第十一話 報酬
読んでいただきありがとうございます。
よければ評価やブックマークをお願いします!
「魔剣……じゃと!?」
「うん。たぶんBランクくらいはあると思うけど。少なくとも、日輪の剣よりはいい物だと思うよ」
「な!?バカモン!!そんな物と比べ物になるわけが無いじゃろうが!!!」
「え?!足りないの!?!?」
「違うわ!!その逆じゃ!!」
なんとなくそんな気はしていたが、どうやらこの世界では魔剣はかなりレアらしい。
話によれば、この世界に現存する魔剣は数える程しかなく、希少さだけで言えば神剣と変わらないくらいには激レアなものだと言う。
中でも回数制限の残数が残っている魔剣は特に珍しく、そのほとんどは回数を使い切ったただの剣となっているらしい。
「まさか現代の技術で魔剣が鍛造出来るとは……。あり得ん」
「あはは……」
ある程度予想はしていたものの、思ってた以上にヤバいものだったっぽい。
まあ、ここまで来たらどうしようもないか。
最悪、ナーシャさんになんとかしてもらおう。
「む、そう言えばお主、途中で変わったスキルを使っていたようじゃが?」
「あー、うん。使ったねえ。やっぱりあれも、レアなスキルだったり?」
私が魔剣作成の時に使ったスキル【マテリアルソウル】。
ゲーム時代では、高ランク鍛治師ならそれなりの人が持って居たけど、取得にはかなりの高難易度クエストのクリアが必要だったので、この世界では持っている人がいなくても不思議ではない。
「知らん。ワシが見たことのないスキルだと言う時点でかなり珍しいものだとは思うが、そもそもあれがどういうスキルなのかが分からんのでなんとも言えん。
じゃが、もしあれが魔剣を作れるというスキルじゃったなら、もう、レアどころでは済まん代物じゃぞ」
「いや、別に魔剣を作るスキルってわけじゃ無いよ。この素材だけで強引に魔剣化するのには必要なスキルだったってだけで」
「あまり変わらん気がするが?」
「全然違うよ。あのスキルは、素材にもよるけどその性質や状態を限界よりも更に数割程度引き上げるってだけのスキルだから。
その結果、場合によっては素材のランク自体が一つ上がる事もあるから、それを利用しただけだよ」
「……だけだよ、ってお主……な、なにを言って……」
「ん?」
見ると、ポドルさんの目がこれでもかというほどにグリングリンに開かれ、だいぶホラーな感じになっている。
サラッと言っちゃえばそのまま流せるかと思って言ってみたけど、やっぱりダメだったみたい。
何か、驚き過ぎたせいかポドルさんの顔が一気に5歳くらい老けた気がする。
可哀想に。
「ま、まぁいい。で、それでどうやって魔剣を作ったんじゃ?いや、無理に聞くつもりはないが……」
「あー。まあ、そうだよね」
そりゃ気になるよね。
私でもそう思う。
もう、ここまで来たら隠してても仕方ないか。
「話せる範囲でだけで構わん。もちろん、魔剣やスキルの事を含め、他言しないと約束する」
「まあ、別にいいけど」
今回、このスキルで引き上げたのは、銀鉱石の極めて高い魔力伝導率と、親和性だ。
更に、太陽石と混ぜた時に一時的に発生した、融解と融合の状態異常。
それらの効果を一気に引き上げる事によって、混ざり合いながらその性質を変えた銀鉱石と太陽石の混合物は、その変化の最中に差し込まれた竜紋石の剣を侵食しながら定着した。
はっきり言って、かなり強引な力技だ。
素材ランクがそこまで高くなかったからこそ出来た、急造品の簡略式魔剣だ。
「強引に作ったじゃと……?力技で何とかした急造品???お主、自分の言っている意味がわかっているのか!?」
「え、いや、ごめんなさい、今のは言葉の綾っていうか、一か八かで出来たマグレみたいなもんだから!ちょー頑張った!めちゃくちゃ頑張ったよ!私!!」
あっぶね、まるでもっと凄い魔剣の作り方を知ってるみたいな感じになるところだった。
いや、実際作れるけども。
「いやしかし、たとえ簡略式とはいえ、まさかこの現代で魔剣を鍛造してしまうとは……あり得ん……」
「いや、でも実際出来ちゃったし……。魔剣を作るのってそんなに難しい物だったの?別にお伽話の架空の武器ってわけでもないんでしょ?」
「似たようなもんじゃ。今現存しているのは全て数百年前に作られたもので、今の時代に魔剣を作った者は一人もおらん。鍛造方法が描かれた書物はあるので、レシピはわかるが、材料が入手出来んのじゃ」
「あー……古代の魔物か」
「うむ」
神剣が作れない理由と同じ理由だ。
なるほど。そりゃ激レアなわけだ。
確かに、魔剣の材料は変わったものが多かった気がする。
「ギルマス、そろそろ」
「ん?ああ、そうだったな……」
ポドルさんの斜め後ろで控えていたナーシャさんが、ポドルさんに声をかけて来た。
どうやら次の予定があるらしく、そろそろお開きらしい。
私としても、この世界の鍛治師らしからぬ知識の無さをボロボロと露呈し始めていたので、ちょうど良かった。
「まあ、取り敢えず試験は合格じゃ」
「おおお!!で、お店は!?」
「ナーシャと相談して好きな場所に決めるといい」
「おおお!!!!選び放題!?!?!?」
「いえ、既に私の方で選んでおります。商業ギルドにも話は通しており、既に引き渡しまで済んでおります」
「なんじゃと!?」
「へ????」
突然とんでもない事を言い出すナーシャさん。
え?何だって??既にお店は選んでて、引き渡しまで終わってる?ん???異世界言語って難しいね。
「お、おい、ナーシャ。お前は一体何を!」
「ギルマス、こちらをエトさんに」
「ん??これは店の権利書……っておい、お前!この店は最高条件の一等地!!!……土地ごとじゃと!?!?」
うーん、やっぱり異世界言語って難しい。
この世界の言語はゲームと同じで日本語ベースのはずだけど、一等地のお店が土地ごととか聞こえて来た。なにそれ、怖い。
「加えて、ギルドからの融資額として1億Gを」
「まてまてまてまてまてまて!!!」
ナーシャさんヤバイ。
絶対にこの人を敵に回しちゃダメだ。
何されるか全く分かんないよ。
「え?少ないですか?」
「違うわ!!その逆じゃ!!」
あ、なんか知ってる。デジャブ??
その後、ポドルさんは怒涛の激しい抵抗を見せ、なんと遂にはあのナーシャさんの説得に成功するという、スーパーミラクルな結果を見事勝ち取ってしまった。
「マジ、ギルドが潰れるんで勘弁して下さい!ホントお願いします、マジで、これマジで!」の一言が決め手だ。
プライドを捨てたポドルさんの本気が垣間見れた気がする。
結局、商業ギルドから買い取った超一等地の店は商業ギルドに返品され、私は生産者ギルドがもともと所有していた空き店舗を譲ってもらう事で落ち着いた。
流石に私もそんな凄い店をいきなりもらっても困るので、何も問題はない。
ちなみに、変更された店舗も、当然のように土地ごとついて来た。
せっかくなので土地ごともらう事にしたけど、まさかこの世界に固定資産税とかないよね?
そして、融資額は一億Gから10万Gへと大幅に減額された。
当然だ。ポドルさんよく頑張った。
てかこれ、融資額ってことは普通に借金だからね?
一億Gの借金とか恐怖でしかないよ。
もともと、試験結果によっては活動資金の融資の代わりに店がもらえるかも、と言う話だったと思うので、常識的な額であれば少額でも融資してもらえるのはとてもありがたい。
最初に1億なんて数字が出て来たから少なく思えるけど、10万Gも普通に大金だからね。
日本円換算すれば約100万円だ。
色々あったけど、最終的には大大大満足な結果となった。
あれ?もしかしてここまでの流れ全て、ナーシャさんのシナリオ通りだったりして……。
駆け引きの鉄板の手法として用いられる、最初に大きく提示して後から少し引き下げるっていう、あれだ。
「エトさん、おめでとうございます。頑張って下さいね」
「は、はい!ありがとうございます!」
間違いない。
この笑顔は全てが上手く行った時のやつだ。
少なくともポドルさんに説得された後の笑顔ではない。
勝者の笑みだ。
やはりナーシャさん、恐ろしい人!
「ナーシャさん、一つお願いがあるんですが」
「お願いですか?なんでしょう」
私はここまでのこの一連の展開を見た上で、私の今後の展開を大きく左右するであろう、一つの大きな勝負に出る事にした。
「私と、お友達になって下さい!!」
「ええ、喜んで」
よし、勝った!!!
かくして私は、ナーシャさんという大きなアドバンテージを得る事に見事成功したのであった。




