襲撃の追求
「その……、ビックフロッグとイモータルビー……、倒して来ちゃいました……。たぶん、ほぼ全滅……させた……かも、です」
場が静まり返る。聴こえていたのはオオリア様と他数人だけのはずなのに、何故かこの場全体が急に静けさを持ち出してきたような感じだ。
「真かっ?!それは真なのだろうなっ?!」
「うわぁっ、ち、近いですってオオ、リア、様っ。おお落ち着いてください」
肩を勢いよく捕まれ、前後に大きく揺さぶられる。あまりの顔の近さに動揺する暇もない。
「これが落ち着いていられぬ!もしもそれが真ならば、すぐにでも調査隊を派遣せねばならぬのじゃ!」
眼をかっぴらいて真実確認を行い、天を仰いだ後盛大に言い放つ。
「今すぐ調査隊を収集するのじゃ!!出発する!」
僕の理解が追いつかないまま、目の前のシェージアリアの長は行動を再開した。
調査隊が集まり、隊列を組んで出発した後のこと。
残った僕達一行とオオリア様は広い机を挟んで対面しながら、お茶を飲んでいた。
「取り乱してすまなかったの。詳しい話を聞きたいのじゃが、大丈夫か」
「はい。と言っても、大体のことは先ほど話した通りですけど」
「……それでは、イモータルビーの情報から聞こうかの」
……なんだろう。この取調べ感。
机に肘を置いて、こちらを上目に見てくるオオリア様。さては楽しんでるな。
「あれはこの街に来る前です。森で大量の蜂に襲われて、抜けた先の平原にて巨大な巣を発見。爆破処理しました」
「ば、ばくっ?!……わ、分かった。次はビックフロッグの情報を」
「それは数日前ですね。エンダルキア山脈へ訪れる前に湿地を通りまして、大量のカエルに襲われて、戦闘不能にしようとしたところ、誤って殲滅魔法で倒してしまいました」
「お主らは少し追いかけられすぎではないか……?」
うんうん。心配そうな視線を向けてくるのも頷ける。僕だって大量のなにかに追いかけられすぎだと思っているから。
さらに砂漠でサンドワームに襲われた事を伝えたら、それはもう絶句する勢いだろう。
「まぁよい、事情は把握した。どちらにせよこの街の危機に救ってくれたこと、感謝しなければならぬ」
仰々しく頭を下げるオオリア様。慌てて首を振り顔を上げるよう説得すると、
「セイタ、なにかお礼させて?」
近づいた僕へ、小声でそう言った。頭を下げたのはこのためか……。
「わかりました。ただ、今は急いでいますので、次の機会でもよろしいですか」
「むー、しょうがないかー。絶対また来てよね」
お礼と称してただ話したいだけなんだろうけど、今は少しの時間も惜しい。のんびりでも着実に目的の地へと近づいていきたい。
それに、オオリア様……に念押しされずとも、頼みたいことはある。あまり危険なことに巻き込みたくはないのだけど、これに関しては、彼女も関係者といえなくも無い。
「……ところでオオリア様。この後はどうするおつもりですか」
「ここに集めた軍は必要なくなったからの。解散じゃ解散。皆への説明は我が何とかしておこう。……そうじゃ!もしも森を通るのであれば、ついでに先に出発した調査隊の様子をチラと確認してきてくれはしないか?あの辺の森は、蜂共以外にも危険な魔物が多い」
「それくらいであれば了解です」
「うむ。お主らに任せられるのであれば、我も安心じゃ」
念の為に今後のシェージアリアの動向を確認したが、特に気になることも見当たらない。ここへ来るまでの噂通り、この街は基本的に他国や他領土への関心はないらしい。
その後も少しだけ雑談を交わし、僕達はオオリア様と別れて森へと向かった。
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「なんつーか……あれだな。むしろ、今まであの巨大穴が発見されてなかったのが不思議なくらいだぜ」
アルゴートさんは馬車の中から後ろへ流れる景色を眺めている。狭い馬車内を風が吹き抜ける。ここまで何も無い旅路も久しぶりだ。
「確かもう少し先の平原……」
僕もその発言に反応して言いかけた時、前方に明らか緑とは程遠い色の地面が見えてくる。
「……あれ」
「改めて見ると、……やらかしてるね」
「にぃの、せい」
近寄ると嫌でもわかる。何かが爆発した跡。数十メートル下に抉れた半球の地面。その少し手前に、白や灰色の服を着た集団。
きっと、オオリア様が話していた調査隊だろう。抉れた穴を囲んで見下ろしている。
周囲に魔物の反応もなし。様子を見るにトラブルがあるようにも見えない。
……余計な会話に巻き込まれたくは無いし、見つからないようこのまま通り抜けようかな。
こちらの存在に気づかれ前に、僕は馬車をゆっくりと走らせる。穴を突っ切ることができない以上、どの道回り道をしていかなければならない。
(今度からはもう少し気をつけて行動しないと……)
過去の自分の過ちを再確認し、今になって反省する僕であった――
どうも、深夜翔です。
どこへ行っても驚かれるセイタたち。
あのオオリア様でさえ、動揺するほど驚いていました。
そろそろ平穏にひっそり暮らすというセイタたちの目標を自ら破壊していると自覚するべきセイタですが、過去の大穴を見て少し反省した様子……
果たしてその反省が活きるときは訪れるのだろうか?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




