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カジxトコ 〜赤猫の鍛治師〜  作者: なな/おたふくろ
序章
12/106

第十話 ウルトラC


 私が選んだ3種類の素材。


 銀鉱石、竜紋石、太陽石。


 その中で、一番最初に手に取ったのが、素材ランクCの竜紋石だ。


「む、竜紋石じゃと?」

「うん。今回はこれをベースに武器を作るつもりだからね」

「何じゃと!?」


 私が持つ知識とこの世界の知識が同じならば、竜紋石は武器製作にはあまり向かない。

 攻撃力よりも、耐久度に特化した素材で、主に防具に使われる素材だからだ。

 上級鍛治師の間では、竜の鱗より硬い防具を生み出すと言われている。


 また、武器などの中間素材として組み合わせることで、耐久力に補正を掛けることが出来るが、あまりそれを知る人は少ない。


 逆に、太陽石は攻撃力に特化しており、耐久力は驚くほど低い。

 その為、一定の耐久力を維持したまま剣にするには、それなりに高い技術が要求される。


「成型の容易な竜紋石に、太陽石で攻撃力に補正を掛ける方を選んだか。それもセオリーの一つではあるが、それではランクBは望めんぞ」

「大丈夫。上手くやればいけなくはないよ」

「確かに不可能ではないかもしれんが、それではただ難易度が上がっただけだではないのか?」

「まあ、それだけの価値はあるから」

「ふむ……」


 まるで腑に落ちない様子のポドルを横目に、私は手にした竜紋石を炉の中に放り込んだ。

 そして、溶け出したそれを取り出し、金床に乗せる。


「あ、槌は自分のを使って良いんだよね?」

「もちろん構わんが、まさか、そのまま打つつもりか?」

「そうだけど」

「いや、太陽石はどうするんじゃ。それでは合金にならんぞ」

「大丈夫。後で使うから」

「はあ?」


 まあ、そういう反応になるのはわかるけど、こちらとしてもなりふりかまっていられないんだよね。

 私は今回、合金を作るつもりはない。


 通常、今回の試験で出された素材だけで作れる最高の武器と言えば、攻撃力に特化した太陽石に、耐久力に特化した竜紋石を混ぜ合わせて出来た合金で作る、『日輪の剣』だ。


 しかし、この合金生成は難易度がとても高い。

 それぞれの素材の融点が違いすぎて、上手く混ざらないのだ。

 竜紋石は恐ろしく融点が高く、炉の温度がそこまで到達した頃には、太陽石は完全に溶け切ってしまい、形成が出来なくなってしまう。

 素材を入れるタイミングや、炉の温度の精密な調節が必要となってくる為、相当高い鍛治スキルレベルが要求される。


 もちろん、鍛治スキルレベルをカンストしている私なら、気を抜きさえしなければそうそう失敗する事はないが、そこから性能を大きく引き上げる事は難しい。

 だから私は、そこで勝負する事をやめた。


「い、一体、何を作るつもりじゃ」

「今から作るのは、竜紋石の剣だよ。まあ、ちょっと手は加えるけど」

「はあ?そんな中級の汎用武器にいくら手を加えても、到底Bランクには届かんぞ?」

「もちろん、ただの竜紋石の剣じゃ無いけどね」


 どうせ日輪の剣を作っても、お店ゲットに届かなければ意味がないし、わたしはこれでも一応、元ランクS鍛治師だからね。

 ここで負けるわけにはいかない。


「じゃあ、始めるよ」


 そう言って、私は剣を打ち始める。

 部屋中に、槌を打つ音が響き渡る。


 こうやって実際に剣を打つのは初めてだが、これまで勉強して来た知識を頼りに、昔、父が刀を打っていた姿を思い出しながら槌を振るう。


「うん、いけそう」


 いくら知識が豊富にあったとしても、実際に剣を打ったことのない自分には技術はない。

 しかし、ここはゲーム時代の要素が反映された世界。

 予想通り、私の鍛治スキルもしっかり反映されており、まるで体が剣の打ち方を覚えているかの様だった。

 私は頭で描いた通りに槌を振るい、燃えたぎる竜紋石を打ち付ける。


 あとは、ゲームでの仕様を元に、マウスのクリックを実際の槌に置き換えて進めていくだけだ。


 竜紋石の剣は、それほど難しい剣ではない。

 素材の性質上、とても硬くて扱いにくいが、それだけだ。

 私はその性質を最大限に引き出すように、切れ味は捨て、限界まで耐久力を引き上げるように打ち続ける。

 何度も、何度も、槌を打つ音が響き渡る。


「な、何じゃそのデタラメな剣は!?」


 そんな私の鍛治打ちを見ていたポドルさんが、またもや騒ぎ始める。


「恐ろしく強度は高いが、そんな物では何も切れんぞ!?それではもはや鈍器ではないか!斬撃ではなく、打撃を放つ剣など聞いたことがない!」


 さすがポドルさん。

 見ただけで何をしてるかわかるみたい。

 でも、剣は元々そういう物だった気がするんだけど。

 昔の西洋の武器は、斬るのではなく、突くか打ち付けるのが主な使い方だって何処かで聞いたことがある。

 魔法やスキルの存在するこの世界では、そういう歴史は無いのかな?

 まあ、今はそんな事はどうでもいい。


 でも、実際にこうやって剣を打つのは初めてだけど、案外なんとかなるもんだね。

 さすが鍛治スキルレベルをカンストしているだけの事はある。


「よし、思ってたよりもいい感じだ。これならいけるかも」


 竜紋石の剣はとにかく硬く仕上がった。

 本来の竜紋石の剣とはだいぶ見た目も違ってるけど、まあ、問題ない。


「なんじゃこれは!剣と言うよりも、ただの剣の形をした角材ではないか!芝居の小道具でも作っておるのか!」

「それいいね。もし失敗したらそうしてもらおうかな」

「はあああ??」


 まあ、失敗させるつもりはないけどね。


 私は出来上がった竜紋石の剣を一旦横に置き、温度の下がった炉の中に、太陽石と銀鉱石を放り込んだ。


「今度は何をするつもりじゃ」

「仕上げだよ」

「仕上げ?」


 今回の最大の難所はここからだ。

 上手くいきますように。

 さあ、行くぞっ!


「【マテリアルソウル】!!」


 炉の中で融解を始めていた太陽石と銀鉱石が激しく輝き始める。

 それと同時に溶け合い、混ざり合ってサラサラとした液体となり、まるで重力を無視するかの様に、その場で真球へと変化していく。


「な、何じゃそれは!?」


 そして私は横に置いていた竜紋石の剣を取り、剣先からその球体の液体の中へとゆっくりと突き刺した。


 球体のその液体は、突き刺された竜紋石の剣を侵食する様に染み込み、同時に剣の耐久力を奪いながら、剣身全体へと纏わり付いた。

 そして、その液体が剣の全体に均等に広がると、やがて凝固し、定着した。


 それを確認した私は、竜紋石の剣を慎重に炉から取り出し、外気に晒して冷却する。


「……出来た!!うん、パーフェクト!!」

「な、な、な……!」


 これが今回私の選んだウルトラC。


 メッキ加工だ。


 竜紋石の剣に、太陽石の銀メッキを施した、要望通りにキラキラ光る片手剣。


「こ、これは……!!」


 だけど、もちろん、ただのメッキじゃない。

 魔力の伝導率が高い銀に太陽石を混ぜ、それでメッキ加工する事により、注いだ魔力の分だけ竜紋石の耐久力を太陽石の攻撃力へと変換させることが出来る、私オリジナルの特殊武器。


「これはまさか!!」

「そう。魔剣だよ」


読んでいただきありがとうございます。

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