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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
22/106

第二十話 インテリジェンスアイテム


「ランクSの……神級道具!?」

「そういう事」

「いやいや!どういう事よ!」


 私の目の前に立つ銀髪の少女トコ。


 一見すれば普通の可愛いらしい少女にしか見えないが、その少女の正体は、まさか神級の鍛治道具だと言う事らしいが……。


 なにそれ!?全く意味がわからないんですけど!?


「エト…」

「な、なに?」

「その驚いた表情……あんまり可愛くない」

「はあ??」

「50点」

「な、誰が50点よっ!!」


 このいきなりの展開に翻弄されている私に、何故か意味もなく煽りをかまして来る。

 いや、なぜに?


 普段は必要な部分まで端折って、ほぼ単語でしか会話をしないので、人との対話は好きじゃないのかと思いきや、こういう事だけはしっかりと主張をしてくる。

 全くいい性格をしている。


「エト。ついて来て。説明する」


 そう言って一人で奥に進みだすトコ。

 そんな相変わらずマイペースなトコを見ながら、私は言われた通りにトコのあとをついて行く。


 隠し通路を進むと、やがて道は広くなり、天井の高い大広場にたどり着いた。

 ここはゲーム時代では有名な隠し採掘スポットで、通常の採掘スポットより少し希少な鉱石がそこそこ取得出来る場所だ。


「トコ。ここに何かあるの?いや、鉱石があるのは知ってるんだけど……そういう事で来たわけじゃないよね?ていうか、私はあなたに聞きたいことが山程あるんだけど、そもそもあなた何者なの?」

「エト。ちょっとうるさい」

「なっ……」

「順番がある。邪魔しない」

「わ、わかったわよ」


 何故だ。何故かトコには逆らうことが出来ない。

 なんだろうか、この少女らしからぬ貫禄は。


「……召喚する」

「へ?」


 トコは両手を天に掲げ、目を閉じ、何やら呪文の様なものを詠唱し始めた。

 すると、彼女の身体から薄っすらと光が漏れ出し、やがてその光は風を生み、長く艶のある彼女の銀髪はふわりふわりとなびき始めた。

 そして、彼女の周りに生み出された風は魔力へと変わり、徐々に勢いを増しながらその量を増やして行った。


「ちょ、ちょっと!?一体何をしようとしてるの!?」


 私は、トコを中心に巻き起こる突風に飛ばされないよう、姿勢を落として踏ん張り、思わず声を荒げていた。


 天に突き出したトコの両手からは、細い光の糸が放たれ、やがて、幾何学的なルーンの魔法陣が展開されていく。


「魔法陣!?……あれ、でもどこかで見た覚えが……あ!?」


 上空に描かれた魔法陣は、私がこの世界に転移して来た時に足元に描かれていた魔法陣と、あまりにも酷似していた。


 あれってもしかして!??


 トコの詠唱が終わり、魔法陣が完成した。

 その魔法陣は激しく点滅しながらその速度を上げ、最後には辺り一面を照らす眩しい光を放った。


「うわぁっ!」


 その直後、トコは閉じていた目を大きく見開き、両手を勢いよく振り下ろした瞬間、魔法陣の中心部から何かの姿が現れた。


〝!!!!!!!!!!〝


 音にもならない強烈な何かが辺りを襲い、その直後、ピクピクと私の猫耳が反応した。

 何やら魔法陣の奥の更に奥から、徐々に音が聞こえて来た。

 まるで、遥か上方から凄まじい速度で何かが落下して来ているような、どこか心を不安にさせる様な、そんな音だ。


「エト。そこ危ない」

「えっ!?」


〝ドーーーーーーーーーン!!!!!!〝


 トコが、私に声をかけた刹那、激しい衝突音と共に目の前に何かが落ち、小さなクレーターが出来上がっていた。


「な、な、な……」


 危ないなんてもんじゃない。あと少しで直撃するところだった。

 幾ら私がレベル99だとは言え、あんな勢いで頭に物が落ちて来たら絶対に死んでる。

 この子、何してくれてんの!?

 頭おかしいでしょ!!


 私の目の前に出来上がったクレーターの中心部からは、視界を奪うほどの砂埃が立ち上がり、やがて、鈍色の金床が姿を現した。


「流星の金床。私の本体」

「は?」


 トコによって召喚されたそれは、鈍色の大きな金床。

 まるで古代遺跡から見つかった出土品のような、なんとも言えない風格を漂わせていた。


 よく見るとその金床には流星のような紋様が刻印されており、またしても、どこかで見たような既視感を覚えた。


「地下工房から召喚した」

「地下工房って……あ!!私のお店!?」


 この金床、確かに見た事がある。

 商業区の外れにある、私がもらったあの店の奥に、確かにこんなのがあった気がする。

 そう、ゲラルドさんを唸らせていた、あの炉のそばにあったやつだ。


「え!?なんであの店にあったのがこんなところに!?って、召喚って何よ!?は!?は!?はあぁ!?」

「エト、その顔も可愛くない。45点」

「5点減った!!」


 トコはそんな軽口を叩きながら召喚した金床の元まで行き、明らかに重そうな見た目の鈍色の金床を掴むと、軽々と胸元まで持ち上げた。

 その直後、その金床は溶けるようにトコの手のひらで崩れ、そのままトコの手の中に吸い込まれるようにして溶け込んでいった。


「私は、インテリジェンスアイテム。流星の金床」

「……」

「知性ある魔道具。それが私」

「ま、マジですか……」

「マジ」


 知性ある魔道具。別称インテリジェンスアイテム。

 知性を持ち、人の言葉を話す、神級の魔道具。

 まさか、トコがそんなとんでもない存在だなんて、ちょっとこの世界、いくらなんでもファンタジー過ぎやしませんか?


「私は知性ある魔道具、流星の金床」

「う、うん。それはさっき聞いた」

「そして、エトの持つ“星砕の槌”は私の姉」

「……はいぃぃぃ??」


 この期に及んで、また新しい情報を放り込んで来た。

 もう、とっくにお腹いっぱいだよ。

 なのに、これからまた更にぶっ込んで来そうな予感がする。

 もう、勘弁して下さい。


「それは私に必要なもの」

「い、いや、ちょっと待とうか」

「だから私が、この時代に召喚した」

「いやだから……って、え?この時代に……って、まさか!?」

「召喚は高等技術。エトの召喚は想定外」

「えええええええええ!?!?!?」

「またその顔。可愛くない。40点」

「また減った!!」


 トコの理不尽採点はともかく、聞き捨てのならない事実が明らかにされた。


「私をこの時代に召喚したのはあなた!?」

「私が召喚したのは“星砕の槌“。でも抜け殻だった」

「抜け殻?」

「人で言うところの魂のような物。それが無かった」

「魂……」

「その代わり、エトが来た。謎」

「代わり……」


 なるほど……。

 私はその魂の代わりに呼ばれたって事か。


 この“星砕の槌”がトコと同じ知性ある魔道具なら、トコと同じように人の言葉を話すはず。

 でも、今までそんな事は一度もなかった。

 たぶん、私が手に入れるよりも前から、中身はなかったのだろう。

 でも、トコは中身ごとこの時代に呼ぼうとした。

 しかし、そこには魂はなく、その魂の代わりに、“星砕の槌”を持っていたゲームキャラであるエトを介して、現実世界の私の魂がこの世界に呼ばれたのだ。

 だとしたら、一応の辻褄は合う。

 何故ゲームの世界が現実になっているのかとか、まだ色々とわからないところは沢山あるが、取り敢えず今は、それで納得しておこう。


「マジか……」

「エト。どんまい」

「あんたが言うなっ!!」


 まるで人ごとの様な口ぶりのトコ。

 自分がとんでもないことをやらかしてるって自覚はあるの!?

 まあ、無さそうだけど!


「で、一応話はわかったけど、私にその情報を開示した理由って何?どうせまた面倒な事なんだろうけど、一応聞くわ」


 もちろん面倒ごとはゴメンだけど、元の世界に帰るためには少しでも情報が必要だ。

 現状として、おそらくトコ以上にその情報を持っている人物はいない。

 ならば、多少の面倒事も致し方ない。


 というか、どうせ何もしなくても色々と巻き込まれそうだし、だったら自分から関わっていった方が精神衛生上、ずっとマシだ。


「中身を探す。手伝って」

「へ?中身はないんじゃないの?少なくとも私がこの槌を手に入れた500年前の時点で、もう既になかったと思うけど。てか、もしあるならもう一回召喚すれば良いじゃない」

「無理。呼べるのは器だけ。魂は無理」


 召喚で呼べるのは、魂を収める器、要はインテリジェンスアイテムである“流星の金床“と“星砕の槌“だけって事か。

 確かに、それなら本来呼べないはずの私まで呼べたのは、想定外と言うほかない。


「でも、探すにしてもどうやって探すわけ?私の知る限りこの槌はあなたみたいに喋ったりしてなかったし、いても500年よりもっと前なんじゃないの?」

「この時代にある。それはわかる。でも場所まではわからない」

「へ??なら、どうしてわざわざ500年前から召喚を?」

「過去から呼んだつもりはない」

「???」

「私は、時間を超える召喚術なんて知らない」

「え?でも……」

「ただ“星砕の槌“を召喚しただけ。そしたら500年前からエトと一緒にやって来た」

「え……」

「エト、謎過ぎ」

「あんたに言われたくないわ!!」


 でも、そうか。

 これでようやく理解できた気がする。


 私がこの世界に飛ばされたあの日。

 あの日は、私がエターナルワールドオンラインを引退することになっていた日だ。

 理由は本物の鍛治師になる為。


 恐らく、私はそれからゲームに復帰することはなく、データ自体も消えてしまったのだろう。

 結果として、私のキャラは、メイン装備である“星砕の槌”と一緒にその世界から消えてしまい、今の時代から500年前にその存在が失われたと言う事なのだろう。


 召喚で呼ぼうとしても、ないものは呼べないので、それがまだあった時代から無理矢理呼んだという事か。


 しかも私を巻き込んで。

 んな無茶苦茶な……。

 せっかく、夢に見た鍛治師への第一歩を踏み出す予定だったのに。

 一体、私が何をしたっていうのよ……。

 なんかもう、一周回って泣けて来るよ……。


「エト」

「ん?なに?」

「……どんまい」

「誰のせいよ!!」



読んでいただきありがとうございます。

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