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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第二章 : 小さな移動アイテム屋さん 〜お店は一時閉店です
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砂漠越え②

「んむ……もぐもぐ…はむ」

作った料理が端からどんどんとなくなる様は、見ていて圧巻だった。

小さい子供とは考えられない食欲。

「相当お腹が減っていたんだね」

「味はかなり抑えているし、カロリー控えめな消化のいいもんだけ……のはずなんだがな」

「これだけ美味しそうに食べてくれてると、すごく美味しい食べ物みたいに見えてくるね!」

「いやまぁ、同じもん食べてるんだけどな?」

笑顔で子どもを眺めながら、こっちも美味しそうに食事をするニアに対し、どこか微妙な表情で味の薄い回復食に手をつけるアルゴートさん。

空腹ならともかく、体調に問題ない人にはあまり美味しいとは感じないだろう。

「それにしても、一体どれだけの距離を流れてきたのかな。今の場所から魔族領までは、かなりの距離離れていると思うけど」

「ただ川に落ちたって訳じゃあ無いだろうぜ。何せ、この川は魔族領に繋がってねぇからな」

この砂漠と平原を隔てている川は、砂漠のずっと北、何処の国にも領地にも属さないエンダルキア山脈から流れてきているものだ。

エンダルキア山脈とは、とある古龍の一家が住む山々が連なる山脈で、踏み入った者は誰一人として帰ってこないと恐れられる別称『絶望の鉱山』。

古龍はたった一体で一国の軍隊を滅ぼせてしまうほど強大な力を持った龍族であり、その脅威は周囲の国が領土化を諦めるほど。長い間人が踏み入らない地であるため、その鉱山資源は計り知れないとされている。

「まさかあの山から……?」

こんな小さな子が古龍に挑むとは思えない。

奴隷商人的な悪い人の企みが関わっている線もあるが、元々着ていた服は普通の洋服だった。攫われた……という可能性は低い。

「あの付近に魔族が住む集落があるなんて聞いたことねぇ。なんかのトラブルに巻き込まれた線が妥当だと思うが」

「うーん……」

魔族についてほとんど知らない僕らが頭を悩ませても、大した結論には至らない。

「ねぇねぇ、お名前はなんて言うの?」

悩むという言葉を知らなさそうな人物が一人。

「……フィア…」

「フィアちゃんかー!あれ?女の子……だよね?」

「た、たぶん…?」

確かめようにも方法がない。

無理やり服を脱がせるなんて、結果がどうあれ完全に不審者だ。そうでなくても、知らない人達に囲まれているこの状況が既に事件味を感じてしまう。

「魔族の中には、いわゆる"中性"ってのも存在するらしい。性別なんて気にすることも無いだろ」

アルゴートさん、大人な対応。

子供相手に何を考えているんだと。

「僕らが気にしなくても、本人が気にする場合だって……」

すると、またしても行動に出たのはナツ。

昼間に寝すぎたのか、この時間になって少しだけ元気が余っている様子。

「きて」

フィアの手を引いて、すぐ横の木の影に隠れる。

「ひゃあぁ」

「ちょっと……だけ」

「ど、どこさわ……ひゃっ」

うん。声だけ聞くと完全にアウトだ。

「あのー……ナツさん?一体何を」

できるだけ木の影から目を逸らしてナツに尋ねる。

その返答は、柔らかな微笑みと一緒に飛んできた。

「なかっ……た。ちゅうせい…は、じじつ。さわった、から、確定」

「……うーん、最後の一言は聞きたくなかった」

出来れば穏便に済ませたかったのだけど、ナツの後に影から出てきたフィアの顔があまりにも赤かったため、もはや手遅れであると諦めた。

ニアなど、声を聞いていただけで同じく真っ赤だ。

この状況はなんとも言えない気まずい雰囲気となる。

僕はとりあえずアルゴートさんに助け舟を求める。

「あー、なんだ。魔族の……見た目は女の子っぽいし嬢ちゃんでいいか。なんで川に流されていたのか、説明できるか?」

子どもの相手は苦手なんだよな……。そう言うと首の後ろに手をやって、アルゴートさんはできるだけ柔らかな物腰でフィアの真向かいに座った。

「……か、風が。すごい風が吹いて!お家が飛ばされちゃって……、お父さんがまほうで川に」

「風……?まさか」

「竜巻、かな?」

どの世界でも、自然災害は共通して起こり得る。

それは理不尽にも時も場所も人も選ばない厄災、運が悪かった――そう答えるしかない。

「その、住んでた場所とかは分かるかな?出来れば被害とかを確認して、生存者の救助とかも……」

「そうだな。この子の親も、まだどこかで生きてるかもしれねぇ。村の名前とかでも知っていたら教えてくれ」

竜巻の厄介なところは、災害そのものが移動してしまうこと。家が吹き飛ぶほどの大きさであれば、その移動距離は何十キロにも渡る。

「え、エウター……。むらの人たちは、みんなそう読んでた」

「エウター村?アルゴートさん、分かりますか?」

「あぁ。ちょうどこの砂漠を抜けた先にある、かなり大きな村だ。まさかそんな長距離を移動していたとは」

フィアが流れてきた川は、さっきも言った通り北から流れてきている。砂漠を抜けた先、アルゴートさんの反応からするに、このまま東へ抜けた先という意味だろう。

川に落ちたのであれば、竜巻は砂漠を東から北西へと横断する形で移動したことになる。

「先に川沿いに北西へ向かいましょう!飛ばされていたのであれば、生存者がそっちにいるかも」

「俺も同意見だ。その後、災害の後をたどって砂漠を横断しよう」

「はい」

新しく、明日からの予定ができた。

少しばかり遠回りをすることになるけれど、命には変えられない。困っている子どもも見捨てられないし、ナツも少しやる気があるように見えた。

「……ふあぁ」

「ニアは眠そうだね。移動は明日からにしたいから、今日はもう寝ようか」

まずは、食事と睡眠。

気力万全で望むことが最重要だ。

どうも、深夜翔です。

自然災害…それはどこの世界であっても脅威となる。

その破壊力は、子供大人構わず襲いかかり、等しく命を奪う。

セイタ達は、その被害にあった村の人々のため、今できることに取り組む決断をした。新たに加わったフィアを含めた彼らは、果たして砂漠を超えることはできるのだろうか。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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ではまた次回……さらば!

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