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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
43/106

第四十一話 厄災

 グランベル鉱山。


 その最奥。


 そこにある広い空間では、その一番最奥に私とマチルダ、そして入り口付近にガルカンの合計3人が、中央にいるギルドランを挟む様に対峙していた。


 ギルドランは眉をひそめ、私達の様子を伺っている。


 先程までの私とギルドランとの戦いでは、本気を出したギルドランを相手に私は終始圧倒され、そして絶体絶命の窮地にまで追い詰められた。

 そして、もうダメかと死を覚悟したその瞬間、駆けつけたガルカンとマチルダの援護により、私はなんとか九死に一生を得た。


 最後のギルドランの攻撃を阻止してくれたガルカン。

 そして、その隙に駆け寄り私を抱えてギルドランの元から救い出してくれたマチルダ。

 その二人のおかげで、一旦仕切り直しをする事ができた。


 しかし、私がなんとか最悪の事態から免れたと安堵する間もなく、マチルダの口からエルヴィンの危機的な現状と、どうしてそうなったのかの大まかな経緯を聞かされ、私は驚きと戸惑いを隠せないでいた。


「え……そんな事が……」

「ああ。今はシーラがエルヴィンの応急処置をしてくれているが、彼女もほとんど魔力切れの状態だ。もはや一時の猶予もない。のだが……」


 状況が状況なだけに細かな経緯は聞けなかったが、少なくとも、エルヴィンがかなり危険な状態である事と、そのエルヴィンの命懸けの立ち回りによって、私の命が救われたのだという事は理解できた。

 しかも、そのきっかけとなる理由が、何故かあちら側にいたトコの、不安そうな様子を見てという事らしい。


「エルヴィン……」


 要するに、エルヴィンは私とトコの為に、自分の命を投げ打って行動してくれたという事になる。


「……早く戻らなきゃ!絶対に死なせちゃダメ!!」

「もちろんだ。……しかし」


 そう言って視線を上げるマチルダ。

 その視線の先には、眉間に皺を寄せ、とても不機嫌そうにしているギルドランの姿があった。


「私の持ってるエリクサーがあれば、たぶんエルヴィンは助かるはずだけど……でも、今はあれを何とかしないとダメか……」

「だろうな。というか、あれは何だ。あの肌の色や、そしてあの角。まるで太古に存在したと言われる、魔族の姿にそっくりだが……いや、流石にそんな事はない……」

「……」

「おいおい……」


 そう。あれは正真正銘の魔族だ。

 鑑定でもそう表示されていたし、トコもギルドランは魔族だと言っていた。

 しかし問題なのは、そのギルドランはトコの生みの親で、トコがとても大好きな人物であるという事だ。

 私のイメージとは違い、だいぶ口も悪く好戦的だが、トコの家族だと知ってしまった以上、対応に困る。

 流れで戦闘にもなってしまったが、正直やりにくいったらありゃしない。

 そもそも、そんな人物にどうして私は殺されそうになっているのか。

 ギルドランが私を敵視する理由は……


「あ……。私のせいか……」

「ん?どうした?」


 恐らくこれは、いくつかの不運と勘違いにより、行き違いが起きている。

 たぶんギルドランは、私がトコを攫った悪者か何かだと思っていて、ギルドランはそんな私からトコを取り返そうとしたのでは無いか。


 もしトコがポーチの中にいて、すぐに出て来てくれていれば、ここまで話がややこしくなってはいなかったはずだ。

 しかし、トコは私のポーチの中ではなく、マチルダ達の所にいた。

 ポーチの中にいると思い込んでいた私は、トコがポーチから出てこない事で変に勘ぐってしまい、トコの存在や私との関係などの事情を全て曖昧にはぐらかし、最後には強硬な態度をとってしまった。

 その結果、ギルドランは私に対して敵認定をしてしまったのだ。


 そもそも、どうして私がポーチの中にトコの存在を感じていたかという点だが、改めてメニューからポーチの中身の一覧を確認する事で、ようやく理解出来た。


 ポーチの中に入っていたのはトコ本体ではなく、トコの金床としての一部だった。

 恐らくこれは、トコ自身の仕業だ。

 思い返してみれば、この鉱山の入口付近の隠し部屋で、トコは地下工房に置いてあった自分の一部を召喚していた。

 今までトコが頻繁に出たり消えたりしていたのは、ポーチの中に自分の一部を置いておく事で、瞬時に戻ったり出たりする事を可能にしていたのだと考えれば、全ての辻褄が合う。


 出来ればそういう事は事前に教えてほしかったとも思うが、基本的に口数の少ないトコのことを考えると、仕方ないと思わざるを得ない。

 

「おいエト、そろそろ説明してくれ。何があったんだ」


 私がそんな事を一人で色々と考えていると、痺れを切らしたマチルダが、催促する様に事情の説明を求めて来た。


「う、うん。私もよく分からない事が多いから、推測も多いけど……」


私はそう前置きをしつつ、話せる範囲でざっくりと事情を説明した。


「ふむ……。ならばちゃんと説明すればいいのでは無いか?」

「まあ、そうなんだけど、私も最初はギルドランだって分からなかったから、売り言葉に買い言葉って感じで……今更話を聞いてもらえるかどうか……」

「いや、そんな事を言ってる場合か?」


 そう言うとマチルダは勢いよく立ち上がり、私の前まで歩み出ると、ギルドランの方へと体を向けた。


「おい!ギルドラン!聞きたい事がある!」

「……あ?」


 マチルダの呼び掛けに、ギルドランはそう一言呟き、視線だけをマチルダに向けた。


「お前の目的は何だ!もしトコの安否を気にしていると言うのであれば、それは誤解だ!トコは私達の仲間で、むしろ庇護対象だ!彼女に対する悪意は何も無い!一度きっちりと話し合うべきだ!」


 マチルダは堂々とそう宣言し、握られた剣も下ろしたまま、ギルドランに対して対話を求めた。


「……くだらん。後ろのそいつから何を聞いたかは知らんが、まるで見当違いだ」

「なに?」

「俺の目的は初めからお前達を全員殺す事だ。もっとも、直接俺が手を下す事になるとは思わなかったがな」

「……どう言う意味だ。お前はトコを助けようとしていただけではないのか!?」

「確かに知らん仲ではないが、それだけだ。むしろ、おかしな動きをしている分、早めに始末しておくべき存在かも知れん」

「なっ!?!?お、おい、エト」

「え?いや、そんなはずは……」


 どう言う事?

 ギルドランはトコの生みの親だから、トコとは仲の良い親子みたいな物だと思っていたんだけど……。

 トコもギルドランの事をとても自慢げに話していたし、ギルドランも私とトコの関係をやけに気にしていた。

 だからギルドランは、私からトコを救おうとして攻撃して来たのだと思い込んでいたが、どうやら全く違ったらしい。

 それにしたって、殺すなんて……。


「おい!ギルドラン!どうしてお前は私達を敵視するのだ!」

「別に敵視はしていない。まあ、気に入らん奴は何人かいるが、それとこれとは無関係だ」

「どう言う事だ。意味がわからんぞ」

「知る必要は無い」


 ギルドランはそう言うと、突如、全身から凄まじい殺気を放ち、鋭い眼光を私達の方に向けたまま、体をゆっくりとこちらへと向きなおした。

 そして、右手の黒い剣をギュッと握りなおし、明らかに戦闘モードへと切り替えていた。


「お前達を殺す前に、最後にひとつだけ教えておいてやろう。俺の名前はカラミティだ。ギルドランではない」

「え?」


 え……?


 カラミティ???

 ギルドランじゃない???

 いや、確かにこの男はギルドランのはずだ。

 鑑定でもちゃんとそう出ていたし。

 思わず声が溢れる。


「一体、何がどうなって……」

「お前が知る必要はない」


 私の言葉にそう一言で切り捨てたギルドラン、いや、カラミティは、今まさに攻撃に移ろうとしていた。


「では、死ね。……なに?」


 しかし、攻撃に移ろうしたその刹那、カラミティの鋭い眼光は突如消え、目を細めてまるで感情が無くなったかの様な、とても不気味な表情へと変化させ、そしてそのまま動かず、攻撃の手も止めた。


「え?」

「ど、どうした!?」


 完全に予想外なカラミティのその様子に、私とマチルダは訳がわからずに混乱していると、そこに、まるで追い討ちをかけるかの様な予想外のセリフが、私の“後ろ”から聞こえて来た。


「ちょっと前から聞いてたけど、意味不明。エト、説明」

「トコ!?!?」

「ん。遅くなった」


 私が驚き振り向くと、そこにはトコが立っていた。


 もちろん私もとても驚いたが、それ以上に驚いていたのはマチルダだった。


「ど、ど、どうしてここにトコが!?!?!?」

「……説明は今は無理。後でする。エトが」

「そ、そうか……」


 あ、その説明私がするんだね。

 いや、まあするけど。

 マチルダさんも私から聞いた方がいいと判断したっぽいし。


 取り敢えず、トコがやっと来た。

 私の予想通り、ポーチの中の金床の一部を介して瞬間移動しているようだ。

 トコが戻ってきた事で、色々わかる事があるはずだ。

 それで何か状況が変われば良いんだけど。


「エト、この状況は、何?」

「そんなの私が知りたいね」

「ふむ……」

「それよりトコ、一つ教えて欲しいんだけど」

「ん?」

「あれって、ギルドランだよね?本人はカラミティだって言ってるんだけど」

「違う。あれはギルドランじゃない。似た何か」

「え?」


 即答だった。


「あれはただの人形。本体はあの黒い剣。エト、よく見て」

「え?それってどう言う……」


 トコの回答は予想外のものだった。

 あれはギルドランではないどころか、ただの人形で、しかも本体は剣の方??

 どう言う事??

 

 私はトコの答えに驚きつつも、言われた通りにカラミティの持つ黒い剣を注意深くよく見てみる。


「……ん?よく見たらどこかで見覚えのある様な……っ!?まさか!?」

「そう言う事」


 それは、刀身から持ち手まで全てが黒く染められていたので気付かなかったが、その形はまさに、『神剣エターナル』と全く同じものだった。


「そんな馬鹿な……」


 そして私は、そのまま鑑定スキルを発動させる。


 武器名:神剣カラミティ(不整合・欠陥・形成・呪縛)

 種類:神級魔道具(武具)

 ランク:S

 攻撃力:????

 耐久力:????

 制作者:ギルドラン



 やはり神剣で間違いないようだ。

 しかも作者はギルドラン。

 剣の名前の後ろに、色々ごちゃごちゃと付いてはいるが、これは確かに神剣であり、その剣こそがカラミティだった。

 

 しかし、私が鑑定をして一番驚いたのは神剣や名前ではなく、その種類だ。

 

「これ、インテリジェンスアイテム(神級魔道具)……」


 そう。

 これはトコと同じ、神級魔道具。インテリジェンスアイテムだ。

 と、言うことは……。


「中身はガベル。多分これが、槌の中身が空っぽだった理由」

「……なにそれ。全然ついて行けないんだけど」


 よく考えれば、トコはずっとガベルの気配を感じてここまできたのだ。このインテリジェンスアイテムがガベルだと考えるのが筋ではある。

 要するに、自身の依代となる器を、星砕きの槌から神剣カラミティへと乗り換えたという事だろう。

 ならば、今のガベルの名前は星砕きの槌ではなく、カラミティという事になる。


「でも、体の方はギルドランって、鑑定で出たんだけど?」

「それは知らない。たぶん何かの間違い。あれはギルドランじゃない。それだけは絶対に間違わない」

「うーん……」


 流石にスキルで出たものか間違ってるとは考えにくいんだけど……。

 何から何まで訳がわからなさすぎる。


 私がトコと話しながらそんな事を考えていると、その会話を聞いていたカラミティが、ポツリと一言呟いた。


「ほう、鑑定か」

「あ……」


 しまった。

 鑑定のスキルはこの時代ではもう存在していないスキルだ。

 気が動転しすぎて、余計な事を口走ってしまった。


「なるほど。このイレギュラーの原因は貴様のせいか。経緯は知らんが、ようやく運が向いてきた様だな。実に興味深い」

「……どういう意味?」

「それは言えん。だが、代わりと言ってはなんだが、もう少しだけ俺の事を話してやろう」

「……よくわからないけど、せっかくだし聞くわ」


 私の『鑑定』と言う発言に、先程までとは打って変わってやけに上機嫌になったカラミティに対し、私はどこか不気味さを感じつつも、話の続きに耳を傾ける。


「流星の言う通り、この体はただの人形だ。言ってみれば俺の付属品に過ぎない。俺としてもこの姿は不本意だが、この時代で神剣を使いこなせる人物といえば、ギルドランしか思い浮かばなかった」


 なるほど。少し理解できて来た。

 カラミティはあくまでも魔道具であり、誰かに使われて初めてその力を発揮できる物だ。

 恐らくカラミティも、トコの様に人の姿に変形する事は出来るだろうが、それでは全く意味がない。

 自分は剣の姿のままで、誰かがそれを振るう必要があったのだ。

 恐らくあの身体は、神剣の一部。

 トコが私のポーチの中に、金床としての一部を置いて置けた様に、カラミティも神剣としての一部を切り離し、それをギルドランの形に変えたのだろう。


「しかし、鑑定でその名前が出るとは思わなかったな。少しでもその能力を取り込めないかと奴の肉片を触媒として使ってみたが、まさかそんな事になるとはな。これはなかなか使えそうだ」

「触媒??」

「ガベル、どう言う事」


 カラミティの言葉に、思わず私とトコが話の途中で割って入る。


「安心しろ。奴はまだ死んではいない。殺すのはもう少し後だ」

「……」

「意味がわからない。ガベル、何をするつもり」

「そう焦るな。ちゃんと話してやる。ただその前に、流星」

「なに」

「俺はもう、ガベルではない。今の俺の名前はカラミティだ。名前の通り、世界に大きな災いをもたらす存在となった。俺自身がこの世界の災いとなり、この世の全てを終わらせる為にな」

「!?何を言ってるの」


 トコのいう通り、このカラミティは何を言っているんだ??

 いや、もちろん話の内容は理解できるけど、その意図がまるでわからない。

 魔道具であるカラミティが何故そんな事を考えているのか、それにギルドランをいずれ殺すと宣言していた。

 トコとガベル、そしてギルドランは、親子の様な存在ではなかったのか??


「俺はこの目的を達成させる為、今は封印されている、とある存在の力を利用する事にした。それを解放する為に必要となったのが、お前やその周りにいる冒険者達が持つ、強力な運命力だ」

「運命力……?」

「ああ。簡単に言えば、強い生命力を持った上質な魂といったところだ。俺はそれを大量に集める為、各地に強力な魔物を解き放った。まさか、その魔物を倒せる様な奴らがいるとは予想外だったがな」

「なにそれ……無茶苦茶」


 本当に無茶苦茶だ。

 どんな中二病を拗らせたらそんなことになるんだよと聞きたくなるくらい、無茶苦茶な論法だ。

 何故この世界を終わらせようとしているのかは知らないけど、どう考えても独りよがりの勝手な言い分にしか聞こえない。

 そんな事で殺されるとかまっぴらごめんだ。


「だが安心しろ。ひょっとすれば、もうそんな事をする必要も無くなるかもしれん」

「……どういう事」

「この世界で桁違いの運命力を持った存在は、異なる世界からやって来た俺と流星、そして魔族の唯一の生き残りであるギルドランの3人だけのはずだった。だがしかし、」


 カラミティはそう言って一度言葉を切った後、トコから私の方へと視線を移し、全てを見透かした様な目で言葉を続けた。


「お前、あの時代の冒険者だな」

「!?」


 私は思わず両目を見開き、言葉も出ないほどに驚いた。

 あの時代のとは、恐らく私がプレイヤーとして存在していた、この世界での500年前の時代のことだろう。


「この時代では考えられないほどの異常な強さに、鑑定スキルの所有者。今更違うとは言わせんぞ」

「……」


 完全に私の素性を言い当てられた。

 よくよく考えれば、カラミティもインテリジェンスアイテム。

 トコと同じく、500年以上もの時を過ごす存在だ。

 私がプレイしていた時代の冒険者の事を知っていても当然だ。


「それから、こんな事も知っているぞ」

「……なに」

「あの時代の冒険者達は、みな異世界から召喚された人間だという事もな」

「!?!?」


 え!?

 それって、どういう事!?!?

 え?え??意味がわからない!


「時を超えて現れた、異世界の冒険者。その魂は、どれほどの運命力を持っているのだろうな」

「!?」


 その刹那、それまで饒舌に語っていたカラミティが、突如表情を一変させ、その鋭い眼光で私を睨みつけて来た。


「!!」


 私は咄嗟に剣を構え、瞬時に臨戦態勢へと切り替える。


「……で、あとは私を殺すだけって事ね」

「そういう事だ。せめてもの情けだ、一瞬で終わらせてやろう」


 カラミティはそう言い切るのと同時に地面を蹴り、これまでで最速の速さで私の目の前まで迫る。

 そしてその勢いのまま、まるで空間をも切り裂きそうなほどに高速な黒い神剣が、私目掛けて振り下ろされた。


「これで終わりだ」

「!!」


 カラミティの放った高速の一撃が自分に直撃するその瞬間。

 私は最小限の動きで身体を捻らせてそれを躱し、左手の覇斬の剣を振り上げながら、カラミティの右側に回り込んだ。


「なに!?」

「終わるのはそっちだよ!!」


 カラミティの驚く姿にも目も暮れず、私は大声でそう叫ぶ。

 そしてそのまま覇斬の剣を真っ直ぐ下へと全力で振り下ろし、咄嗟に体勢を戻そうとするカラミティの右肩を砕きながら振り抜いた。


「がああああッ!!!!」


 カラミティは、まるで断末魔の様な叫び声を上げ、咄嗟に右腕を押さえながら瞬時に飛び退き、自ら大きく距離を取った。


「くっ、どう言う事だ……。貴様、一体何をした!」


 カラミティは右腕を押さえてしゃがみ込みながら、私を睨みつけながら、そう問い正してきた。


「別に何も。今も、それまでも、私は必死に戦ってただけだよ」

「ふざけるな!今の動き、先程までとはまるで別人ではないか!」


 カラミティは怒りの表情でそう叫び、ひたすら私を睨みつづける。


「……なんかもう、遠慮する必要が無くなったからね」

「何だと」


 正直、私自身もここまで出来るとは思ってはいなかった。

 それでも、そこそこやれるだろうと言う感覚はあった。

 そう思える様になった理由は、目の前の相手がギルドランではなく、カラミティだったとわかったからだ。

 私はカラミティの事を、ずっとギルドランだと思っていた。

 ギルドランは、トコが嬉しそうに話していた、トコの生みの親であり、大事な家族だ。

 だから、私は自分でも気付かないうちに本気を出せないでいた。

 それが実はギルドランではなく、しかも人ですらなくただの人形だと言うのなら、もう、私が遠慮する理由はほとんどない。

 ただ一つ、あるとすれば、


「ねえ、トコ、アイツ倒しちゃっていい?」

「??エト?」


 私の言葉に、エトは不思議そうな表情で首を傾げる。


「私、今までこれだけいろいろあったのに、どこかまだゲーム気分が抜けてなかったんだと思う。

 でも、みんなこの世界で必死に生きてるんだよね。

 私が完全にモブキャラ扱いしてたエルヴィンが、トコや私の為に命を張って死にそうになってるのを聞いて、私はめちゃくちゃ戸惑ったし、ガルカンやマチルダにも絶対に死んでほしくない。

 もちろんトコだってそう。

 ここは、みんなの生きてる現実なんだよ。

 なのにアイツ、世界を滅ぼすとか、まるでゲームのラスボスみたいな馬鹿なこと言っててさ。

 少し前までゲーム感覚でいた私も、アイツと同類だったのかもと思ったら、とても腹が立ったんだ。

 だから私が、私の手で、ちゃんとわからせてやらないといけないと思った」

「……エト、何言ってるか分からない」


 私の話を聞いたトコは、どこかこちらを心配する様な表情で、首を傾げながらそう答えた。


「要するに、この悪い子にお仕置きして、じっくり説教してやろうってこと。一応、あれもトコの家族なんでしょ?だからちゃんとトコには確認をしておきたくって」

「家族……」

 

 恐らくトコには私の言った内容は殆ど理解できなかっただろうが、私の気持ちが何となくは伝わったのか、真剣な表情でこちらをじっと見つめていた。


「……わかった、それでいい。エトに任せる」」


 トコは一言そう言うと、一歩後ろへと下がって行った。


 そんなトコに私は「ありがと」と一言返し、改めてカラミティの方へと向き直る。


「と、いうわけだから。アンタ、覚悟しなよ」


読んでいただきありがとうございます。

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