伝説の水
そこは緑豊かな、綺麗な水が湧き出るオアシス。草の生えた岩の隙間から、透明な水が流れ出ていた。この周囲だけは木々が生い茂り、ここだけ見たら砂漠の中央だとは誰も考えないだろう。
サボテンでも砂漠に生える巨木でも無い。イメージとしては……そう、地球の白樺のよう。白を基調として、所々に黒い斑点模様が入っている。触れると、自然のものとは違う、何か特別な魔力の気配が微かに感じられた。
「竜巻の通路からだいぶ離れちゃったねー」
「いいよ。命より大事なものなんてないんだから」
「げんき、で……良かった」
「うん!バッチリ元気だよ!!」
そんな泉のほとりで、僕らは今までの緊張と疲労を回復するために休憩していた。
「にしてもなんつーか……、凄い場所を引き当てた気がするぜ」
「神秘的、という表現が正しいですかね……?心なしか魔力も回復しているように感じます」
「気のせいじゃねーな。恐らくこれは"神水"の1種だろうよ。飲めばあらゆる状態異常や病を治し、あろうことか怪我すら即時回復させるとかいうぶっ壊れ性能の」
「神水って、あの昔話によく出てくるあれ?!わ、私……いま国宝を摂取しちゃったってこと?!」
「あはは、それだったら、飲んじゃったニアが国宝かもね」
偶然にも見つけたオアシスは、伝説の水に近いものだったらしく解毒薬を作る前に一応と飲ませた泉の水で、ニアはあっという間に回復してしまった。キョトンとする一同、目の前で起きた超常現象を目の当たりにしてから、この場所の不思議な雰囲気に気がついた。
あれだけ慌てたあとの呆気なさに、全員で笑うしか無かった。
「ピィーー!」
「うん。今回のMVPは間違いなくキリだね。ありがとう」
キリがここを見つけてくれなければ危うかったのも事実。感謝を込めて、今日の夕食は豪華にしてあげなければ。
「キィ?」
何かを感じ取ったのか、キリは僕の頭に乗って首を傾げる。もしかして、そこを定位置にするつもりかな?さすがにチョット重たいんだけど……。
「キピィ!!」
あー、助けてもらった側だから、無理に退かすのは申し訳ない。重さに慣れるか、首を痛くしないアイテムを作っておこう。キリ様、思う存分おくつろぎください。なんちゃって。
「ナツー!お兄ちゃんがなんか一人で笑ってるよ」
「……にぃ、ちょっと……、きもい」
「きも……っ?!そんなストレートに」
ナツに心を抉られ、泣きそうになる。お兄ちゃん、冗談でも笑えないよ。
「みんな元気そうで何よりだ。ところで、フィアはどこ行った?」
「フィアちゃんなら、ほら。あそこ」
ふと思い出したように尋ねたアルゴートさん。それに応えるニアが指したのは、水の流れ出る岩の背後に置かれた、石碑跡のような岩。初めに確かめが、丁寧に細長く削られていただけで何も書かれていなかった。はるか昔に何かがあった場所……だと勝手に結論づけていたけど。
「祈ってるね」
「みたいだね。もしかしたら、何か知っているのかも」
「聞いてみよ!!フィアちゃーーん!」
元気に駆け出していくニア。その後ろ姿を見て、何度目かの安心感を感じる。
フィアの方はニアの呼ぶ声に気がついて振り向き、笑顔で飛びついている。とても仲が良くなったようで、見ていて暖かい。
「フィアちゃん、それって?」
「あ、これは砂漠の神様。私の村ではでん……しょう?で残ってて、砂漠で迷子になった善意なる者を救うって。もし出会ったらお祈りしないといけないんだ」
神様……、伝承。神水も伝説の中の話でよく出て来るってアルゴートさんが言ってたっけ。確かにここを見つけたのは偶然で、こんな凄い効能の泉が存在しているなんて今まで聞いたことなかった。知っている人も見たことがある人も居ない、存在だけ知られていたこの場所。
「どうして僕達は見つけられたんだろう?」
この場所は、遠目からでも確認できた。例え偶然であったとしても、僕達だけたまたまというのは……少しおかしい。
もし他にも訪れた人がいたならば、伝説や伝承のみが伝わるというのはそれこそ疑問となる。
「フィア、その……、村でこの神様の場所のこと、他に何か聞いてないかな」
そこに何らかの理由があると仮定し、フィアに情報を聞いてみる。
僕たちが他に言いふらすような真似は絶対にしないが、神水がただの偶然でも手に入れられてしまうとなると、悪用する者が現れるかもしれない。薬が毒にもなり得るように、人々を癒す泉を求めて戦争が起きたりすれば意味が無い。
せめて、ここを見つけられた原因を解いて、対策しなければ。
「えっとね…、しん……ちょう?って神の使いに招かれるとたどり着けるって」
「しんちょう……って、もしかして神鳥?」
フィアの発した単語に気になるものが。話してくれた内容は、よく聞くようなおとぎ話と大差ない。何者かに導かれて、なんてよくある話。今回の場合を除けば。
確かにここはキリが見つけてくれたけれど。
キリには親鳥がいて、珍しい魔物ではあっても、神の使いでは無い……はず。まだ子どもだし、他の子と何一つ見た目も変わらない。
「じゃあ私たちの神の使いはキリだ!」
「ピィ!」
「ははは、褒められて喜んでやがる。可愛い使いもいたんもんだ」
…………。まぁ、どっちでもいいか。
みんなと仲良く戯れるキリを見ると、嫌な予想や危険に巻き込まれる可能性なんて、考えるだけ無駄だと思える。キリはもう立派な僕たちの仲間。
「よく、やった」
ナツも認めている。ナツが笑顔でいられるなら、それ以上に求めることは無い。
「やっぱり、夕食は豪華で決定だ」
自身の変わらない決定に、思わず笑ってしまうのだった。
どうも、深夜翔です。
たどり着いた場所が神聖な場所であったセイタ一行。
偶然(?)が招いたその泉は、神水というサソリの毒など一瞬で治せるほど強力な癒しの水が湧き出る泉。
こういった場所は争いの火種にも厄介事と関わるきっかけにもなる。セイタはそれを危惧するが…
次回は、ようやく砂漠から抜け出せる…かも。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




