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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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過去の順路

「よーし!!目指すは南!」


 規則正しい揺れ。爽やかな風。こんなゆったりとした緩い空気が、なんだか久しく感じていなかったように思う。


「キィ?」

「どうしたのキリ?かまって欲しいの?」


 馬車で待たせてしまっていたキリが、ここぞとばかりに甘えてくる。普段は馬車の屋根の上を飛び回っているのに、珍しく居場所が僕の頭の上。


「馬車を守ってくれてありがとうね」

「キィ!!!」


 手綱を握る片手をキリの頭へ移す。大人しく撫でられているのは信頼されている証。嬉しそうに鳴くキリにつられて、僕の方も嬉しくなる。


「……ん」

「ナツ、どうしたの?眠いなら後ろで寝てても……」

「んっ」

「セイタ……、妹心を分かってないぜ」


 御者席でキリに構っていると、客車で寝ていたはずのナツがはい出てきて膝の上に頭を下ろす。いつもの事ながら、こういう時は顔を合わせてくれない。後ろではアルゴートさんがニコニコしながらツッコミを入れている。


 首を傾げる僕に、頬を膨らませて怒るナツ。

「ご、ごめんねナツ……」


 よく分からないが、怒っているのなら謝っておかなければ。怒らせてしまったという罪悪感で反射的に謝罪の言葉を口にする。


「……んんっ!!」

「えぇっ、あれ?」


 それが火に油だったようで、今度は足をバタバタし始めた。正直少し可愛い。


「キィーー?」


 そんな兄妹のやり取りも、キリにはお構い無し。僕の頭の上から飛び降り、現在進行形で拗ねている(?)ナツの背中へと移動した。


「ふふっ、キリは僕よりナツの方が好きみたいだね」

「…………むー」


 こうなってしまってはナツも対抗の余地がない。


 なるほど。動物の愛おしさとは、人が人に感じるものとは異なる、強力な影響力を持っているらしい。物申したいが言葉にならず口ごもるナツ。ついにその手がキリへと伸びる。


 もふもふ……もふもふ


 抱き枕の如き柔らかな感触。素晴らしき抱き心地に、ナツ陥落。うっとりと瞼が下がってきた。

 

 天気は晴れ。風が心地よく、道も荒れていない穏やかな道のり。


「…………」

「寝ちゃった」


 ナツが最高の条件の中、睡魔に抗う術など持ち合わせておらず。瞬く間に夢の世界へと旅立って行った。


「にしても、山に登る前に通った場所と同じ湿地だとは思えねぇ静かさだよな」

「登る前にほとんど倒しましたからね。この短期間で数を増やすのは魔物と言えど難しいでしょうし」


 大量のカエルに襲われるのはもうコリゴリだ。


 全滅したわけではないから、遠くにちらほらビックフロッグの姿も見つけられる。追ってこないのは、さほど興味が無いのか……、そもそも気が付かれていないかだ。


 ……平和であるに越したことはないか。


 僕らは一度の戦闘もなく、山頂と激しすぎる温度差を味わいながら、シェージアリアまで戻ることができた。


ーーーーーーーーーーーーー


「…………えっと、何事?」


 一度湿地帯を抜け、シェージアリアの見える小さな平原までやってきた。


 そこで目にしたのは、明らかにただ事ではない様子の騎士……兵士?、近未来な軍隊にも見える……、が慌ただしくテントを広げているところだった。


「何かあったのかな?」

「あの様子だからな。どこかの国から宣戦布告でも受けたのかもしれないぜ」

「縁起のないこと言わないでくださいよ!」


 そんな冗談を言い合いながら、馬車をその集団へと近づけて行く。街を目の前にして豪勢なテントや武器防具、食事処を設けているのはそれが異常な事態であることを意味している。


(本当はこのまま森を抜けようと思ってたけど……、一度藍さんに話を聞いた方がいいかな)


 藍――今のオオリア様に、何があったのか尋ねてみよう。急いでいるとはいえ、知り合った同郷の人を見殺しには出来ない。

 街にいるものだと集団の中を通過して急ぐと、とある訓練所らしき区画の隅に、その見知った顔が目に止まった。


「あ……、オオリア様!一体何があったのですか」


「む?その声はもしや……」


 馬車を急停車させ、手を振りながら駆け寄る。街のトップとも言えるオオリア様が前線(?)にでて指示をしているのには、何かしら理由があるはず。

 緊急事態の可能性も考え、あまり騒がないよう努力はした。


「セイタ!!……ごほんっ、他の者も揃っておるようじゃな」

 笑顔でにこやかに反応したオオリア様は居ない。時々彼女の中の人の本来の素が出てくるのは大丈夫なのだろうか。

 いつかボロが出そうだ。


「今少し取り込み中での、立ちながらの話になるがよろしいか」

「はい。押しかけたのはこちらですし」

「実はな…………」


 会議室でも王室でもない。重要な話には向かない場所で、それでも動く訳には行かないとなると、相当深刻な問題が迫っているのかも……。


「魔物の大量発生が確認されたのじゃ。妾たちは尋常ではない量の魔物……、"集団暴走(スタンピード)"が発生したのではと睨んでおる。そこで大至急軍を派遣し、現地にて調査・討伐を計画している」


 集団暴走(スタンピード)……?

 聞いたことの無い現象だ。話を聞く限り魔物が大量発生することみたいだけど……、これだけの軍が出るほどだ。とても危険なものに違いない。


「どんな魔物が発生しているんですか?」


 ひとまず、詳しい情報を聞こう。僕達も協力できそうであれば参加したい。


「あぁ、ここから南、南東へと広がる湿地帯にてビックフロッグ、さらに南の森林地帯ではイモータルビーの報告が来ている。どちらも厄介な上に大量繁殖されると手に負えない。特に湿地と森の間にある平原では異常な爆発があったとの噂もあるからな。慎重にことを勧めて…………」


 そこまで言ったオオリア様は、ふと思い出したように尋ねる。


「そういえばお主ら、どこから来たのじゃ?湿地帯の方向から来たように見えたのじゃが……」


 その反応……、いや、オオリア様の情報に僕はバツが悪そうに声を小さくして答えた。


「その……、ビックフロッグとイモータルビー……、倒して来ちゃいました……。たぶん、ほぼ全滅……させた……かも、です」

どうも、深夜翔です。


危険な山、エンダルキア山脈にて竜人ディーノから情報を得た一行は、今度こそエルドベルに向かって出発しました。

ここまでどれだけ寄り道してきたんだと文句があるかとは思いますが、すみませんがこれからも大量寄り道、予定は未定でお送りいたします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ感想や評価、ブックマーク登録、いいね、Twitterのフォローなどしていただけると嬉しいです。

ではまた次回……さらば!

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