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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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しつこいお客

 大量の蜂型の魔物に囲まれて。無限に湧き出てくるその姿にいよいよ蜂蜜まで嫌いになりそうだ。

 ……この世界に蜂蜜ってあるのかな。

 って違う!今はこの状況を突破する手段を考えなければ。殺虫剤みたいな物を用意しておけば良かったんだけど。

「殺虫剤か……」

 そういえば聞いたことがあった。

 木を燃やしてできる炭から出る煙は、虫の嫌いな成分が含まれているとか。

「アルゴートさん!どこでもいいので、木を一本切ってください!」

「木?分かった!」

 イモータルビーの攻撃を捌きつつ、アルゴートさんは器用にも僕のすぐ横の木を切り倒してくれた。

「"燃焼(ファイア)"」

 すかさず倒れた木に向かって火の魔法を放つ。葉に燃え移った火は、あっという間に木全体に広がり、その火力を増していく。

「ナツ、火の調整お願い」

「まかせ……て」

 森火事になってはならない。この地域の生態系に大きな影響を及ぼしてしまうから。

 今大事なのは"火"ではなく、木が炭になって発生する"煙"の方。この煙には、蜂が嫌がる成分が含まれていると何かで聞いたことがあった。確証は無いし、半分運な賭け。

 今見えている蜂を倒して、増援が来なければ……

「"迅速なる弾丸(ラピッドブレット)"!とは言っても、今いる数もかなり多いんだけど」

 それでも終わりが見えるだけマシ。不確定な賭けだけれど、心なしかイモータルビーたちの動きが鈍っている。偶然他の要因によって弱っただけかもしれないけど、どちらにせよ状況が大きく変わった。

「たたみかけるぞ!」

 アルゴートさんの掛け声と共に、残った敵の掃討が始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやー、大変だったね」

「おいおい、大変なのはこっからだぜ。なにせ……」

 アルゴートさんの視線の先に、僕らも釣られて頭を動かす。そこには溜息をつきたくなるほど、大量の()()()

「こいつらの後処理も、倒した者の責任ってやつだ」

 そう。イモータルビーの大量の死骸。魔物であっても生き物であることに変わりなく、倒せば当然死骸が出てくる。

 たしかに数体であれば、放置していてもそのうち自然に還元される。自然の循環といってもいい。

 けれど、今目の前にあるのは数百はくだらない大量の死骸。

「うぅ……、あんまり触りたくない」

「ま、まだ動物系で無かっただけマシだと思おう?」

「そーだけどぉ!」

 蜂はいわゆる昆虫。

 動物型の魔物であれば、肉、皮、血液、内蔵など、処理しなければならない部位が大量に出てくる。しかし、昆虫にはそれらが限りなく少ない。身体の構成はほとんどが外骨格で、中は思っているよりスカスカ。

 代わりに魔力を伝える特別な神経と、魔力を生み出すための魔石、魔力を受け取って動く少量の筋肉。そして見た目を形づくる外骨格に、魔石で魔力を生み出すのに必要な栄養素を運搬する、血液が流れる管。

 人間が嫌がるのはその見た目と緑色の血液くらい。

内蔵がほとんどなく、血管とそれを支える筋肉を除けば、中身は空洞だらけ。処理はだいぶ楽な方だ。

「特に必要な素材がなければ、一箇所にまとめて燃やそうか」

 昆虫型の魔物の利点。外骨格が燃えやすく後処理が簡単なこと。内蔵がなく、血液も無臭なため、燃やしても害が全くない。

 ……倒しても大した素材が得られない事を除けば、利点しかないと言える。

「煙が消える前に移動したいね」

「……てき、の……はんのうは無い、よ?」

「キィィ!」

「今のうちに行こう」

 万が一に備えて、火が森の木々に燃え移らないように結界だけ張っておいた。


 この森は数キロに及んで広がる巨大な森。

 馬車で抜けるには4時間はかかる。

 およそ3時間以上もの足止めを食らい、森も四分の三くらいまで来て、時刻は昼の1時をすぎた(たぶん)。

 序盤にあれだけ不運を受けたのだから、後半は順調に……なんて、世の中そんなに甘くはない。

「また増えたよぉーーー!!」

「……にぃ、もっと、いそいで」

「それは馬が過労死しちゃうよっ!!も、もう少し、労ってあげてっ!!」

 現在、イモータルビーとの逃走劇を繰り広げている真っ最中。倒して逃げれたんだよねって?

 上手く逃げれたからと言って、再度()()()()()()なんて保証は無いんだ。うん。自然の生きものを甘く見てはいけない。

「止まったら終わりだぞ!あいつらめっちゃ怒ってるからな。たぶん巣が近いんだろ」

「冷静に分析してる場合ですか?!」

 不幸中の幸い、追っては馬車の後ろだけ。

 これなら倒すより走り続けた方が安全に森を抜けられる。一度でもそう考えたのが間違いだった。

 あまりにしつこい彼らは、百メートル進む事に二十匹は増えていく。数は正確じゃないけれど、体感そのくらいたくさん増えていくのだ。

「ナツ……むし、きらい……」

 ナツがトラウマになってしまった。僕もしばらく黄色と黒の縞模様は見たくない。

「もうすぐ森の出口だろ!あと少し踏ん張れ!」

 タッタッタッと馬車が地面を蹴る音が微かに聞こえる。うるさい羽音に奥行きが生まれる。音が広がったということは……

「セイタ!出口だよ!!」

 出口が近い証拠。

「見えたっ」

 白く輝く光の先を駆け抜けて――

「ようやく森を抜け……た…………のか……?」

 一連の騒動の原因であろう()()が、眼前に広がっていた。

どうも、深夜翔です。

皆さんは虫、お好きですか。

私は昔は好きでしたが、今では年中家に引きこもっていたい私からして、最大の敵へと変貌しました。

今回、セイタ達も虫の厄介さを身に染みて経験したことでしょう。相当なトラウマを覚えたに違いありません。

……さて、そんな彼らが森をぬけた先で見たものとは?


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、感想や評価、ブックマーク登録、Twitter(@Randy_sinyasho)のフォローをよろしくお願いします。

ではまた次回……さらば!

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