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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第一章 : 街の小さなアイテム屋さん
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定休日(2)

「セイタはこの後予定空いてる?」

「まだやることがあります」

「そっかー。じゃあ着いて言ってもいい?」

「……暇なんですか?」

「あったりー!!」


 受け取った材料と魔石を鞄にしまい、その分の代金を渡す。品物を入れた鞄はマジックポーチと言って、見た目以上の容量が確保されている魔道具。


「別に面白いことはしないですけど…それでも良ければ」

「やったね。じゃあおばちゃんまた後でね!」

「迷惑かけるんじゃないよ」


 こうして一人で散策するはずだった買い出しに、一人のおともができた。



 お店で必要になる物を一通り買い終えた僕は、1週間分の食材を買いつつギルドへと向かうことに。


「へー、セイタって料理できるんだ!」

「…家の人があんまり得意では無いので」

「すごーい!私も食べてみたいな」

「………」


 店に来れば作れなくもない……けど、彼女を連れていったらゆっくりしたい日常が失われそうな気がした。ひとまず沈黙を保って応えとする。


「セイタ、今度作って来てよ」

「…どうして?」

「食べてみたいから!」


「作ったとしても、会えるかどうか分からないですよね」

「じゃあお家教えて!私が食べに行く!」


 しまった…と思った時には遅かった。

 自ら店に来てもらうように誘導を……された?


 どちらにせよ厄介事を持ち込んでしまいそうで、ナツには申し訳ないことをしてしまった。いつも寝ているから気にならないとは思うけど。


「まぁ、そのうち」

「やった!」


 グイグイと距離を詰められた僕には、日付をぼかす程度の抵抗しか残されていなかった。


 その後も彼女の明るい性格に振り回されながら、食材を求めて色々な店を見て回ること数時間。


「その鞄すごいね。そんな大容量のマジックポーチ見た事ない」

「普通のマジックポーチだよ」

「ま、魔道具を持ってるのが既に普通じゃないんだけどね…」


 全ての物を入れて尚余裕な鞄に疑問を持つニア。数時間も一緒にいたので彼女の性格にも慣れてきて、気がつけば敬語では無くなっていた。


「そういえば、今はどこに向かってるの?さっき買い物は終わりって言ってたよね」


「ちょっと冒険者ギルドに用があるんだ」

「ギルド…ってセイタ冒険者だったの?」


「違うけど、情報収集にね」

「???」


 予定よりも遅くはなったが、母様に頼まれていた森の情報を探しにギルドに来た。僕がこの世界に来てから、ここに入ったのは二回だけ。


 毎回、新しい学校に入学した一年生4月の気分を味わう場所。何故か微妙に緊張するんだ。


「えっと…依頼板は」


 受付の横に、学校の黒板よりも数倍は大きい依頼版がある。冒険者の人たちは、ここに貼ってある依頼書から選んで依頼を受けるらしい。


「なんの情報を探してるの?」

「霧の森」

「えぇっ?!あそこは入る事すら出来ない謎の場所だよ?近づく人なんていないと思うけど…」

「ない方が僕も有難いんだけどね」


 この数の中から目的のものを見つけるのは至難の業。ニアにも手伝ってもらい、それっぽい内容の紙が貼られていないかをチェックする。


 依頼版は冒険者ランクに合わせて紙が分けられていて、受付に近い方から


S / A / B / C / D / E / Fランク。


 上位のランクに上がるにつれて、その難易度も上がっていく。Fはほとんど採取系統の依頼ばかり。そこからだんだんと魔物の討伐依頼が増えている印象だ。


「あっ!あったよセイタ!霧の森のやつ」

「本当だ。内容は……

『ここから北西に行った霧の森の一部に抜け道を確認。探索、調査を行った上で、内部の情報の提供を求む』…か」


 ランクはA。


 街からは近いのにも関わらず未探索の土地という事で、危険視されているのだろう。それにしても抜け道か……。


 母様の霧の魔法に穴ができるとは思えないけど。


 依頼版の前で考え込んでいると、背後から大きな声で話しかけられた。


「なんだぁ?お前ら。ここはお子様の来る場所じゃねぇぜ。邪魔だからどけ」

「あ、はい。すみません」


 気の強そうな大男。

 関わるとろくなことにならなさそう。


 素直に道をあけ、目的を達成したのでギルドから出ようとする。


「……待てそこの女」

「私?」

「そうだ。随分可愛い顔してんな。ちょっと来いよ、一緒に遊ぼうぜ」

「ごめんなさい、私今日は彼との予定があって」


 けれど、ニアが男の目に止まり、下心丸出しの顔で呼び止められた。


「そんな細っちい男じゃなくてよ。少しくらい話すくらい、いいだろ」

「きゃっ、や、辞めて」


 丁寧に断りを入れたものの、この手の男はそう簡単に諦めない。強引に彼女の手を掴み引き寄せようとする。


「すみません、僕の連れにあまり触らないでいただけますか」


 その手をさらに掴み、僕は男の動きを止めた。この時点で、厄介事に巻き込まれたであろう事は、僕でなくても分かるほど明確だった。

どうも、深夜翔です。

前回に引き続き、買い出し回です。

もはや買い出しというより、街の探索のようではありますが…()

次回もまだ"定休日"の一日が続きますが、ここに来て少年の実力が見れるかも…?

続きが気になった方、是非次回も読みに来てください。


ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。

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