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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
23/106

第二十一話 女冒険者


 鉱山内の隠しエリアで、トコの素性と私の召喚の理由が明らかになった後、私達は鉱山の奥へ進むべく、隠しエリアから最初の広い空間へと戻ってきた。


「で、その魂は本当にこの鉱山にあるの?」

「わからない。でも可能性は高い」

「どうして?」

「古代の魔物」

「魔物??」


 結局、私はトコの探し物の手伝いをすることになった。

 どうやら、トコの探している“星砕の槌“の魂はこの鉱山にある可能性が高いらしい。

 私の探し物、ゲラルドさんの大工道具の修理用素材を手に入れるという目的も一緒に出来そうだったので、取り敢えず一緒に行動する事にした。


「もしかして、最近鉱山内に魔物が湧き出したのと何か関係が?」

「たぶん。新種ならともかく、古代の魔物が現れるのはおかしい」

「おかしいのはまあ、わかるけど、それが何の関係が?」

「古代の魔物はこの時代には存在しない」

「まあ、そうだね」

「でも現れた。500年前から召喚でもしないと無理」

「!?ちょ!それって……」

「召喚が出来るのは私だけじゃない。ガベルも出来る」

「ガ、ガベル?」

「ガベルは私の姉。“星砕の槌“の愛称」

「!!」


 確かに、各地で突如現れた魔物は自然発生ではなく、何者かに召喚されたものだとすれば、その方が断然納得ができる。

 そして、“星砕の槌“通称ガベルの魂が、その召喚に関係している可能性は、十分に考えられる。


「でも、その召喚ってインテリジェンスアイテムしか呼べないんじゃなかった?」

「そのはず。でも、エトは召喚されて来た」

「あー……」

「もともと、召喚術はギルドランの持っていた書物に書かれていたものを真似しただけ。私も完全に理解してるわけじゃない」

「ギルドラン?」

「ギルドランは私とガベルの生みの親」

「生みの親?って事は、“流星の金床“と“星砕の槌”の作成者って事?」

「そう。私達を生み出した、天才鍛治師」


 天才鍛治師……。


 なるほど。

 確かにこんな凄い魔道具、インテリジェンスアイテムなんてものを作れる人物がいるとすれば、それはもう、天才以外の何者でもない。

 その上、召喚術に関する知識まで持っているらしい。

 本来、特に鍛治に関する事については、私はかなりの負けず嫌いだが、もはやこのレベルになって来ると、一周まわって全く悔しくない。

 ただ、凄いと思うだけだ。


「そう。ギルドランは凄い」

「まあ、本を読んだだけで召喚術を習得できちゃうアンタ達も十分凄いけどね」

「ふふん」


 取り敢えず、そのガベルというのが魔物を召喚している可能性は高い。

 ガベルもトコと同じ知性ある魔道具ならば、私の様に他のものを呼べたとしても不思議ではない。

 もしかすると、その召喚術はもとから時間を超えることも可能な魔術であったという可能性も考えられる。


「だとしたら、急いだ方が良さげね。魔物の発生が自然発生なら、データをとって今後の増え方もある程度予想出来そうだけど、もし召喚なら、ほぼ予測は不可能だから」

「エト」

「ん?」

「私は魔道具。魔物との戦闘は無理」

「え、そうなの?」

「そう」


 まあ、そんな気はしてたけど。

 ワンチャン、攻撃魔法で無双したりするかとも思ったが、そういう事もないらしい。

 そんなんでよく一人でこんな鉱山に来たもんだ。


「まあ、その辺は大丈夫。これでも私はレベル99だからね。武器の扱いも一通りマスターしてるから、よっぽどのことがない限りは問題ないよ」


 最悪、格闘スキルもマスターしてるから、素手での戦闘もいけなくはないが、なんか魔物を直で触るのはちょっと気が進まないので、出来ればそれはやりたくない。


「……エトは鍛治師じゃない?」

「ううん、鍛治師だよ。ランクSの装備を作るには、全武器のスキルマスターがスキルロック解除の必須条件だからね。もちろん、職業専用の技スキルや職業ステータス補正は無いから、同じレベルなら本職には当然負けるけど」

「レベル……スキルロック……ステータス補正……エト、なに言ってる?」

「え?あー、いや、こっちの話」

「どっち??」

「要するに、すごい武器を作るためには自分でも扱えないと駄目ってこと」

「……なるほど」


 いまいち納得は出来ていなさそうだけど、取り敢えず追求して来るつもりはないようだ。

 秘密が多いのはお互い様だということだろう。



 最初のエリアを抜け、奥へと向かって進んでいく。


 “メニューウィンドウオープン”


 私は心の中でそう呟き、目の前にメニュー画面を呼び出した。

 現れたメニュー画面の中からマップを選択し、視界の隅に簡易マップを常時表示させる。

 デバイスをつかわないでも目の前に表示出来るのは、やはり便利過ぎる。


 目の前に表示させたマップを見たところ、私の知っている鉱山の構造とほぼ同じように思う。

 もちろん、細かい部分まで正確に記憶しているわけではないので多少の違いはあるかもしれないが、マップを見る限りこれと言った違和感は感じられなかった。


「エト、奥から魔物の気配」

「じゃあ、この道であってるみたいね」


 このマップには人や魔物の存在を感知するようなレーダー機能はなく、単純な地図としての機能しかない。

 しかし、トコには魔物の気配を何となく感じる力があるらしく、私のマップと併用すれば、敵の潜んでいる大体の場所が予想できる。


 そうやって私とトコは、辺りを注意深く観察しながら、マップを頼りにどんどん奥へと進んでいく。


 そして、幾つ目かの広い空間へ差し掛かったところで、私とトコは、その歩みを止めた。


「エト、あれ……」

「うん。何かあったっぽいね」


 私とトコの視線の先には、一人の女冒険者がいた。

 彼女は、この先に続く通路の手前の脇の方で、その場に座り込み膝を抱えてブルブルと震えていた。


 まるで、なにかとても恐ろしいものを見た直後のように、恐怖で顔を引きつらせながら、自分の足元を見つめてボソボソと何かを呟いていた。


「トコ、魔物の気配はこの奥?」

「そう」

「やっぱりね」


 恐らく、この女冒険者はその通路の先で魔物と遭遇し、そこで何かがあったのだろう。

 とはいえ、彼女も冒険者だ。

 しかも、この鉱山に立ち入る許可を得て来ているのだろうから少なくともそれなりのランクの冒険者のはず。

 そんな冒険者がこんなに怯えてしまうほどの何かが、この奥にあるということだ。

 嫌な予感しかしない。


「取り敢えず、あの女冒険者さんの所に行こう」

「わかった。でも魔物はすぐそこ。気をつけて」

「わかってる」


 私とトコは、辺りを注意深く見回しながら、ゆっくりと女冒険者の方へと近づいていく。

 当の女冒険者は、近づいて来る私たちに気付いているのかいないのか、視線を全く動かす事なく、相変わらずボソボソと何かを呟いていた。


「ありえないありえないありえないありえない……」


 女冒険者は繰り返しそんな事を呟きながら、膝を強くかかえこんでガタガタと震えている。


 見たところ、特に怪我をしている様子はなく、魔物に襲われたというわけでもなさそうだ。

 やはり、なにかとてつもなく恐ろしいものを目撃したのだろう。


「あの、大丈夫ですか?」

「ヒイ!!!!!!」


 私が声をかけた瞬間、女冒険者は飛び上がるようにして悲鳴を上げ、後退りながら私とトコを交互に何度も確認した。


「だ、誰!?」

「冒険者です。あなたと同じ。鉱山内を進んでいたらうずくまっているあなたを見つけたので。えっと、大丈夫ですか?」

「え?あ、ああ、だ、大丈夫だ……」


 女冒険者はようやく正気を取り戻したらしく、明らかに自分より幼い私たちに気を使われているのが恥ずかしくなったのか、2、3度大きく深呼吸をした後、ゆっくりと話はじめた。


「すまない。とんだ恥ずかしい所を見せてしまったな」

「いや、それは別に良いんですけど……なにかあったんですか?この奥で」

「!!!!!」


 この奥で何があったのかを尋ねると、女冒険者は何かを思い出したのか、露骨に怯え始めた。


「恐ろしい魔物でも?」

「魔物……魔物か……いや、魔物じゃない。アレは魔物なんかじゃない」

「え?」


 女冒険者の言葉を聞き、私は思わずトコの方へ振り返るが、トコも首を傾げ、私に向かって顔を横にふる。


 トコが感じた魔物の気配は、この奥からだと言っていた。

 たしかに、トコが本当に魔物の気配を感じ取れるのかは、まだ確かめたわけではないが、わざわざ嘘を言う理由もない。

 それに、この奥にいるのが魔物ではないと言う言葉に、トコも疑問の表情を浮かべている。


「魔物じゃないなら、この奥には何が?」

「……悪魔だ」

「へ?」

「ここを進むのはやめろ。アレは最悪で、最強だ」

「……」


 最悪で最強の悪魔。

 まさか、そんなものがこの鉱山内に召喚された?

 いや、もしかすると……


「エト。ちょっと見て来る」

「いやいや!駄目だよ!!トコは戦えないんでしょ!!」

「遠くから見て来るだけ。ガベルかも知れない」

「いや、でも!」

「すぐ戻る。待ってて」

「ちょっと!!」


 私の静止にも耳をかさず、一人で奥に進んで行くトコ。

 ここに女冒険者を一人置いていくのもどうかと思ったが、一応正気には戻っているようだし、トコに一人で行かせる方が危険だと判断して、私は慌ててトコの後を追いかけていった。






読んでいただきありがとうございます。

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