strategy victory
――なにか逆転できる一手は。
被害を出さないために、ここから逃げ出すために、みんなを……ナツを護るために。今僕ができることは何か。
強ばる身体を押さえつけて、目の前の敵を突破する方法を考える。
「――い」
身体強化は重ねがけできる。でも、量を増やすごとに効果は薄れ体への負担も大きくなる。
「……いセイ――」
転移で逃げる?この試練がそれを許すとは思えない。万が一転移が失敗すれば、それこそ致命的な一手になる。
「おいセイタっ!!聞こえてるか?!」
「へっ?あ、アルゴート……さん?」
思考の中に入っていた僕はアルゴートさんが肩を揺らしたことで現実へ戻ってきた。ハッとする僕に笑いかける。
「あのセイタにも出来ないことがあるんだな。珍しく困ってるみたいで嬉しいぜ」
なんて、冗談めかして言う。
「そうそう。いつも一人で抱えすぎなんだよセイタ!私たちだって結構やれるんだから!」
胸を張って握り拳を作ってみせるニア。その手は微かに震えている。
……自分だって怖いのに、必死に僕を励まそうとしてくれているのが伝わってきた。
「……はははっ」
そうだった。今、僕らは一人じゃない。
「にぃ、だい……じょう、ぶ」
いつものように服の裾を掴んで、小さな声で、それに似合わない大きな希望を見せてくれる――ナツ。
「つっても、俺らには辛い相手であることは変わらんのよな」
「ちょっと?!今セイタを励ましてるんだから、ネガティブになること言わないでよアルさん!」
「それはそうなんだが、ほら。いつまでも待っててくれるような相手でもないぞ」
呑気な口調で指し示す、こちらをじっと見つめるガーディアンを。……なんで攻撃してこないんだろう?
「にしても不思議なやつだよな。あんだけ魔力を纏ってる癖に、一切の魔力操作を感じない。まるで別の能力で動いてるようだぜ」
……能力?
「そうか……、そうだよ!!」
纏う魔力に気を取られて忘れていた。この試練は魔法で作られてはいないことを。いや、古代のものであれば魔法の可能性もあるが、手を加えたであろう結界の術者のことを考えると能力の方が妥当な考えと言える。
つまり、アルゴートさんの言う別の能力で動いているようという表現は間違っていない。
そして、ここに能力で動いているモノがもう一つ。
「セイタ、その様子だとなにか思いついたか?」
「目には目を、魔法には魔法を、能力には能力を――って感じです」
「なんだそれ?…………あぁ、なるほど」
首を傾げたアルゴートさんだったが、振り返った後に理解して笑みを作った。――存外、セイタも危ないことするぜ。
二人の邪悪な笑みに対して、ニアは一人頭にハテナを乗せたまま不思議そうにしている。ナツは言わずとも僕に着いてきてくれる。
「だが、どうやって誘導するつもりだ?回避なんてままならないし、防御じゃ威力が落ちる」
「アルゴートさんとニアでこれをやつにぶつけてください。アルゴートさんは一度使ったことがあるので分かると思います」
そう言って手渡した。球状の爆弾。以前蜂を追い払うのに使ったものだ。
「……なるほど。落ちた勢いはこっちで補えってな」
「そういうことです。僕たちは囮として隙を作りますから、後ろから盛大にお願いします」
「あまり危険なことはして欲しくないが、今回はそれが一番いいか。くれぐれも無理だけはするなよ」
心配そうにそう言ったアルゴートさんに大きく頷き、傍らのナツを抱き寄せる。握った手は何処よりも暖かく力強い。
「やろう」
「んっ」
ガーディアンを睨みつけたその瞳を交戦の意思有りと見なしたのか。今まで動かなかったガーディアンが再び攻撃態勢へ切り替わる。斧と剣の歪な二刀流は憎たらしいほどに様になっていた。
「来るよ!」
距離が離れている時のお決まり行動なのか。片手に握った斧をこれでもかと全力で投擲する。あれが防護結界では防ぎきれない事は分かっているんだ。まだ二人の準備ができていない以上、こちら側に被害を出せない。
――本当はまだ隠していたかったんだけど。
「"反射鏡鳴"」
「"倍加"」
斧の角度に合わせて、胸ポケットに隠していた魔道具を起動させた。
――魔道具『反射の鏡』
収縮可能な魔力鏡。魔力を込めることで巨大化し、物理的ベクトルを反転させる。また、裏表を逆にすると魔法的攻撃を反転させる。
今回の場合、物理的なベクトルの反転。そこにナツの倍加の付与。迫ってきた斧は、その威力を倍にして飛んできた軌道を戻っていく。
「……倒せるとは思ってなかったけど」
たったコンマ数秒で起きたその攻防の結果に、僕は呆れと賞賛を込めて呟いた。
「速度も二倍になってるはず……なんだけどね」
「ん、おか……しい」
もはや目で追えるかすら怪しい程の速さでガーディアンに迫った斧。しかし結果はご覧の通り。莫大なエネルギーを抱えていたはずの斧を少しの危なげもなく片手でキャッチされた。明らかに二体の時よりレベルが上がっている。
「さすがに次は魔道具の耐久がもたないか」
目の前に展開したった一度の攻撃を完璧に防いでくれた反射の鏡は、既にフレームにヒビが入っている。次も同じようには防ぎきれないだろう。
「けどまぁ、こっちの準備は整った」
再びガーディアンが斧を振りかぶり投擲。
防護結界でそれを凌ぐ。
拮抗した結界へガーディアンが追撃を仕掛ける。
――そして、僕の作戦が成功した。
どうも、深夜翔です。
えー、数の数え間違い、並びに勘違いって……ありますよね。
そうです。そうですとも。
フツーに忘れてました。7に3足したら10ですよねそりゃそうですとも。馬鹿は私です。まぁ、今回は8月最終日ということで何卒……
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




