第十七話 鉱山到着
「あなた、なかなか面白いわね!」
「へ?」
「まさかアレに食って掛かるとか、中々いい根性をしてるわよ。思わず笑いそうになって、堪えるのに必死だったんだからっ」
「えーっと??それはどうも……スミマセン??」
「いや、なんであなたが謝るのよ。逆よ逆!褒めてんのよ!」
「は、はあ……」
突然私の元にやって来て、やけにテンション高めで話しかけて来た、回復術師風の女性冒険者。
出会って秒で彼女の勢いに飲まれていた。
やっぱりこっちの世界にもいるんだな、陽キャって。
「あ、いきなりごめんなさいね。私はシーラ。見ての通り回復術師よ。よろしく。で、あなたは……鍛治師かな?槌持ってるし」
「あ、はい。エトって言います。まあ、鍛治師です」
「そう、よろしくねエトちゃん」
秒で私の呼び方が「エトちゃん」になった。
スゴイ。さすが陽キャだ。これが俗に言うコミュ力と言うやつか。これまでの私の周りには居なかったタイプだ。
「ちなみに、さっきのアレはガルカン。一応うちのクランのリーダー」
「リーダー?あれが?」
「一応ね。まあ、強さは本物だし。ソレントでも上から10番目以内には入るんじゃないかな。ま、それ以外の部分に色々と問題はあるんだけど、別に悪人ってわけじゃ無いよ。性格悪いだけで」
「はあ。……はい?」
いやいや、どういう事よそれ。
性格の悪い善人とか、ちょっと意味がわからないんですけど。
「根はいい奴よ。それ以上に素行が悪いだけで。まぁ、ガキ大将がそのまま大きくなった感じだって思ってもらえればいいわ」
「あー。……なるほど」
うん、一番めんどくさいやつだね。
極力ノータッチの方向で行こう。
とは言え、既に面倒ごとに巻き込まれていそうな予感がビンビンにするので、自衛の為にも今のうちに情報を集めておく事べきか。
どうやらそのガルカン達は、私がランク制限で受けられなかったクエスト【鉱山の古代魔物討伐クエスト】を受けてここに来ているらしい。
ちなみにクランとは、ゲーム時代ではチームと呼んでいたもので、いわゆる所属団体の様なもの。
ガルカンはそれなりの冒険者で、ランクはなんとAらしく、“大剣のガルカン”としてそれなりに名は売れているらしい。
もちろん私は知らない。
そして、そのガルカンをリーダーとして擁する戦闘系クラン【動猛獣の牙】も、実力派戦闘系冒険者集団として、それなりに有名らしい。
もちろん私は知らない。
「まさか知らないとはね。アレでも一応、ランクAの冒険者だし、そのランクA冒険者を擁するクランとしても結構有名なはずなんだけど」
「そうなんだ。ソレントに来てまだ数日だから知りませんでした」
正確には、この世界に来て数日なんだけどね。
そう考えると、かなり濃い数日だなぁ。
「なるほどね。じゃあ、エトちゃんはクランやパーティーにはまだ入ってないの?生産職でもソロじゃなかなか大変じゃない?もし、よかったらウチのクランに入る?私からガルカンに紹介出来るけど」
「あ、それは良いです」
速攻で断る私。
シーラさんも、デスヨネーって顔をしている。
なら最初から聞かないで欲しい。
「ごめんなさい。どう考えてもあのクマとは仲良くできそうな気がしないので」
「クマって……。まあ、そうだけど。でもそれ、本人の前で言わない方がいいわよ」
「どうして?別にあんなの怒っても怖くないでしょ」
「ネチネチとウザ絡みされて面倒だから」
「わかった。絶対言わない」
しかし、あのクマはだいぶ偉そうな感じだったけど、たぶんレベル30くらいだよね。
なら、そこまで強くはないと思うんだけど。
あのクマでランクAって事は、この世界の冒険者のレベルはかなり低い?
強い魔物はほとんど絶滅して、古代の魔物として扱われている現状なら、それも仕方ない事なのかな?
「それで、あのクマはなんであんなに急いでるんですか?」
「さあ?」
「え??」
「なんか『俺の最速バジリに勝ってみろ!』とか言って勝手に盛り上がってたし、考えるだけ無駄かなって」
「なにそれ。心底くだらないんですけど」
「うん。本当どうでもいいわ」
なんかもう、怒る気も失せて来た。
変に絡んでも逆にウザ絡みされるだけだし、やっぱりアレにはノータッチで行こう。
「そう言えばエトちゃん」
「はい?」
「エトちゃんも鉱山へ魔物討伐に?」
「あー、いえ。ちょっと鍛治素材を採りに」
嘘は言ってない。
素材を採るために、魔物をたおすのだ。
クマやシーラさんにバレたらまた面倒な事になりそうだし、バレない様にこっそりと倒さなきゃだね。
「そっか、古代の魔物討伐クエストじゃ無いのね。あれは受注定員無かったから、てっきりエトちゃんもそうなのかと思ってた」
「私は鍛治師だし。それに、ランク制限で受けられないですから」
「え?」
「ん?」
突然シーラさんが不思議そうな顔をする。
そして、視線を私の頭からつま先まで数回往復させる。
「ちなみに、エトちゃんの今のランクを聞いても?」
「え?Fですけど」
「F!?本当に?」
「はい。デバイスにも、ほら」
「……本当ね。とてもFに見えないわ」
「そうですか?」
「ええ。雰囲気というか、立ち振る舞いが初心者っぽくないもの」
まあ実際、初心者じゃないからね。
むしろベテランを通り越して廃人プレイやってましたから。
「冒険者になったのは最近だけど、鍛治師歴はそこそこだから、そのせいなのかな?」
「ああ、なるほどね。って、冒険者じゃなかったって事はギルドにも入らずに生産職してたって事!?
「え、いや、そうなる……のかな?」
まずい。色々と辻褄が合わない流れになって来ている。
でも、ゲームの世界だとか、異世界転移だとか、そう言うのを伏せながらじゃ何処かで綻びが出るのは仕方ないよね。
まさか、本当の事を言うわけにもいかないし。
もし信用してもらえたとしても、それはそれで大ごとに発展しそうだし、信じてもらえないならそれはそれでただの虚言癖のイタい奴だし。
この世界に馴染むまではしばらく我慢かなあ。
「一体どんな田舎から来たの?このご時世ギルドのない町なんてもうないはずだけど」
「どこから……あー、えっと、どこって言うか、色々あって、もの凄く遠いところから、かな?あはは」
取り敢えず笑って誤魔化すしか今の私には手段がない。
でも、どこから来たのかと聞かれて、笑って誤魔化すしかできない今の状況に、ちょっと胸が痛くなった。
ここは、私が知っている人も、私を知っている人も誰もいない世界。
もう二度と戻れないかもしれないくらい、遠いところ。
大好きな兄貴や、私の鍛治師としての目標でもあるお父さんとも、今は会うことができない、それくらい遠い場所。
本当に帰る方法とかあるのかなぁ……。
「ふーん。ま、これ以上詮索はやめとくわ。なんか色々訳ありっぽいし」
「うん、ありがと」
なんかちょっと私がセンチな気分になったせいで、変に気を使わせちゃったみたい。
敢えて追求して来ないでくれるシーラさん、やっぱりいい人だな。
そんな感じでその後もシーラさんと色々話し込んでいる内に、気付けばグランベル鉱山の入口付近まで来ていた。
「シーラァァ!!!何をしている!?お前待ちだぞ!!さっさと合流しろぉぉ!!」
鉱山の入り口ではガルカン率いるクラン【動猛獣の牙】のメンバー達がバジルから降りて突入準備をして待っていた。
「あらあら。クマさんが御立腹のようね。また面倒くさいことになる前に私は先に行くわ」
「はい。色々とありがとうございました」
「あはは、私は別になにもしてないわよ。それじゃエトちゃん、また会いましょ」
「はい。お気をつけて」
「エトちゃんもね」
そう挨拶を交わすと、シーラさんはバジリの速度を上げ、綺麗なブロンドヘアーをなびかせながら、颯爽と走り去って行った。
◆
鉱山の入り口に到着すると、そこには数十匹程のバジリが待機していた。
その数からして、ガルカンやシーラさん達以外にも多くの冒険者達が鉱山にやって来ているようだった。
「お疲れさま。しばらくここで待っててね」
私はバジリから下り、長距離を走ったバジリを労うようにその身体を摩ってあげた。
「さて、早速中に入りたいところだけど……。何か見慣れないものがあるなあ……」
鉱山の入り口には、数人の兵士と、その横に大きな看板が立てかけられていた。
そして、私はその看板に書かれていた文字を読み、思わず頭を抱え、ぐったりと項垂れた。
『鉱山内の魔物調査中につき、関係者以外立ち入り禁止』
……。
ここまで来て、それはないんじゃないかなぁ……。
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