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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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解除と試練

『……貴様、何者だ』

 古龍の結界に触れた瞬間、頭の中に直接声が響く。聞き慣れない女性らしき声。耳元で同時に話しかけられているような不思議な感覚。

『ようやく殺しに来たのかこのクズども』

 妙に威圧的な態度な声色は、この結界に閉じ込めた人間に対する憎悪からか。

 結界内の古龍に変化はない。"念話"と呼ばれる魔法の類を使って声を届けているのだろう。

「違います!僕たちはあなたに話を聞きたくてここまで来たのです」

 応じ方が分からなかったので、結界の中の古龍に向かって大声で話してみた。

『なに?…………確かに俺を封印した奴らとは違うな。何用だ』

 思ったよりも冷静に話を聞いてくれた。様子を伺っているのかもしれないが、素直に会話ができるのであればとても助かる。

「その……前に、この結界はいったい?」

『俺を封印するためのもんだ。あの忌々しいカルト教団、儀式の邪魔だとか何とか言って不意打ちに封印しやがった』

「解く方法は分かりますか?」

『知らん。……が、術者はこの裏の石碑に何かしてたな』

「石碑……」

 大きな古龍を迂回して反対側へ移動する。古龍の言う通りそこには普通の石でできた石碑が立てられていた。周囲の遺跡がボロボロなのに対し、やたら綺麗で形を保っている。

 書かれた文字はこの世界のもの。


"結界ハ彼ノ地ヲ守ル者 封印セシ剣ヲ欲スルトキ 試練ヲ越エ己ノ力ヲ示セ"


 さらに石碑の裏には球状に象られた魔鉱石が二つ、左右に分かれて嵌められていた。石碑から魔力の気配はしない。能力によるものだとすれば、この遺跡本体がそもそも能力関連である可能性が高い。

「魔力に反応……するのかな」

「やって、みる……?」

「それしかないね」

 とはいえ動かし方は分からない。背面の魔鉱石がヒントだろうけど、具体的な操作が書かれていない。

 ……ダメもとで適当にいじってみようかな。

「…………うごいた」

「えっ?!」

 僕が石碑の前で悩んでいたら、ナツが一瞬で反応を起こした。具体的には単に背後の魔鉱石に触れただけなのだが、触れた魔鉱石が淡く輝きを放つ。

「一発で当たるもんだな」

「ナツすごーい!!」

 褒められてご満悦なナツ。表情はあまり変わらないが喜んでいるのが雰囲気から読み取れる。

「って、オチオチ喜んでる場合でも無さそうだぜ」

「みんな構えて!」

 光出した魔鉱石に対応する形で、古龍のいた結界の後ろ側の床が輝く。円形に二つ、魔法陣に酷似している模様が描かれる。

「………………」

 地面からゆっくり這い上がってきたのは、全身鎧のゴーレム二体。斧と剣を握っている。全身が構築され、魔法陣の輝きが消え静寂が辺りを包む。慎重にとその鎧を警戒し、鎧の奥に光る紅い瞳と視線が合う。

「っっ?!」

――まずい。

 そう頭が理解した、本の一瞬だった。

「にぃっ」

「セイタっ!!」

「くそっ"衝撃緩和"っ!」

 身体が反射的に腕をクロスにし防御魔法を展開。そのまま僕は古龍の眠る結界に吹き飛ばされていた。鎧の片方がまるで転移したかのような速さで距離を詰め、剣を振っただけ。

 かろうじて急所を外し大きな被害は免れたものの、アルゴートさんのサポートが無ければ再び立ち上がることはできなかっただろう。

 決して油断していた訳ではない。むしろその逆。いつ攻撃されてもいいように最大限の警戒をしていた。にもかかわらず、動きを追うので精一杯だった。

「うっ……」

 背中が少し痛むが戦闘に支障はない。アルゴートさんの素早い魔法のおかげだ。

「次がくるぞっ、構えろ!!」

 先手を取られた。さらに敵は二体。僕に気を取られている場合ではない。

「"氷結(フリーズ)"」

 ギリギリニアの魔法発動が間に合い、鎧――ガーディアン(斧)の足元を凍らせた。一瞬でも動きが鈍れば、その隙を逃す僕らではない。

「"魔力強化"」

「"風刃"」

 一般的な"風刃"でも、魔力強化無しの岩石程度なら切り裂ける位の威力はある。そこにナツのバフが乗れば、本来鉄剣程度は簡単に切断できるのだ。

「ちっ、傷一つつかねぇとは」

 ナツのバフをも凌駕する魔力を纏ったガーディアンには通用しない。今までのように初級魔法でどうにかなる相手ではないらしい。そして、ただで攻撃を受けてくれるほど優しくもない。

「"バイント"っ」

 僕に注意が向いていたガーディアン(剣)が、唐突にターゲットを変える。慌てて拘束したものの、動きを止められるのは一秒。

「"烈脚撃"」

 その一秒でなんとか体勢を立て直すべく、ガーディアン(剣)の腹めがけで全力で蹴りを炸裂。ダメージはなくても勢いまでは殺せず、鎧ごと大きく仰け反る。

「今しかない。これっ!」

 少しの時間を稼ぎ、僕は異空間から四つの指輪を取り出してナツたち三人に放り投げる。キャッチした三人に急いではめるように促し、自分も同じものを装着する。

「なんだ?」

「すみません、説明する暇がないのでっ」

 詳しく説明する時間もなく、全員が指輪をはめたことを確認して魔道具の効果を発動させた。

「"共鳴・身体強化、魔力強化"」

 僕の指輪が青く光り、続いてそれに共鳴する形で三人の指輪が青く輝く。

「これは……」

「なんか、すごく身体が軽いよ!!」

「にぃ、からの、ゆびわ……」


――魔道具『共鳴の指輪』

共鳴した指輪を付けた者一人が受けている能力上昇効果を共有する。上昇値は受けた者と同量である。


 本来自分自身か他人一人にしか付与することの出来ない支援魔法を共有することができる魔道具。この中で身体強化を使えるのは僕だけで、魔力強化を行えるのはナツのみ。

 かなり前から作成はしていたが、使う必要がなかったために収納スペースの肥やしとなっていた。

(使うならここしかない)

 ついに活躍する場面が来た。

 が、それでも能力の差が少し縮まった程度。ガーディアンとの差は依然として大きい。そんな中でこちらが勝っているものと言えば……

(手数と連携。これで押し切るっ)

迅速なる弾丸(ラピッドブレット)

 1秒で三十発の速射。

 威力も奇襲性も申し分ない。命中率は言わずもがな。ナツの魔力操作でガーディアン(剣)の脛から下を吹き飛ばした。


「"暴風竜巻(ハリケーン)"!」

「"極土氷結フリーズディメンション"!!」


 そこへ間髪を入れずに大技を叩き込む。

 遺跡ごと吹き飛ばしそうな勢いの竜巻がガーディアンを飲み込む。

「どうだ……っ?!」

 数ある選択肢の中でもかなり全力に近い攻撃。これで倒せれば最高だと思いつつ、この程度では有効打になり得ないだろうと考える自分もいた。

――スパッ

 そんな予感はよく当たる。

 竜巻の中央からクロスに描かれる斬撃の軌跡が、魔力の竜巻を切断してしまう。その中から現れたのは、ボロボロになって動かなくなった一体のガーディアンと、右手に斧、左手に剣を持ったもう一体のガーディアン。

「仲間を盾に使った……ってのか」

 唖然とする一同を前に、大人しく待ってくれる優しい敵はここにはいない。

「"防護けっか"ぁ、っ」

 今度はこちらの番だと右手の斧を投げ飛ばす。咄嗟に結界を張って護れはしたが、その有り得ない威力に驚愕するしかない。

 僕ですら視線で追えるか怪しい迅速なる弾丸の速度を超える投擲。身体強化を施していなければ全滅していただろう。

「…………」

 結界に阻まれ動きを止めた斧だったが、まだ地面に落ちていない。今も結界を破壊せんと結界と競り合っている。

 斧の投擲だけで精一杯な防護結界。手の空いたガーディアンがすることは一つ。

「みんな避けてっ」

 動いたガーディアンは一瞬にして距離を縮め、両手に持った剣で結界に一振。

 意図も容易く結界は破られる。その余波で僕は後方に吹き飛ばされ、間一髪避けられたナツたちも斧が地面へ刺さる衝撃で同じように数メートル飛ばされた。

――勝てない。

 ボロボロになった体を持ち上げて、正面の敵と睨み合うが既に満身創痍。

 こちらの全力は防がれた挙句、あちらの攻撃はたった一度でこれだけの被害。いつ致命傷を喰らってもおかしくない。

――なにか、なにか逆転できる一手は……

どうも、深夜翔です。

結界解除のためガーディアンと戦うことになった一同。

今までは苦労はしたものの勝てないような状況にはならなかったが、今回はそうもいかない模様。

相手の強さに圧倒される中、果たしてセイタの次なる行動は……?


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら感想や評価、ブックマーク登録、Twitterのフォローなどよろしくお願いします。

ではまた次回……さらば!

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