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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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砂漠越え③

ちゅんちゅんと、森に住まう小鳥たちがさえずる。

――あぁ、もう朝だ。

森に隣接した平原で野営していた僕は、朝早くに目が覚める。普段からの慣れは、どんな状況になろうと変わらないらしい。

「……ナツ、少し離れてね」

いつものごとく、いつの間にかに僕の寝床に潜り込んでいたナツの手をどけて、起こさないように慎重にテントを出る。

空は薄らと青みがかかり、地平線の向こうで太陽が出発の準備を整えているのが分かる。砂漠の近くといえど、朝は少し冷える。

砂漠の夜は特に冷えるというが、隣接しているだけではさほど影響は無かった。こうして熟睡できたのが何よりの証拠だろう。

「んーーっ。朝食の準備には少し早いかな。軽く運動しよう」

この旅を初めてからというもの、少しづつ剣の素振りを日課としている。たしかに、魔法を使えばかなり動ける。しかし、与えられた能力に頼りきっていては、いつか足元をすくわれる。ナツと平和に暮らすためには、相応の努力もしておくべきだと。

「とは言っても、見様見真似でじゃ限界がある……よね」

現在の仲間内では、剣を扱う人がいない。

魔法に関しては皆強い。

けれど、剣を教えられる人はいないため、僕は知り合いの中で最も技術のあったミオンさんの剣技を、見様見真似で練習している。

動き、間合い、振り方、太刀筋。

技まではできなくても、せめて魔物相手に剣だけで太刀打ちできるようになりたい。

「よっ、……はぁ!」

作った木刀を横に縦にと振り続ける。

足と手首と、身体全体を軌道に乗せて……

「こうっ」

すぱぁんっと、空気を斬る。

木刀でありながら、今のは斬った感触があった。

今までで一番上手くいった、と思う。

「あ、あの……」

「あれ、起こしちゃったかなフィア。ごめんね」

確かな感触を手に剣を下ろすと、近くにフィアが佇んでいた。全く気が付かなかったのは、僕が集中していたからだろう。

それに、殺気がなければ気にする必要も無い。

「えっと」

何か言いたげな表情。

フィアが言葉にする前に、身体の方が訴えに出る。

ぐぅー。

「はははっ、少し早いけど、朝食にしようか」

言われてみれば、昨日の晩はあまり充分に食事を取っていなかった。量はあったけれど、やはり味が薄いと満腹感も薄れる。

「パンがたくさんあるし、シチューでも作ろう」

「し……ちゅー?」

「お米と食べる方が僕の中では一般的だけど、パンに付けるのも美味しいんだ。食べたことない?」

首を傾げているあたり、魔族のあいだでは作られていない料理らしい。

――そもそも、シチューの素なんて存在しないだろうって?

これでも僕はアイテム屋さんで、この世界には魔法があるんだ。無いなら()()()()()

あ、カレーの素も絶賛販売中だよ。


「んっ!はむ。っ!!おい……しい」

「よかった。たくさんあるからゆっくり食べてね」

我ながらかなり上出来な仕上がり。

魔法で無理やり組み合わせた素とは思えない。魔法は創造力、イメージ、発想に関わると言われているが、あれはもしかすると真実なのかもしれない。

何より、美味しそうに食べてくれる人がいるというのは、それだけで嬉しい。

「んーーーっ!!わぁ!すっごくいい匂い!」

匂いにつられて、普段なら日が登りきるまで寝ているニア達が起床する。

「おう、セイタは随分早起きだな」

「ニア、おはよう。アルゴートさんもおはようございます。食べますか?」

「食べる!」

「おう、サンキュー」

これでも起きてこないのはナツただ一人。

まぁ、この程度で起きてくるとも思えないけど。

「そうだセイタ。昨日、被害の確認って言ったが、具体的には何をする?道中の生存者ならとにかく、散らばった物の回収は無理だぜ」

「はい。それでも……、できる限りのことはするつもりです。僕たちにとっては何もなくても、持っていた人にとっては大切な物かも知れませんから」

「……そうか」

僕にとって、あのお店が大切な場所のように。

「準備出来たら、早速出発しよう!」

気合を入れる日の出前。

身なりも状況も時間も、寝起き。

「えっと……、まずはナツが起きてから、かな」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いい天気だねぇー!」

「あんまり身を乗り出すなよ。危ないぞ」

「あっ!魚が跳ねたよ!」

「聞いてねぇ……」

僕らは今、川沿いに北へ向かって馬車を走らせている。フィアが川に落ちた場所を探し、生存者がいないかを確認するために。

目的はあまり楽観的に考えることは出来ない、辛い事実が待ち受けているかもしれないが……

「フィアちゃん!ほらあっち!クマだよクマ!」

「おおきい!危なくないの?」

「大丈夫だよ。クマは基本的に、こちらから怒らせるようなことをしなければ温厚な動物だから」

せっかくの旅路。

美しい景色。

暗いままでいるのもはもったいない。

元気なニアの性格が、フィアにとって良い方向に向いている。これから訪れるであろう困難も、今くらいは忘れていて欲しい。

「できるだけ砂漠に入る直前まで川は渡りたくないな」

「ですね。でも、ここまで1度も橋を見ていませんから、見つけたら貴重な橋だという可能性もあります」

「ちょっとした気がかり……って感じだな」

橋がないということは、この道は人通りが少ないということ。使われない道に、橋は必要ないから。

思い返してみれば、ここ数日人に会っていない。

フィアを除けば、6日前にすれ違った商人が最後。災害以前に、何かがあったのかもしれない。

「あれ?セイタ!前に見えるのって」

「うん。あれがエンダルキア山脈」

「ってことはそろそろ……」

北へ進んでから約5時間。

前方に連なる山脈が見えてきた。大きな山々には、所々に黒い雲がかかり、禍々しい雰囲気を感じさせる。しかし、

「なっ?!」

「これは」

「酷い……」

それよりも衝撃的な光景が、山脈より下に広がっていた。

どうも、深夜翔です。

サブタイトルに『砂漠越え』と付いているのに、砂漠を目の前にして一向に進まないです。すみません。

次回こそ、ついに砂漠へ踏み出すときが…?


ここまで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、感想や評価、ブックマーク登録、Twitter(@Randy_sinyasho)のフォローもよろしくお願いします。

ではまた次回…さらば!

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