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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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忘れ事

 さて。皆さんは僕らがここに来た理由を覚えているだろうか。

 アルステッド教の情報収集と言えば確かにその通りだ。けれど、そもそもの発端はあのエウター村で見つけた酒瓶。魔法が使われていない製造方法が気になってやって来たのだ。

 案の定、僕らと同じ地球からの転生者藍……オオリア様と会うことに成功し、さらにはアルステッド教の重要な情報まで手に入れることが出来た。

 ところであの日、ここシェージアリアともう一つ。教えてもらったことがあった。

 そう。エンダルキア山脈の古龍。能力を使えるかもしれないという伝説の生き物。彼らが住むと言われるエンダルキア山脈は、この街から見えるほど大きく、そして近い。

 エウター村から北上した森に隣接する山脈に向かうにはここから少し西へ戻らなければならず、つまりはシェージアリア南から西に広がるオリューン湿地を通らなければならない。

 ここでこの街にやって来た時のことを思い出して欲しい。蜂に追われ、駆除し、その次に現れたのはなんだったか。

「ゲコ?」

「やっぱりそうなりますよねぇーーーー!!!!」

 たった数日で異常事態が解決するはずもない。

 僕らは舗装された道を持てる力全てを使って爆走中。追ってくるのはカラフルな彩りを添えたカエルたち。そう、ビックフロッグだ。

「"氷壁柱(フロストウォール)"ぅ!!」

「「「「ゲコ?」」」」

 視界に入る度、泥やら毒やら麻痺といった多種多様な液体を飛ばしながら追ってくる奴ら。

 ニアが耐えきれずに魔法で足止めを測る。

 ……が、しかし。体長10メートルはある巨体相手に、10メートルやそこらの壁が役に立つかと言われれば――

ドドドドドドドドスンッ

「うぁぁぁぁぁ!!飛び越えて来たぁぁ!」

 ものすごい地響きと、太陽の光を覆い隠すほどの影。追ってくる大量のカエルが一斉に空高くへ飛び跳ねる姿は、さながら恐怖の雨。

 補足だけど、カエルは一般的に1メートルは跳ぶと言われていて、地球で最も長い跳躍距離を持つカエルは10メートルを余裕で超えるらしい。

 そもそも体長が数十メートルあるカエルならば、一体どれだけの高さを跳べるのだろうか……

「そんなっ、解説をっ、してる場合かぁぁ!!!」

「にぃ……、ないす、ノリツッコミ」

 着地の地響きだけで馬車が跳ねる。

「ゲコゲコゲコ」

 ここで倒したところで、この道を進む限り増え続けるであろう奴らに、抵抗するだけ虚しいというもの。

――とにかく今は走るべし!止まったらジ・エンド。

「しかし、ビックフロッグの肉は美味いと聞く。一部ではかなりの人気があるとか」

「アルゴートさんっ?今はそれどころじゃっ」

「えぇっ?!食べるの?!あれ、食べれるのっ?!」

「た、食べれたとしてもっ、あの量は無理ですからぁ!」

 ワイワイガヤガヤゲコゲコと、静かで優雅な旅路とは当分やってこないのだった。



 街を出発して半日。

 湿地を抜けた先、山脈麓の平原で野営をすることに決まった。どうにかこうにか馬車も商品も僕達も無事。

「………、これを無事と言えるのか?」

 僕が火の側で料理をする。

 月明かりは残念ながら入ってこない。

 アルゴートさんとニアは、そんな僕の背後を見てため息と呆れと諦めを含む表情で馬車の荷台に腰掛けていた。それは、月明かりを遮る元凶にして諸悪の根源。

「味は美味しいですよ。沢山ありますから、できるだけ食べましょう。美味しいですから……ね?」

「せ、セイタ?なんか圧を感じる……」

 手元には大量の肉。

 なんの肉かなんて、言葉に出す必要ないよね?どうせ食べてしまえばただのタンパク質なんだから。

「いやな、たしかに美味い。案外いけるとも思う。鶏肉っぽい食感と食べやすい味は、こいつらの肉でしか味わえないと思うぜ?けど……な、()()()は無理だ。怒るのも無理はないがよ」

「いえいえ、全然全く怒ってませんよ。せっかく敵対緩和の結界を張ったのに、まとめて殺しちゃったことなんて、全然気にしてないですよ」

「「………………」」

 僕は笑顔で大きな鍋に具材を放り込む。大量の肉と肉と肉を。

「み、見るからに怒ってるよねっ(小声)」

「まぁ、そりゃ怒るわな(小声)」

「だ、だってぇ……、あれは事故だよっ(小声)」

「ん?何が事故だって?」

「はい!な、なんでもないです!!」

 笑顔を崩さず、目の前の肉に刃物を入れる。

 サクッと刃がまな板に当たる音が響く。

「――せつめい、しよう……。かえるに追われて、ここまできて、にぃが追い返そうとしたら……、ニアがたおした。ぜんぶ」

「うっ……ごめんなさい」

 あれは、言うなれば不慮の事故だ。

 結界を張って、上手く誘導したつもりだった。まさか、()()()()()()()()()がいると思わなかったのだ。

 馬車で旋回中に、突如としてニアの顔面へ降ってきた小さなカエルは、彼女の動揺を頂点まで振り切るのに充分な破壊力を持っていた。

 慌てたニアは、そのカエルを滅すべく最上級広域氷魔法"絶対零度(アブソリュートゼロ)"を発動。見事、追ってきた()()()のビックフロッグを氷の檻へと封印し凍死させた。

 素材やらを回収出来ないから、わざわざ追い返す方向で作戦を立てていたのに。

 よって、この数百はくだらない量の肉を何とかして消費または廃棄しなければならなくなった。

「うぅ……、美味しいです」

 涙目でもしゃもしゃと食事をするニア。罪悪感はあれど、美味しいのは事実なので案外手は動いている。

「そうだ。セイタ、明日は早速山に登るのか?」

 アルゴートさんが目の前の山を眺めて尋ねる。

 こんな状況ではあるけれど、一応目的の麓までは来ている。進もうと思えばいつでも登れるのだ。

「んー、まだ検討中です。馬車で入れない以上、どこかに仮拠点は欲しいかなと。ですけど、近くに町や村の気配は無いですし、必要最低限の荷物を持って、あとは隠蔽の魔法でその場しのぎになりそうですね」

「対古龍なんて考えたくねぇが……、登るなら仮拠点は必須か。半分ずつに別れて山登りと拠点の防衛って手段もあるぜ?」

「それも考えましたけど、これだけ山に近いとあちらの方から襲ってくる可能性も少なからずあると思うんです。何かあってからでは遅いですし、行動するなら全員一緒の方が良いかと」

「ま、そうだよな。俺はお前らなしで古龍を相手にできる気がしない」

「僕も勝てる自信はないですよ」

 できることなら穏便に済ませたい。

 具体的には戦闘は避けて話を聞いて帰りたい。

 ……そう上手くいくとは思えないけど。なにせ、今まで聞いた情報では、この山に入って帰っきたものは居ないらしい。相当凶悪な古龍が住み着いているに違いない。

「明日登るかは明日決めるってことで」

「了解」

 ここまで来ておいて、実は予定は未定。戦いの準備だけはしておきたい。

 僕は山を見つめて身震いする。あそこに本当に古龍がいるのか。未知の能力は存在するだろうか。期待と恐怖が入り交じった気持ちで、僕はスープを口にした。

――気がつけば、目の前の肉の山のことは忘れていたのだった。

どうも、深夜翔です。

目的を見失うのは本末転倒。ここに来た理由を思い出し回でした。ついでにカエル天丼(笑)も添えて。

皆さん、寄り道多きこの物語、まだまだお付き合い下さいね。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、感想や評価、ブックマーク登録、Twitter(@Randy_sinyasho)のフォローをよろしくお願いします。

ではまた次回……さらば!

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