やられたらやり返す
「カチカチだぁー!冷たいっ!」
「そりゃ氷だからな。自分で使った魔法なのに、おもしろい反応するなニアの嬢ちゃん」
「今まで発動したこと無かったから、これを私がやったって実感湧かなくて……。えへへ」
ニアとナツのおかげで、平原の中央に現れた巨大な氷の城(元・蜂の巣)。そのすぐ下まで来ていた。
カチカチに凍った巣は、僕らのちっぽけな攻撃ではビクともしない。魔力が尽きるまで一生残り続ける。
「んで、セイタ。これをどうするつもりだ?このまま放置はできねぇぜ」
空を見上げて、アルゴートさんがこの先について尋ねる。今は誰もいないけれど、こんな大きさでは見つかるのよ時間の問題。放置して騒ぎになるのは勘弁だ。
「大丈夫です。方法を考えて来ましたから」
収納ボックスから四角い箱を取り出す。
黒く蓋のないそれは、背面(?)に吸引の付与が施されている。両手に乗るくらいの箱。壁に着く付与。そして……、解体。
何をするのか、分かる人もいるだろうね。
「それは?」
「しーf……じゃない。時限式爆弾です。壁に貼り付けることが出来て、指定した時間後に爆発します」
「へー、便利な機能……って、まさか」
「はい。内部に取り付けて爆破させます」
「なんつーか……、お前も大概豪快だよな」
「面倒くさがりなだけですよ」
この巣には、下部に複数の出入口があることに近づいて分かった。あの大量の蜂たちもここから出入りしていた。
内部まで凍っているはずだから、襲われる心配もない。本当にただ取り付けて終わり。
「少しサッと行ってきますね」
「……にぃ」
「うん。ナツも行こう」
巣の入口に足をかけて、早速侵入。
「おいおい、一人で行くつもりか?」
「中はあまり広く無いみたいですし、森にいた蜂が帰ってきた時のために、二人には外で撃破をお願いしたいです」
追ってきたヤツらはかなり倒したはずだけれど、こんな広い森に一匹も残っていないとは考えにくい。万が一爆弾設置中に襲われでもしたら、僕らにも被害が出る。
「ま、お前ら兄妹が襲われた程度で怪我するはずもないな。外は任せろ」
「はい。ありがとうございます!」
「気をつけてね!」
ナツの手を掴んで引き上げ、僕らは巣の奥へと進んだ。
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「……にしても、おかしいな」
「なんかおかしいところあった?」
「おかしいだろうよ。こんなでけぇ巣が、こんなだだっ広い場所にあって気が付かないはずないだろ?もしつい最近できたもんだったとしても、作られる過程で誰かが気がつくはずだ」
「あ、確かに」
巣の外。馬車の壁に寄りかかって、周囲を警戒しながらアルゴートとニアは雑談していた。雑……といっても、内容は目の前よ巣について。
「何よりだ。イモータルビーは元来、他の魔物からの襲撃を恐れて洞窟やら巨大木なんかの襲われにくく撃退しやすい場所に巣を作ることを好む。ついでに、餌が豊富な森林内部に作られがちだ。こんな襲ってくださいって言ってる場所に作ると思うか?」
「い、言われてみれば……。何かあった、ってこと?」
「今の状況じゃ何も分からん。が、こいつを破壊して全て解決、なんて単純な話じゃないかも知れないぜ」
少々深刻そうな話をしつつ、何やら音のする方へ視線を向ける。
「セイタに上手く留守場に持っていかれたかと思ったが……、そんな事はなかったか」
「アルゴートさんひねくれすぎ!二人はほんとに私たちをたよってるんだよ!」
「ははは、違いないな」
巣の危機を察知した蜂が、一斉に巣へと戻ってきた。大群と言って差し支えない数。
「話は一旦終わってからだ。今更だが、一応病み上がりで大丈夫か?」
「ほんとに今更!!もう何日も前だし大丈夫!しっかり役に立って見せるよ!」
「頼もしいなこりゃ」
迫る大群を前に、変わらない表情。
一歩前へ踏み出して、両手を構える。
「んじゃま、我らが大親友の期待に応えるとしますか」
「絶対ここは通さないもんね!」
森から続く害虫駆除の、第2ラウンドが始まった。
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さて、場所は変わって暗い巣の中。
全てが凍っている関係でかなり寒い。とは言っても、砂漠の夜を越してきた僕らにとっては大したことではなかったりもする。
「よし。これでこの階層は終わりかな」
ぺたぺたと壁に爆弾を貼り付けながら順調に上へと進む。巣の中は、中央に大きな板が何層にも渡って存在しており、端の支えの隙間を通れば次の階層へ移動できる構造になっていた。
途中何匹もイモータルビーを見かけたけれど、一匹残らず凍っていて動けない状態。
難しいことを考える必要もない。
「にぃ、外……」
「森から帰ってきた敵かな。早めに完了させて戻ろう」
駆け足で穴の空いた道無き道を移動する。硬化魔法で空気を固めて簡易的な足場を作っているため、不安定な足場もさして障害にはならない。
強いて言えば、上を見ることはおすすめしないことか。
「こんな場所、集合体恐怖症の人は入れないね。僕でもさすがに気持ち悪い」
「……うねうね、してる」
蜂の巣と言えば、六角形の穴。そこで幼虫を育てている。蜂の子とも呼ばれる。
……つまりだ。
現在天井(次の階層の足場)には、無数の巨大な穴と幼虫が、数百メートルに渡って敷き詰められているのだ。
例外なく凍っているからマシな方ではあるが、初めに見上げた時は鳥肌が止まらなかった。
全部で何階層あるのか分からない巣を、ぴょんぴょんと跳ねながら数十分。
ようやく巣の頂上と思われる天井が見えてきた。穴のない、真っ暗な空間。余った爆弾をいくつか天井に貼り付けて、あとは適当に下へと放り投げた。
「まずはここから出よう。ナツ、どのくらい上?」
「……二十、くらい」
「二十メートルね。余裕を持って三十にしとこっか。離れないでねナツ」
「んっ」
右腕にしっかりと抱きついたのを確認し、周囲に魔力を放出する。
「"転移"」
コンマ何秒の世界。一瞬の移動で巣の上に立つ。
今まで真っ暗だったから、太陽の光がやけに強く感じる。視界が戻るのに数秒。徐々に視力が復活し、見えてきたのは黄土色の足場が微妙な山を描いてどこまでも続いている光景。
黄土色の足場は、イモータルビーがあちこちから回収した木材を特殊な加工で固めたものだ。
歩けば案外サクサクと子気味のいい音が鳴る。
上手い具合に凍っている。
「下が見える位置まで行こうか」
転移するにしても、飛び降りるにしても、したよ様子は確認したい。
ニアとアルゴートさんが戦っているだろうから、早く戻らないと。
「あっち……」
ナツが指さす方へ走る。
普通にた百メートル以上は走っただろう。
足場の傾きが大きくなり、下の様子が視認できる場所まできた。
「うわっ、凄い数……。けど、ほとんど倒されたあとの死骸?」
「二人とも……、つよい」
「だね」
よく見ると、カナリ真下に馬車の屋根らしき部分がある。転移先はあそこにしよう。
「もう一度行くよ」
「んっ」
もう二度とこの景色は見れないだろう。
まぁ、見たいとも思わないけれど。
僕はナツを抱えて、足場のない高い空中へと身を投げた。
「"転移"」
どうも、深夜翔です。
虫が嫌いな人もいるでしょう。
ここまで長くお付き合いいただきありがとうございました。
次回でこの巣は爆散します。虫とは当分おさらばです。
戦闘シーンを書きたかったけれど、無駄な尺伸ばしになりそうだったので割愛です。
ですが、何やら不穏な思惑が漂っているような……?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




