の服を引っ張った。


「え!?」


 私は驚き、思わずその場で振り返る。


「エト、慌て過ぎ。マイナス20点」

「トコ!?」


 振り返ったそこにいたのは、毎度神出鬼没なトコだった。


「え、トコ、ポーチの中で休んでたんじゃ?もう平気なの?ってか、今はそれどころじゃ……」

「それはこっちのセリフ。良いから落ち着く」

「え、いや、でも」


 わたしは訳がわからずに、服を掴んだままのトコの手も振り払えず、顔だけマリンの方へと振り返ると、マリンはシーラに支えられながらも、ゆっくりと立ち上がっていた。

 病み上がりな上に、慣れない魔法を無理に連続で使ったせいで、立ちくらみのようなものを起こしただけのようだ。本当に無茶をし過ぎだ。シーラさんがマリンにそんな感じの説教をしているので、取り敢えずすぐに私が駆けつける必要はなさそうだ。


「エト、まずいことになった」

「え?」

「ガベルがイライラし始めた」

「……は?」


 いや、イライラも何も、カラミティは最初からずっと敵意丸出しだったよね?

 今更イライラとか言われても……


 と、そんな事を思ったその瞬間。


「グアアアアア!!!貴様らアアアアアアアアアアア!!!!次から次へと小賢しい事ばかりしおって!!!!!人間ごときが調子に乗るな!!!!!」

「ぐあっ!!」

「おいおい、何だよこりゃ!!!」

「焦るな!!落ち着けばまだ何とか出来る!!」


 私は突然聞こえてきたカラミティの叫び声と、それに驚くガルカン達の声に思わず驚き、身体を肩から跳ね上げる。

 そして、即座に声のした方へと振り返ると、完全に連携を失ったサファイア達三人と、ドス黒い魔力を身体中から放つカラミティの姿を見て、大きく目を見開いた。


「ガベルは基本的に怒りっぽい。でも、本気で怒る事はほとんどない。ガベルなりに我慢はしてる。たぶん、さっきまでも我慢してた」

「はあ!?あれで??」

「でも、本気で怒ると理性がなくなる。ああなったらもう、手がつけられない。今のガベルは、もう、今までのガベルじゃない」

「いや、マジ……」


 そんなトコの話を聞いて、私は改めてカラミティの方へと向き直る。

 トコの言った通り、カラミティはこれまでのカラミティとはまるて別人で、あの三人ですら、完全に防御に徹してなお、ギリギリの戦いをしている。


 その上、状況はどんどん悪くなっている。

 三人の武器が、強化をしたにもかかわらず凄まじい速度で消耗して行っている。

 強化をしてなおこの消耗度、あと数分も持たないだろう。

 このまま行けば、確実にバッドエンドだ。


「ちょっとこれは、だいぶまずい……」


 最終形態になった上に、発狂モードとか、流石にちょっとやりすぎでしょ。


 もう、切れるカードはほとんど全て出し尽くした。

 あと、残っているとすれば……


「……こうなったら、もう、一か八か……」


 ここまで来たら、残されているのは一つだけ。


 今の私に残された、最後の奥の手。


 神剣エターナル。


 もう、それを出すしか方法は無い。

 使えば左腕も武器食いで使い物にならなくなるだろうけど、あのカラミティとやりあえるのはきっと神剣くらいのもの。

 それでも、今となってはこの神剣でも良くて対等かそれ以下だ。

 しかも私は剣士ではないので、剣技では確実にカラミティに劣る。

 それでもみんなと連携して戦えば、いくらか勝機も見えなく無いが、恐らくそれまで私の腕も、三人の武器も持たないだろう。


「くそ!どうすればいいの!!」


 この戦いにおいて、後半はほとんど私は何も出来ていない。

 むしろ、サファイアやガルカンにマチルダ、そしてシーラやマリン、さらには大勢の冒険者達に、私は守られていただけだ。


 一体私は何をしてるんだ。


 何かしなきゃ。


 でも、私に何が出来る。


 出来る事はないか。


 だめだ、やっぱり何も思いつかない。


 もう、仕方ない。


 今のカラミティに通用するかはわからないけど、


 それを使えば私がどうなるかもわからないけど、


 私の最後の奥の手、神剣エターナルなら……


「エト。マイナス500点」

「え……トコ?」

「その神剣でも、ガベルには勝てない。それはエトもわかってるはず」

「それは、でも……」


 トコは私の考えを見透かし、即座に否定し、首を振る。


「それはエトが作った武器。でも、エトの使う武器じゃない」

「……どう言う事……?」


 確かにこれは、自分の為の武器ではない。

 ゲーム時代の仲間のみんなの為に作ったものだ。

 でも、だからってそれがどう言う意味に……


「なら作るしかない。エトが使える、神剣よりも強い武器」

「はあ!?そんなの簡単に作れるわけがないでしょ!大体、素材も何も」

「なら打ち直せばいい」

「え?いやいや、打ち直しって、覇斬の剣もメッキの魔剣も二人に使ってもう無……まさか!?」


 そこまで言って、私はようやくトコの真意に気がついた。


「神剣エターナル。エト用に打ち直す」

「!!!!」


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