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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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一撃駆除

「でっっっっっっかっ!!なんだこれ?!」

「うぇー、大きすぎるよー!!」

 森を抜けても変わらない羽音。木に覆われていない広々とした青空も、今は異物の存在感で狭く感じる。

「こ、これって……」

「ん、どうみても……」

 見上げなければ全体を視界に収めることが出来ない巨大なそれ。

「蜂の巣……だよね?」

「まちがい、ない」

「キィ?」

 その平原の中央に作られた巨大なイモータルビーの巣は、倒しても倒しても無限に湧き出るに相応しい、異常なまでに発達したものだった。

 まるで入道雲。自分たちと同じくらいの大きさのイモータルビーが、少なく見積もっても数万はいるだろう。この世界で見た一番大きい建物、ライードの王城よりも遥かに大きい。

「蜂の巣……ってか、蜂の城って感じだな」

「入ろうと思えば僕達も入れそうですね」

「絶対入らないよ!!!辞めてよセイタ!」

 散々蜂を見たあとでのこれは、さすがに少し気持ちが悪い。蜂特有の羽音が、僕たちの背筋を凍らせる。

 耳元を虫が通った時のブーンという音が、耳に張り付いて鳥肌を促す。蜂が嫌いな人からすれば、トラウマどころか気絶するだろう。

(僕らも色々な意味で嫌いだけど)

 とはいえ、後ろからの追っ手がある以上はここで立ち止まれない。

「……でも、こんな平原のど真ん中にこんなもの、被害が出そうだよね」

「確かにな。見たところ町や村なんかは無さそうだが、こうして森からの出口の目の前となれば、通行人はいるだろうし」

「駆除……しときません?」

「したいのは山々だが、できるのか?こんな巨大な代物を」

 煙を炊いて弱らせることはできる。

 けど、この距離で巣からいっせいに出てこられたら対処しきれない。命を危険を負ってまで駆使したくはない。

「安全な策があれば、是非とも駆除したいとこだな」

「安全に、煙以外で……か」

 思いついたのは氷。素を丸ごと凍らせることが出来れば、中の蜂たちは仮死状態になるのではないかと。しかしそれには、大規模な魔法の行使が求められる。

 今、この場にいる4人の中で、氷属性の魔法を使えるのはただ一人。

「ニア、あの巣を凍らせるだけの魔法って使える?」

「えっ、わ、私?!えっと……あるにはあるけど、魔力制御問題とか、そもそも魔力が足りなくて」

「つまり方法はある……ってこと?」

「……まぁ、一応?」

 ここで振られると思っていなかったようで、自信なさげに答えたニア。かなり無茶を言っているのは重々承知だ。心配になるのが当たり前。

「ナツ、頼んでもいい?」

「……ん、いけ……る」

「魔力は僕のを使って」

 でも、そこは心配しなくても大丈夫な問題。

 魔力制御に長けたナツに、アルゴートさんが驚くほどの魔力を持つ僕がいる。魔法が発動さえしてしまえば、ナツの魔力制御の範囲内。

 僕の魔力も、こういうところでしか使い道が無いから、出番がある時は遠慮なく使って貰いたい。

「"魔力仲介"」

 片手で手綱を握りつつ、もう片方をナツに差し出す。ナツの柔らかい手がゆっくりと僕の手を握り、もう片方をニアの手に繋ぐ。

 あとはナツの領分。僕はただ、手を握られながら馬車を危険なく走らせ続けるだけ。

 そして、

「邪魔はさせない。"迅速なる弾丸(ラピッドブレット)"!!」

 ナツの集中を阻害する()()()()()()。僕たちに気がついて向かってくる魔物は即座に撃ち落とし、背後から追ってくる奴らは……、こうする。

 丸く灰色の球体。その上に刺さっているピンを外し、馬車の後ろへと放り投げる。

 その球体は綺麗な放物線を描きながら宙を舞い、馬車の移動も相まって20メートルほど後ろに落ち……

 ズドンッ

 大爆発した。

 かなりの爆風が後ろから迫るも、この距離であれば感じるのは少しの熱風のみ。けれども、この馬車を追って同じく20メートル後ろで追っていた蜂たちはその爆発を直撃(もろ)に受けた。

 煙が晴れて見えてくるのは、丸焦げの死体。

「うへぇ、なんだあれ」

「火薬球です。火薬と着火剤が内部で簡単な仕切りによって分けられてるんです。外したピンは球そのものに付与した"固定化"の付与を外すもので、外側から衝撃を加えると中の仕切りが割れてドカンです」

「怖いもん隠してんな」

「森で使うと色々巻き込む可能性がありましたから」

「誤爆させるなよ?」

「そのための安全ピンですよ」

 ちなみに……、と。

 異空間収納ボックスから先程と同じものを取り出す。

「試作品ですが、三十くらい残ってます」

「……へー、いいぜ」

「使い方は分かりますよね」

「俺を誰だと思ってやがる」

 馬車の先頭で悪い顔をする二人。

 この数時間、無駄な緊張感と、追われるという緊迫感。さらには大量の襲撃。平然と構えていてが、実は結構うんざりしていた。

「害虫駆除だ。遠慮なく」

「遠慮なんて無用です。相手は()()ですから」

 次々と追ってくる蜂に、悪役的な笑顔を振りまいて、手に持ったその凶器(ボール)を放り投げる。

 結果は先に述べた通り。数十匹の蜂共が灰になって消える。

「これは爽快。ストレス解消だな!!」

「まだまだ来ますよ!」

 若干キャラが崩壊してきているが、そんな事はどうでもよかろうなのだ。

「……にぃ」

「了解」

 その爆弾投下も、妹の短い一言で即座に切り替える。準備が整った。僕はナツが最もベストな攻撃を行える場所へ導くのみ。

 身体が自然と動く。

「今!」

「ニアっ」

「うん!行くよーーー!"絶対零度・九式アブソリュートゼロ・バースト"!!!」

 それは上級広域魔法の()()()()。九つの上級魔法陣が大きな巣を囲うように展開される。

 ただでさえ魔力消費の激しい上級魔法だ。

 九つ同時となれば、確かに魔力も制御能力も高度。まだ十代の子供が扱える代物じゃない。

「"魔力操作"、"魔力強化"、"合成・完成体(ふるばーすと)

 ニアの制御から外れた魔法は、ナツがその能力を以て強化し、振るう。

――ピシッ。

 空間そのものが凍りついたような錯覚。

 急激な気温の低下による白い煙が辺りを覆い尽くす。

「は、ははは……こりゃすげぇ」

「綺麗……」

 再び視界が晴れた時、そこには美しく輝きを放つ()()()()が、天高くそびえ立っていた。

どうも、深夜翔です。

巨大な蜂、それだけで不思議と背筋が震えます。

そんな蜂が大量に住まう蜂の巣、それも城レベルの大きさ。

森の中で散々苦労させられたセイタ達は、盛大に駆除する方針を立てました。

次回は駆除のお話です。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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ではまた次回……さらば!

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