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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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行動予定

「……はぁ」

 早朝のホテル。十二階もの高さとなれば、いくら高層ビルが建ち並ぶ街だとしても眺めはそれなりに良い。

 一直線の大通りの先から差し込む朝日は、手前の平原と重なり美しい絵となる。

「朝からため息なんて吐いてどうした?」

 そんな景色を前に、僕は大きくため息を吐いた。

「大した理由では無いですから、大丈夫です」

「そうか。ふあぁぁ……、眠い。ま、何かあれば言ってくれよ。俺は二度寝する」

 質の良いベットで寝たのは久しぶり。

 朝に強いイメージのアルゴートさんが、この時間に眠そうにしているのは新鮮だった。ニアとナツは、何故か同じベットで寝ている。人数分のベットがあったはずなのに、どうして毎回僕の布団に入ってくるのだろうか。

「はぁ」

 そうして再びため息。

 その原因は他でもない、目の前に広がるファンタジーとはかけ離れた、異様であり、懐かしさを含む街並みだ。

(まさか、異世界でもこの光景を見ることになるなんて)

 それは、決して喜ばしい感情ではなかった。

 懐かしさを含んではいても、それが良い思い出とは限らない。僕()にとって、もう二度と見たくはなかった景色。

「早めにこの街を出よう」

 この時、この街にあっさり入れたからと、少し油断していたのだ。どうして、この街は()()()()()()()()()()()()()()()()()に疑問を抱いたのは、その問題が浮上してからだった。

「そういえば、馬車の中に予備のアイテムボックスを置いたままだったな……。まだ皆寝てるみたいだし、今のうちに取りに行ってこよう」

 僕は音を立てないようにして扉を開け、街の外に停めてきた馬車へと向かった。


「確かこっから入ってきたよね?」

 目の前の大きな結界。昼間より人通りが少なすぎるせいか、同じ場所とは思えない雰囲気を感じる。

 けれどあの入ってすぐの魔導書店は、見覚えがある。アルゴートさんが以上に興奮して駆け寄ったところ。

「あってるはず」

 記憶を頼りに街の外へ出よ……うとして、僕は足を止めた。正確には、これ以上踏み出すことが()()()()()()

 足を前に出して、確かに前へ進もうと脳が命令をしたはずだ。けれど、実際に踏み出した足は何も無い空によってその行く手を阻まれる。

「?なんだろう」

 違和感を感じてもう一度。

 よく意識すると、結界に触れた場所に微かな魔力の反応が。それも、中からの制限のみが働く。

「あの、ここから出ることはできないですか?」

 通りかかった警備隊と思われる人に声をかけた。

「ん?あぁ、旅人さんか。オオリア様の許可証は持っているかな」

「許可証…?」

「そうだ。この街から出るには、この街を統治するオオリア様の許可が必要なんだ。あまり出る人はいないが、稀に訪れる旅人が、知らずに驚く事がある」

 優しそうに笑う警備隊の人は、その特徴的な帽子に手を当てて、丁寧に教えてくれた。

「ほら、ここからでも見えるだろう?あの中央に経建つ大きなビル。あそこにオオリア様がおられる。日中は12時から受付が対応してくれるはずだ」

「ご丁寧にありがとうございます」

 指さす先はここに来た時から見えていた一際大きなビル。やっぱりあそこにいるらしい。

 オオリア様。

 名前がわかっただけ一歩前進……なのかな。

 お辞儀をしてその場を後にし、目的を果たせぬままホテルへと戻る。

 時は太陽がようやく登り始めた朝方。

 もう一眠りする余裕くらいは、あるといいな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 午前9時。

――ここでの時間は、大まかなものではなくこの街の至る所に取り付けられたこの街基準の時計によるものである。

 久々に長々と熟睡を決めた僕らは、未だ眠気の残る瞳で少し遅い朝食を摂っている。サンドウィッチにサラダと牛乳。ザ・朝ごはんって感じ。

「へー、んじゃこの街を出るにはその許可証って奴が必要なんだな」

「通りで情報が少なかったんだね!」

「まぁ、これだけ発展した街だ。そもそもここから出る理由なんてほとんどない。それこそ、外から来た旅人か商人くらいだろうよ」

 許可証なんて言う面倒な制度が許されているのは、ひとえにこの街の発展具合が影響している。アルゴートさんの考えは間違いないだろう。

「んじゃ、今日は許可証を取りに行くのか?」

「そう……ですね。正直そんなに急いでこの街を出る必要は無いですけど、何時でも出れるような準備をしておく方が安心できます」

「意義なーし!」

「ん」

 今日の予定が決まったところで、部屋に取り付けられたモニターから街の報道(ニュース)が聞こえてきた。

 内容は他愛もない天気や街の様子の話。けれど、そもそもテレビやモニターなどという存在そのものが珍しい世界の人は、そんな内容にも釘付けだ。

 異世界の機械が身近な僕らは、また別の場所に注目する。

「ナツ、魔力の気配分かる?」

「……むり。そこら中から、こいまりょく……、けはいの判別、むずかしい」

「だよね。機械のように見えて、そのほとんどが魔力を使った()()()。常に魔力が漂ってる……」

 魔力探知という、この世界で最も使用頻度の高い能力がほぼ無力化されてしまっている。どこか安心できない原因の一つ。

(……それに、なんか魔力の発生源に意図的なものを感じるんだよね。気が付かれたくない()()を隠しているような)

 僕の探知ではさほど遠くまで辿ることは出来ないので、偏見の混ざった憶測でしかない。しかし事実として、ナツも魔力を読み取るのが難しいと言っている。

 本来ならばすぐにでも動いて不安を取り除きたいところだけれど、今日は明確な目的があるから調査は後回しだ。

「んじゃ、そうと決まれば早速行くか!」

「えっ、食べるの早いですよアルゴートさん!」

「もぐ、わあひも(わたしも)いふ(行く)!」

「食べ終わってから喋ろうねニア」

 眠かったはずが、気がつけば騒がしい一日が始まろうとしていた。

どうも、深夜翔です。

入ったら出られないなんて、物語では定番でしょう。

ただし、そこが異様に快適で、違和感のある場所となるとまた状況は変わってきます。

なにより、出る手段がこうも簡単に見つかるなんて……

怪しいですよね!(笑)


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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ではまた次回……さらば!

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