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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
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第四十二話 形勢逆転

「と、言うわけだから。アンタ、覚悟しなよ!」

「……フン。くだらん」


 私とトコとのやり取りの一部始終を聞いていたカラミティは、私が最後に発した啖呵に対して、とても不機嫌そうにそう吐き捨てた。


「何をごちゃごちゃと。あまり調子に乗るなよ」


 カラミティはそう言うと、ゆっくりその場で立ち上がり、右肩を押さえていた手も下に下ろし、改めて剣を構えた。


「まあ、そうなるよね」

「当然だ」


 私が砕いたはずのその右肩は、綺麗に修復されており、まるで何もなかった様に元通りになっていた。


 そもそもカラミティの人形の部分は、本体である神剣の一部が変形したものだ。

 復元くらいはお手の物なのだろう。

 だが、トコだって金床の状態でも攻撃を受ければ痛いと言っていた。

 ならば、ダメージ自体は通っているのだろう。


「なら、戻せなくなるまでやるだけの話。そしたらその後、みっちり説教してあげる」

「やれるものならやってみるが良い」


 直後、私とカラミティは同時に飛び掛かり、互いに無数の攻撃を繰り出しながら、激しく剣をぶつけ合う。


「ほう。やはり先程の動きはマグレではない様だな」

「まだまだ!こんなもんじゃないよ!」


 私はそう言うとさらに剣の速度を上げ、カラミティの攻撃は邪魔だと言わんばかりに弾き返しながら、確実にダメージを重ねて行く。

 迷いの消えた私の動きはこれまでより格段に速くなり、カラミティの攻撃を根こそぎ弾き返しながら、隙を見ては攻撃を放つ。

 カラミティの動きも先程までとは明らかに変わり、これまでの余裕の動きとは打って変わって、全力で私の高速の攻撃にも確実に対応する。

 しかし、初めのうちは殆ど互角の戦いだったが、次第に私が押し始める。


「な、なんだと……」


 先程、レベルが二つ上がったばかりの私の剣スキルや、回避、受け流しスキルなどは、まだまだカンスト値までは到達しておらず、戦いの中でみるみるうちに、その値が上昇していくのを私は確かに感じ取っていた。

 そして、それらのスキルが今のレベルのカンスト値まで到達したと判断した私は、このまま押し切る事はやめ、最後に強力な一撃を大振りで放つ。

 それに瞬時に反応し、余裕で防御の構えが間に合ったカラミティを、私はその勢いそのままに大きく後ろへと弾き飛ばした。

 それと同時に私も大きく後ろへと飛び退き、追撃ではなく一旦距離を置いて仕切り直す事にした。


「ふう。やっぱり強いね。でも、取り敢えず何とかなりそう」

「……貴様……何のつもりだ」

「まあ、こっちにもいろいろあってね」


 カラミティは、せっかくの好機を自ら放棄して距離を取った私の意図が理解ができなかったらしく、怒りと疑惑の眼差しでこちらを睨み付けていた。


 そんな疑問を抱いたのは、カラミティだけではなかった。


「お、おいエト。途中までかなり優勢な様に見えていたのだが……何かあったのか!?」

「エト?」


 私が大きく後退した先にいたのは、心配そうな表情を浮かべるマチルダと、そのマチルダに守られる様にしてこちらを覗いていたトコの二人だった。


 そんな二人に対して、私はカラミティの動きに気をかけながら、ポーチの中に手を入れる。


「大丈夫。でも、いくら優勢でも、すぐに倒せるような相手だとはとても思えないし、あのまま続けてたら次に仕切り直せるタイミングがいつになるか分からなかったから、だから今のうちにと思ってね」

「今のうち??どう言う事だ?」

「これ」


 私はそう言ってポーチの中からエリクサーを取り出し、マチルダに手渡した。


「こ、これは!」

「戦ってみた感じ、カラミティは私一人で抑えられそうだから、マチルダさんはそれを持って、エルヴィンの所へ急いで」

「なるほど、そういう事か!」

「あと、ここは危ないからトコも一緒に連れて行ってくれると助かるかな」

「うむ!承知した!では行くぞ、トコ」

「ん」


 そう言うや否や、マチルダは軽々とトコを抱き抱え、勢いよく通路の方へと駆け出して行った。


 私はそんな二人を見送ると、改めてカラミティの方へと向き直る。


「お待たせ。それじゃあ、続きをはじめよっか」

「なるほど。奴らをここから逃がす為だったか」

「そりゃ、全員殺すとか言ってるアンタの近くに置いとくわけにもいかないからね。下手に人質にでもされても面倒だし」

「人質か。その発想は無かったな」


 そう言ってマチルダ達の方にチラリと視線を向けるカラミティ。

 そしてすぐにこちらを向いて、言葉を続ける。


「なるほど。さすがは姑息な人間の考える事だ。だが、その手を残しておくのも悪くはないな」

「させないよ」

「それはどうかな」


 カラミティはそう言うと、一瞬、身体に力を込める。

 私はすぐに反応できる様、瞬時に身構えたその瞬間、予想外の出来事に思わず眉をひそませた。


「ちっ。余計な事を言うんじゃなかった……」


 私はマチルダ達の向かう通路の入り口を塞ぐ、大きなサソリの姿を見て、思わずそう呟いた。


「あのまま行かせて援軍でも連れて来られては面倒だからな。一応念のため、その奥の方にも一つ用意しておいてやったぞ」

「な!?……」


 失念していた。

 カラミティは魔物を召喚出来るんだった。

 通路の方にはガルカンもいるので、マチルダと二人ならそっちは何とかなるだろうが、その奥の広間にはほとんど怪我人しか残って居ないはず。

 すぐにでも援護に向かいたいところだが、今の私にはとてもそんな余裕はない。

 完全にしてやられた。


「お前は俺の足止めをするつもりだった様だが、逆に俺に足止めをされる気分はどうだ」

「……最悪だね」

「だろうな。だが、恐らく今のお前は俺よりも数段強い。ならばお前がすべき事は、持てる全力の力を出し、一刻も早く俺を倒して仲間の元へ向かう事だ。まあ、出来ればの話だがな」

「……じゃあ、そうするよ」


 と、その私の言葉をきっかけに、私とカラミティは同時に飛び掛かり、先程以上の激しい剣の応酬が、怒濤の如く繰り広げられた。


 恐らくカラミティの目的は、私の全力の力を引き出し、それがどれ程のものかを推し量る事だ。

 カラミティ目線で言えば、戦うたびに変わる私の強さはどうにも掴みどころがなく、戦い方を決めかねている感じなのだろう。

 そこで、それを明確にする為に取った行動が、魔物の召喚。

 言い換えれば、マチルダ達を人質に取って、私に本気を出さざるを得なくしたと言う事になる。


 さらに言えば、ここでそんな手段に出たと言う事は、カラミティはたとえ私がどれだけ強くなっていたとしても、その力を更に上回る為の手段と確信があると言う事だ。

 ならば、そうなる前に、戦いを終わらせるしかない。


「何を企んでいるのかは知らないけど、思い通りにはさせないよ!!ダアアアアアア!!!」


 私はその雄叫びと共に、このままケリをつけるつもりで、今の私の限界の速さと手数でカラミティに攻撃を繰り出す。

 たとえカラミティが何か隠し球を隠し持っていたとしても、それを使う暇も与えず、ひたすら攻撃をし続ければ、相手の勝ち筋は打ち消せるはず。


 私はとにかく攻撃の手は緩めず、威力よりもHIT数を積み上げる。

 いくら深い傷を付けてもすぐに修復されてしまうなら、浅くても修復が間に合わないくらいの数の傷を付ければ、いずれ活路も見えて来る。

 しかも、休む暇なく攻撃を続ける事で、カラミティの反撃機会を極限まで抑え、こちらの被弾も抑えられる。

 戦闘職ではないが、素早さだけはある私にとって、これが今のベストの戦い方だ。


「ぐっ!!予想はしていたが、まさかここまでとは……」


 カラミティは私の猛攻に対し、終始防戦一方となり、途中からは完全に攻撃を諦めて、私の剣を出来る限り弾き返す事だけに集中していた。


「ぬう……!この速さをまだ維持出来るのか!」

「私のスタミナ切れを待ってるなら無駄だよ!鍛治師はスタミナと集中力が全ジョブでダントツ一位だからね!!」

「ぐうっ!!何を訳のわからん事を……」


 しかも、猫耳族は素早さに特化した種族だ。

 レベルアップでのその上昇量は、他スキルの比ではない。


 その後も、私の高速の攻撃は止まらず、カラミティは何度もその斬撃を食らっては瞬時に回復させながら、何とか剣を振り続け、私の剣を弾き続ける。


 ここまで来れば私のワンサイドゲームだ。

 カラミティは完全に防御に徹する事で何とか食らい付いてはいるが、既に数分以上ぶっ続けで繰り出される、息つく間もない私の連続の攻撃に、カラミティは見るからに限界を超えている様子だった。

 カラミティが膝をつくのは、もう、時間の問題だろう。

 マチルダ達や、通路の奥のサソリのことを考えれば、一気仕掛けてケリをつけるべきではあるのだが、私のジョブや種族の性質上、一発の攻撃力は並の強さ程度しかないため、短期決戦には向いていない。

 そんな私にとって、完全に防御に徹するカラミティを追い詰め切るのには思った以上の時間がかかってしまったが、しかしここまで来れば問題ない。あとは引導を渡すのみだ。


「もう、このまま決めるよ!!!!!」


 私はカラミティの動きを見ながら右へ左へと攻撃を広く振り分け、逃げ場を少しずつ奪っていく。

 そしてその攻撃に対応が追いつかなくなり始めたカラミティに、ほんの小さな隙が生まれた。


 私はその隙を見逃すはずもなく、すかさず渾身の一撃を解き放つ。


「これでおしまい!!!え!?」

「ぐぐぐっ!!」

「!?!?」


 しかしそれはカラミティの一か八かのフェイクだったらしく、咄嗟に引き戻した黒い剣で、私の一撃を完璧に受け切った。

 この戦いにおいて初めて、私の剣の動きを完全に止められてしまった瞬間だった。


「なっ!?!?」

「ギリギリ……だったな。だが、これで俺の勝ちだ」

「どう言う意味よ」

「すぐにわかる。はあああっ!!!」


 そう言うとカラミティは、残りの力を振り絞り、私の剣を押し返す様に力一杯に振り払った。

 私はその勢いに逆らう事なく、弾き飛ばされる様に一旦後ろへと飛び退いて、着地と同時に再び、間髪入れずカラミティの元へと飛びかかる。

 ここで仕切り直してしまっては、今までの攻防が無駄になりかねない。

 今は、とにかく畳み掛ける以外の選択肢はない!


「休む暇なんて与えないよ!!」


 私はそう叫びながら剣を持つ手に力を込め、今度は防がれてもそのまま押し切るつもりの渾身の一撃を、カラミティ目がけて撃ち込んだ。


 その瞬間、カラミティは少し足を開いて腰を下ろし、

 その黒い剣を腰元に添える様な体勢で剣先を後ろへと向け、まるで居合切りのような構えを取る。


「やはりお前はただの鍛治師だ。剣を道具としてしか扱えないお前に、神剣である俺が負ける事はない」


 カラミティはそう言い切ると同時に、構えていた黒い剣を高速で抜き放ち、私の振り下ろした渾身の一撃に真正面からぶつけて来た。


「!?」


 その瞬間、カラミティの放った居合切りのような高速の一撃は、まるで紙をナイフで切るかのように、私の剣を真っ二つに切断した。


「え……うそ……」


読んでいただきありがとうございます!

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続きは明日投稿します。

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