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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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街巡り②

 ここシェージアリアには、異世界ならではのちょっとした娯楽が存在する。※ここで言う異世界とは地球のことである。

 例えばボーリング。

 基本的にはそのままで、重いボーリング球を転がしピンを倒して特典を入れると言うもの。ただし、魔法で強化も不正もし放題なこの世界に合った改変がなされている。

 ピンにはそれぞれ体力値が設定されており、ボールを使って体力をゼロにしない限り倒れないという仕組みだ。

 ボールが与えるダメージは、魔力の少なさとその時のスピードで決まる。

 つまり、より魔力を使わずに速度を出すことが求められる。なるほど……、この世界に合わせた上手い調整だ。

 続いてカラオケ。

 歌は存在するも、さほど多くないこの世界でカラオケ?と思うだろうが、そこはご愛嬌。

 言語はこっちの世界に対応しているものの、明らかに著作権ガン無視の地球で作られたような歌ばかり。絶対あの吸血鬼(偽)が関与しているに違いない。どうやってこれだけの曲を仕入れているかはよく分からないけれど……。

 知らない曲ばかりで楽しいのかと思ったが、どうやらこの世界でのカラオケは、知らない曲を雰囲気で歌って何点出せるか……を競うことが目的らしい。

 もしくは一人ストレス発散に大声を出す場所としても使用されるとか。

 あとは、映画館や図書館など、どうやって再現させたのかよく分からない施設もたくさんあった。

 ……そう、()()()のだ。

 何故こんなに知っているのか、と。疑問に思ったことだろう。いいや、疑問に思って欲しい。そうでなければ、僕のこの疲労感が無駄になってしまう。

「セイタ!!次はあっち!あっち行ってみよ!!」

「に、ニア……?少し休まない……」

「……にぃ、こんじょう、ない。さっき……やすんだ、ばっかり……」

「映画を二作も一気に見たことを"休んだ"と捉えるのは間違っていると思うんだ……」

 一体どこからそんな体力気力が生まれてくるのか。

 僕は無尽蔵の元気を背負った女子二人に引きずられ、街を行ったり来たりと歩き回っていた。無論、目につく屋台や出店は一通り回って――。

「いい匂い!らーめん?」

「ラーメン……か」

 二人に食べさせてばかりで、僕はあまり食べ物を口にしていなかった。今更ながら、少しお腹が減ってきたことに気がつく。

「入ってみる?」

「行く!」

 時刻もお昼を過ぎ、店の周りはあまり人がいない。

 外から中の様子を伺っても、込み合っている印象は受けなかった。これなら時間も取られず直ぐに食べれるだろう。

 そうして中に入ろうとして、何やら見知った顔が扉の前でウロウロしているのが目に入る。

 白髪ロングロリ。

 字面だけ見ると中々属性盛り込みすぎだ。

 しかし、耳は一般の人と変わらず、目にはサングラスをかけている。……変装のつもりだろうか。

「えっと、オオリア様?こんな場所で何してるんです……?」

 公衆の面前でタメ口はダメだろうと、一応敬語で話しかける。

「うひゃっ。…………なんd――じゃ、お主らか」

 飛び跳ねん勢いで驚いたあと、僕らの顔を見て一息。何をそんなに慌てているのか。

「……入らないんですか」

「入りたい、食べたいのはやまやまじゃが……な」

 なんとも歯切れが悪い反応。

 別に食べるくらい何も思わない。嫌いならこんな場所には居ない。……にしても随分身軽な。

「もしかして、お金、無いんですか」

「ギクッ」

「さてはラーメン食べたさに脱走しましたね?」

「うっ……だって食べたくなって」

「お金も持たず?」

「忘れてたのじゃ!監視……秘書を巻くのに必死じゃったのじゃ」

 変装道具(サングラス)を取る時間はあったのに?という大変おバカな疑問は、何とか飲み込んだ。

 つまり、ラーメンを食べたいがためだけに中央の管理塔から脱走してきた上、お金を忘れて立ち往生していたと。……先程までの威勢はどこへ行ったのか。

「そもそもじゃ!お主が元いた場所の話をするからじゃぞ!」

「話……って、出身について話したのは本の一瞬だけでしたよね?そんな恋しくなるほどじゃ――ホームシックですか?」

「え、いやー。そういう訳じゃ」

 身分がどれだけ偉かろうと、中身は至って普通の16歳。優しいオオリア様がそばにいたとて、思い出せば()()()恋しくなるか。

「でもなんでラーメン?」

「それは我の好物だからじゃ!!」

 堂々たる宣言。誰が見てもドヤ顔と答える表情で、扉を指さした。彼女が意図していることは分かる。

「……はぁ。一緒に食べます?」

「いいのか!!優しいやつよのうお主」

 満足気に頷き我一目散にと店内へ入っていく。

「僕達も入ろう」

 まだ言い足りないことはたくさんあったが、これ以上美味しい匂いを前に立ち止まっていることは出来なかった。



「おじぃ、いつもの1つじゃ」

「あいよ。今日は珍しくお客人と一緒か」

「そうじゃ!」

 店長とオオリア様の会話。これは割と頻繁に脱走していることが発覚した。というか隠す気ないよね、オオリア様だってこと。あの店長、どう見ても気付いてるし。

 メニュー表は壁にはられた木版に表示され、内容も豚骨、味噌、醤油、更にはオリジナルまで。トッピング、替え玉も自由で至れり尽くせり。

 カウンター席に座り、店長に直接注文をする。僕はテレビでしか見たことが無かったので、なんだか新鮮な気持ちになる。

「ナツは……これ?卵追加ね。ニアは決まった?」

「えっと……おすすめってありますか!」

「お、元気な嬢ちゃんだ。おすすめはオリジナルに限るな。もちろん、どれも美味いのは保証するぜ」

「じゃあオリジナルを一つください!」

 注文をすると、早速目の前で手際よくラーメンが作られていく。どれだけ真似しても同じようには作れない、職人だからできる素早く美しい一連の流れ。

 しばらく雑談しながら時を待つ。

「おまちどー!」

 美味しそうな匂いと、視界いっぱいに溢れる金色の麺。海苔とメンマが豪勢にのったそれは、僕らの腹の音を呼び起こすには充分な破壊力だった。

「箸はそこから取ってくれ」

 ナツとニアに箸を渡し、ゴクリと唾を飲む。

「い、いただきます……」

 僕は目の前のそれを慎重に箸で持ち上げ、思い切り口へと放り込んだ。

どうも、深夜翔です。

娯楽と言えば、今この地球に生きる僕ら人間からすればあって当然、無いと辛いまでありますよね。

ですが、それはあって当たり前な環境にいるから。もしも異世界で、ファンタジーな世界に私たちの知る娯楽があったら。

それは当たり前を超えて違和感でしょう。

彼らもまた、そんな違和感を抱えたまま、街を観光しているのかも知れません。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、感想や評価、ブックマーク登録、Twitter(@Randy_sinyasho)のフォローをよろしくお願いします。

ではまた次回……さらば!

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