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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
25/106

第二十三話 巨大サソリ


 通路の奥からは無数のサソリが押し寄せるように襲いかかって来ていた。


「来い!私が相手だ!!」


 接敵数を極力抑えるために、あえて通路の入り口付近に陣取っていた女冒険者は、前方から襲いかかって来るサソリを全て一撃で仕留め、凄まじい手数で次々と倒し続けていた。


 女冒険者の剣が振り抜かれる度に、サソリの死骸の山が積み上げられていく。


「うおおおお!!」


 雄叫びをあげながら剣を振り続け、次々と死骸の数を増やして行く。

 しかし、止めどなく続くサソリの猛攻にやがて息も続かなくなり、次第に限界が近づきはじめた。

 そして遂に、女冒険者の振り抜いた剣はプレストスコーピオンを一撃で倒しきれなくなってしまった。


「くうっ!」


 その攻撃を受けたプレストスコーピオンは、多少の勢いを失いつつも、体勢を崩す事なく、そのまま女冒険者目掛けて襲いかかって来た。


「まだまだ!!」


 女冒険者は振り抜いた剣を咄嗟に切り戻し、今まさに迫りくるプレストスコーピオンへ向け、力任せに叩き付けた。


「!?!?」


 強打を叩き付けられたプレストスコーピオンはそのまま後方に飛ばされ、後続を巻き込んで少しの距離と時間を稼ぐ事に成功したが、その一撃で、酷使しすぎた剣の耐久値が底を付き、剣身の真ん中からポッキリと折れてしまっていた。


「な!?マジか……。コイツはそれなりの業物のはずだったんだが。まさか、こんなに早くダメになるとは……」


 せっかく稼いだ少しの距離と僅かな時間もむなしく、女冒険者は何も出来ず、ただ、その場で苦虫を噛み潰すしかなかった。

 そして当然の如く、新たなサソリが飛び掛かるように襲いかかって来る。


「くっ……ここまでか……」

「まだだよ!!!ふんぬ!!!」


 その一部始終を目撃していた私は、叫びながら女冒険者の前に躍り出て、星砕の槌で襲いかかるサソリを撃ち飛ばした。


「なっ!?」

「よし!間一髪間に合った!」

「お、おい!どうして来た!!逃げろと言っただろ!」

「話はあと!取り敢えずこれ使って!もうちょっとだけ頑張って貰うよ!!」


 私はそう言ってポーチの中から覇斬の剣を取り出し、女冒険者へと手渡した。

 ゲーム時代に神剣を作る直前に作ったあの剣だ。


「わ、わかった、借りておく!!」


 そう言って女冒険者は私から剣を受け取り、大きく息を一つ吐いて、武器を構えた。


「いい剣だ。これ程重心のバランスがいい剣はなかなかない。耐久値を削るのが惜しいくらいだ」

「その辺は別に気にしなくていいから、あともう少しだけ頑張って!!」

「ああ、任せろ!」

「じゃ、なるべく早く終わらせるから、あとはよろしく!!」

「は!?!?お、おい!どこに行くつもりだ!魔物の群れに突っ込むつもりか!!」


 私はその問いかけに応える事なく、プレストスコーピオンの群れの中へと突っ込み、邪魔なサソリを星砕の槌で殴り飛ばしながら、通路の奥へと駆け抜けて行った。


 途中でチラリと後ろを振り返ると、女冒険者は今まで以上の速度でプレストスコーピオンの群れを次々となぎ倒し、通路の出口でサソリ達の猛攻を完全にシャットアウトしていた。


 うん、あれなら大丈夫そうだね。

 さすが、ギルドマスターのポドルさんも唸ったランクA++の剣だけはある。

 たぶん、この時代では最強クラスの武器なんじゃないかな?


 と、そんな事を考えているうちに、私は通路を抜け、峡谷の橋にまでたどり着いていた。


 星砕の槌は攻撃力こそないものの、高い耐久力とレベル99鍛治師の私の腕力で、行手を阻むプレストスコーピオン達を手当たり次第に吹き飛ばしながら進む事くらいは、その気になれば造作もなかった。


「……いた!!」


 プレストスコーピオン達を殴り飛ばしながら峡谷の底を覗き込むと、そこには非常識な大きさをした巨大なサソリが姿を現していた。


 恐らく、最初にここを見た時には、溜まっていたプレストスコーピオンの群れに埋もれて見えていなかったのだろう。

 どれだけいたんだよこのサソリ達。


 未だ、かなりの量のプレストスコーピオン達がいるものの、これらがあのGでないのなら問題ない。


 私は一匹のプレストスコーピオンを捕まえ、力任せに巨大サソリに投げつけた。


「飛んでけーーーー!!!!」


 訂正。Gじゃなくても、直に触るのはやっぱり気持ち悪い!!


 私が投げつけたプレストスコーピオンは、見事に巨大サソリに命中し、その体はぐしゃりと潰れて動きを止めたが、それをぶつけられた巨大なサソリの方は、攻殻の一部に、ほんの少の擦れ跡が付いただけで、ほとんど無傷の状態だった。


「えええ!?あれでほぼノーダメ!?どんだけ硬いのよ!プレストスコーピオンだって結構硬い部類なんだけど!?」


 ちなみに、投げつけられたプレストスコーピオンは、大サソリと激突としたと同時に四散し、見るもおぞましいグロテスクな事になってしまっている。


「もしかしてちょっと早まったかな……」


 いくらトコから強いと言われていても、鉱山のこのあたりは、まだ初心者向けのエリアだったはずだし、使役しているのがプレストスコーピオン程度の魔物だったからそれ程強い魔物じゃないと思ってた。

 その程度なら戦闘職じゃない私でもレベル99のステータスでゴリ押せば何とかなると思っていたが、どうやらその目算は違っていたらしい。


「まあ、最悪マラソンしながらヒットアンドアウェイでもしてればいずれは勝てるんだろうけど、でも、流石にあっちが持たないよね……」


 チラリと後ろを振り返ると、通路の入り口の方で女冒険者がプレストスコーピオン相手に鬼神の如く無双している様子がうかがえる。


「……あれ?案外大丈夫っぽい??」


 そこでは、女冒険者が思いの外余裕を持ってプレストスコーピオンの群れの処理をしている姿が見られた。

 なんなら、通路の入り口から少し前進していて、むしろ押し気味なくらいだ。


「なにあれ、もしかしてあの人、結構強い?」


 そういえば、さっきから私にちょっかいをかけて来ていたプレストスコーピオン達も、私からあの女冒険者の方にターゲットを変えて私の横を素通りするようになっていた。


 どうやら、あっちの方がヤバイと判断したようだ。


「いっそ、あの女冒険者さんと一緒に、先にプレストスコーピオンを狩り尽くした方がはやいかも??」


 そんな事を考えていたその時。


“ドン!ドン!ドン!ドン!ドーーーーーン!!!”


 巨大サソリは深い峡谷の底から崖の側面を飛び移りながら登り、大きな地響きと共に私の目の前に飛び降りて来た。


 その全貌を明らかにした大サソリは、高さは2メートル以上の巨体で、左右には大きなハサミを持ち、尾は太くその先端には細い毒針が付いていた。

 全体を覆っている甲殻は昆虫独特のツヤのある質感で黒光りしており、私の知るサソリをそのまま大きくした様な形だ。

 大型犬サイズもあるプレストスコーピオンも充分大きかったが、それとは比較出来ないくらいに巨大なサソリの魔物だった。


「なるほど。私の相手はアンタって事ね」

『ギギギギギ』


 私がそう言葉をこぼすと、その巨大サソリは、低い唸り音を出しながら、私をギロリと睨みつけてきた。

 さすがリアル。迫力がヤバイ。


「でも、ここまで大きいと逆に虫っぽくなくて助かるよ」


 動物や亜人系の魔物と違って、どこか無機質感のある刺すような眼力に、私は思わず怯みそうになったが、なんとか踏ん張り、負けじと睨み返し、私はスキルを発動した。


「目には目を、歯には歯を、睨みつけには『鑑定』を!」


 という訳で、まずはこの巨大サソリの情報を鑑定してみる事にした。


名前:キングスコーピオン

種類:古代種・昆虫タイプ甲殻類


 え!?

 情報これだけ!?


「!?……うわぁっ!!」


 私が鑑定結果に驚いていたその一瞬、キングスコーピオンはもの凄い速さで大きなハサミを突き出して来た。


「あっぶな!」


 私は咄嗟に体を捻ってその攻撃を躱し、思わず距離を取ろうと後ろ斜めに横飛びした。

 だがその瞬間、まるでそれを狙っていたかのようにもう片方のハサミが私目掛けて突き放たれた。


「!?」


 しまった!

 今のはフェイク、こっちが本命だった!!


 私の足は咄嗟の横飛びで地面から離れおり、身体が宙に浮いている。

 今の状態では、この攻撃を避ける術がない。


「ぐっ!!!」


 それでも何とか体を捻ってかわそうとするが、突き放たれた巨大なハサミの勢いは凄まじく、えぐるように私の腹部に直撃した。


「ぐはっ!!!」


 私は短い悲鳴を上げて勢いよく突き飛ばされ、後ろの岩壁に強く叩き付けられた。


「がはっ!!……な、なんて威力……」


 私はキングスコーピオンの攻撃の威力に驚きながらも素早くその場で起き上がり、瞬時に体制を整えた。


「え!?!?」

『ギギギギギ!!!』


 しかし、キングスコーピオンはそれよりも早く、私への追撃に移っており、既に目の前にまで迫っていた。


 速い!!


 その巨体からは想像もできないほどの素早さで距離を詰めて来たキングスコーピオンは、大きなハサミを振り上げ、私目掛けて振り下ろして来た。


「ちいっ!でもそんな攻撃じゃ私は倒せないよ!!!力比べなら負けないんだから!!」


 いくら攻撃を躱し続けてもラチが開かないと判断した私は、その場で右足を一歩後ろに下げ、ぐっと腰を下ろして踏ん張ると、右手に持った星砕の槌をギュッと強く握りしめた。


 振り下ろされて来る巨大なハサミが、今まさに目前に迫ろうとしたその瞬間、私は渾身の力を込めた星砕の槌を巨大なハサミの側面へと打ち込んだ。



読んでいただきありがとうございます。

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