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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
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第四十五話 挟撃


「みんな!いくよ!」


 私はそう叫ぶと、勢いよくカラミティの方へと駆け出した。

 それに続くように、サフィア、ガルカン、そしてマチルダが私の後を追う。


「サフィア!ガルカン!まずは私が一発入れるから、そのあとは何かいい感じに上手いことよろしく!!」

「カッ!何だよその指示!だが悪くねえ!」

「それは構わないが、無理はするなよ!」

「わかってる!!」


 私の呼び掛けに二人はそれに快く応え、私は迷いを振り切り、ポーチの中から星砕の槌を取り出す。


「さあ、これが私のもう一つの切り札だよ!!」


 私は取り出した星砕の槌を強く握り締め、力を込めながらカラミティの目の前まで進み出る。


 この星砕の槌は元々、カラミティの前身であるガベルが宿っていたインテリジェンスアイテムだ。

 カラミティとは関わりの深過ぎるアイテムの為、何が起きてもおかしくない。

 なので、あえて今まで出さずにいたが、この際そんなことも言っていられない。

 私に残された武器は、この槌とメッキの魔剣、それと神剣エターナルだけだ。

 あとは野となれ山となれ。

 吉と出るか凶と出るか。

 今は流れが来ていると信じてぶちかます!!


「うおおお!ぶっ飛べえええ!!!」

「な!?!?それは!!」


 私の持つ星砕の槌を見たカラミティは一瞬驚きの声をあげつつも、私の全力の打ち込みに瞬時に対応し、右手の黒い剣で打ち払う。


 が、その瞬間。


「ぐうっ!!な、なに!?!?」


 私とカラミティの剣が打ち合ったその瞬間、二つの武器は激しい衝撃と共に反発し、攻撃を受けた側のカラミティが、後ろに大きく弾かれた。


「よし!」


 どうやらこの星砕の槌は武器として通用するどころか、カラミティに対しての有効武器のようだ。

 ダメージ自体は対してないが、恐らく、カラミティに対してはノックバックのような効果があるのだろう。

 神剣というインテリジェンスアイテムであるカラミティ自身と、かつての自分の器である星砕の槌というインテリジェンスアイテムとの、共鳴や反発のような力が働いたのだと思われる。


「き、貴様ああ!!」


 カラミティは大きく吹き飛ばされながらそう叫び、その弾かれた衝撃を強引に力でねじ伏せると、すぐに体勢を持ち直し、星砕の槌を持つ私を怒りの表情で睨み付けた。

 そして、その怒り表情のまま、私めがけて飛びかかろうとしたその瞬間。


「行かせるか!!」


 今しかないと言ったようなドンピシャのタイミングで、サフィアがカラミティへと攻撃を放った。


「チッ」


 カラミティは踏み出そうとした足を瞬時に踏み込みに切り変え、まるで超反応と言ったような動きでサフィアの攻撃を剣の一振りで弾き返す。


「なっ!?」


 しかしすぐさまサフィアはもう片方の剣で攻撃を放ち、しかしそれにもカラミティは瞬時で対応し、返す刀で弾き返す。


「邪魔をするな!貴様には用はない!」

「……今のに対応できるのか。なるほど、あのエトが勝てないわけだ」


 サフィアは一旦距離を取り、驚きと関心のあまり思わずそう呟く。


 まさか、サフィアのあの完璧なタイミングの攻撃と、その直後の間髪入れずの攻撃の両方が、こんなに簡単に処理されてしまうとは。

 やはりカラミティの剣の技術は、私よりも数段上だ。


「でもまあ、想定内だ」


 しかし、サフィアはニヤリと笑みを浮かべながらそう言うと、再びカラミティに飛び掛かり、さらに速度を上げながら、休む間もなく波状の連続攻撃を放ちつづける。


 サフィアの剣は神出鬼没にあらゆる場所からあらゆるタイミングで高速の斬撃と共に現れ、その剣の軌跡は流れるように、まさに流星群の如く飛び交い、確実にカラミティを翻弄して行く。

 かつて、私と戦った時には見られなかった、本気のサフィアの剣戟に、私は目を離すことができなかった。

 恐らく、今の私でもあの全ての攻撃に対応するのは、かなり難しいかもしれない。


「煩わしい!速さはともかく、そんな非力な攻撃で何が出来る!」

「ただ力があればいいってわけでも無いんだぜ。どうやら素早さだけなら俺の方が上のようだし、スタミナ勝負と行こうじゃないか」

「調子に乗るなよ、人間ごときが。いいだろう、貴様から屠ってやろう!」

「ああ、そうこなくっちゃなっ!」


 私の放った星砕の槌での一撃以降、感情を露わにするようになったカラミティを見たサフィアは、それを瞬時に感じ取り、カラミティを煽るような口調と表情で、その攻撃の矛先を私からサフィア自身の方へと移らせていた。


 そんなやり取りを少し離れた場所で見ていた私は、サフィアの凄さを改めて実感した。

 基本的に戦闘と言えば魔物討伐がメインとなる私やガルカンのような冒険者とは違い、元軍人であるサフィアは国同士での争いに長ける、いわば対人戦のプロフェッショナルだ。

 相手の動きや思考を先読みし、それに合わせたフェイントや煽りを織り交ぜる。そんな戦い方は、幼い頃から様々な大人達と一人で渡りあってきたサフィアだからこそできるやり方だ。


 レベル差的にも恐らく圧倒的に基本ステータスが劣るはずのサフィアでも、カラミティに対して対等以上にやれているのは、サフィアが剣士として、一角の人物であるという証拠に他ならない。


「あれが本物の剣士か。やっぱかなわないなあ……」


 そうして始まった二人の攻防は、互いに息つく暇も与えない一進一退の戦いとなるが、しかし、サフィアの繰り出す素早い連続攻撃はカラミティにことごとく弾かれ、被弾こそしてはいないが、一度として有効打を生み出す事は出来ずにいた。


「ふん、大口を叩いていた割にはこの程度か」

「いや、これでいいんだよ。むしろ上手くいき過ぎだ」

「なに?……はっ!」


 確かにサフィアの攻撃は何一つとして通らず、完全にシャットアウトされていたが、しかし、カラミティの動きを止めることには成功していた。

 そしてそれは、例えば大振りの斧の攻撃を当てるには絶好の的として釘付けにしている、と言っても過言ではないものだった。


「まさか?!」


 その瞬間、カラミティの背後から、大斧を振り上げて飛び掛かってくるガルカンの姿が現れた。


「うらああ!!食いやがれえええ!!!」

「チッ!舐めた真似を!」


 カラミティはサフィアの言葉で、背後から繰り出されるガルカンの強烈な攻撃に気が付き、咄嗟に足を踏み込み躱そうとするが、当然そこにはサフィアが立ちはだかる。

 そして、サフィアには珍しい、やや大振りの力の篭った一撃が、カラミティ目掛けて放たれた。


「悪いな、俺もランクSの冒険者だ。ただ速いだけじゃない!」

「ぐッ!」


 そんなサフィアの言葉と同時に繰り出される一撃を、カラミティは反射的に剣で受け止めてしまう。


「!!しまった!」


 その直後、サフィアのもう片方の剣が、ガルカンの大斧と同時にカラミティに直撃した。


「グアアアアッ!!!!!!!」


 カラミティの大音量の叫び声が、鉱山中に響き渡る。


 サフィアとガルカンによる挟撃が、見事にカラミティに直撃し、サフィアの放った伏撃はカラミティの右脇腹を大きく抉り、そしてガルカンの大斧はカラミティの背中に深く突き刺さっていた。


「ぎ、ぎ、貴様らアアアアア!!!!」


 しかしカラミティはそのまま倒れることなく、すんでのところで踏み留まり、右手の剣と左手の拳を強く握りしめ、二人を払い除けるように勢いよく振り回す。


「二人とも!!離れて!!」


 サフィアとガルカンは私の言葉を聞いてすぐさま飛び退き、カラミティの反撃を回避するのとほぼ同時に、私はカラミティ目がけて一直線に走り込む。


「ダメ押しだよ!!!」


 私はまるで隙だらけのカラミティの懐まで一気に潜り込むと、構えた星砕の槌で最大まで力を込めた渾身の一撃を、カラミティのみぞおち付近目がけて超至近距離で撃ち放った。


読んでいただきありがとうございます。

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