自然な歩幅で
「なぁセイタ。わざわざこっちから出発する必要あるか?」
「初めの目的地が、街の街道を真っ直ぐ進んだ場所にあるので」
兄妹とアルゴートがいるのは、街の門手前。
街に馬車は入れないため、基本的にはここの馬小屋を借りて停めておく場所。
簡素に見えて盗難防止の仕掛けがいくつも施された、商人うってつけの馬小屋である。
「それにしても、案外使用者多いんだな」
「商売が盛んな街ですから。商人が街を行き来するのに足は必要不可欠ですよ」
「初めは馬車を乗り継いで行こうとしてたやつが言うか、それ」
「うっ……あの時は何も考えていなかったので」
「一緒に行くとはいえ、心配だぜ俺は」
そんな場所で世間話をする彼らは、まるで誰かを待っている様子。アルゴートにセイタにナツ。
他にいるとすれば…。
「セイターー!!!遅くなってごめん!!」
「いいよ。それより、お店の方は大丈夫なの?」
彼女が待ち人であり、ここから出発する理由でもある。
「うん!テルが"姉さんにしか出来ない事をしてくればいいよ"って!!かっこいい送り出ししてもらった」
「次に会ったら、僕の方もお礼を言わないとね」
彼女……ニアは、精霊眼と魔人眼を持つ人間の少女。年齢は本人曰くセイタよりは年上らしい。
街を出ると話をしたところ、自分も着いていくと手を挙げたのである。
セイタは、初めこそおばあちゃんが経営するお店の手伝い等の理由で止めていたものの、経営者本人が行ってくればいいと送り出してしまった。
そうなれば、特に断る理由もなくなり、戦力としても申し分ないニアの同行に頷く他なかった。
セイタが渋っていたのは、決して彼女が嫌いだからではなく、危険になるであろう旅に友人を巻き込みたく無かっただけ。
しかし、彼女が自分の意思で行く言うのであれば、無理に止めることは出来ない。
「これからよろしくお願いします!!」
いつも明るく、元気を絶やさない彼女がいてくれるのは、多少重い目的を持つ彼らにとって良い存在なのかもしれない。
「それじゃあ出発しようか」
初めの目的地はここから南東。
貿易都市エルドベル・イーストだ。
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「エルドベルって、具体的にどんな街なんですか?」
手網を握る僕の後ろ、馬車の中では、ニアがアルゴートに目的地について尋ねていた。
ナツは僕の膝で横になっている。
「この大陸、特に内陸部において最大の貿易都市だ。俺も何回か訪れたことがあるが、人の量が半端じゃなかったぜ」
「サンシークより?」
「あんなん比べ物にならねぇよ!」
「へーー!!凄い!!見てみたいねセイタ!」
「うーん……僕はあんまり人が多いところは好きじゃないんだけど」
「えー、きっと楽しいよ!」
ニアは目的地に思いを馳せているが、エルドベルはどれだけ急いでも3週間はかかる。
サンシークとは比べ物にならない距離。
僕らでは1ヶ月程度かかると考えていい。
更には、その道中、広大な砂漠を通過する必要があった。
いくら整備されているとはいえ、素人に砂漠越えはかなり厳しいものになるはず。
(砂漠地帯に入る前に、どこかで準備しておかないと)
ついでに、砂漠横断に使えそうなアイテムを作って売ってみようと考えながら進んで行った。
しばらくは静かな平原が続き、稀に森や川等の緑豊かな自然が目に留まる。食料は充分に持って来たし、心配なのは天気だけだったが、運良く晴れの日が続いた。
3日もすれば馬の扱いにも慣れ、このままエルドベルまで順調に行けるかと思ったが、旅の幸運もそう長くは続かないらしい。
「雨だねぇ…」
「しばらく止みそうには無いかな」
「ここまで順調だったんだ。たまにはゆっくりしようぜ」
雨の降り注ぐ森の片隅で。
空を見上げて休憩中。
馬も僕らも濡れないでいられるのは、この魔道具『雨宿り』のおかげだ。起動させると、ある程度の大きさの屋根(イメージはバス停)が展開される。
ただそれだけであるが、旅に付き物である雨日という問題を解決してくれる優秀な魔道具。
一つ課題があるとすれば、かなりの量の魔鉱石に発動者の魔力を必要とする点。
これでは売り物には出来ない。
ちなみに、地球ではお馴染みの『魔道傘』は絶賛販売中。
前にアヤメさんに渡した防御用の魔道具を改良、値段や性能を落とし、手に持って雨だけを防ぐ雨具。
もちろん魔道である以上性能は地球の傘より有能。傘にありがちな足元やカバンが濡れてしまう現象は一切起こらない。
なんて便利。
魔法様々です。一家に一台魔道傘。
「…単位……だい?」
「色々仕掛けあるし、機械みたいなものじゃない?」
相も変わらず膝の上なナツ。
ここは私の定位置ですと言わんばかりに我が物顔。
「あっ!!うさぎだ!」
「小鳥も入ってきたな」
気がつけば、『雨宿り』の中は雨を凌ぐ場所を求めてやってきた動物たちで溢れていた。
「雨の日は大変だよね!」
まさにもふもふパラダイス。
エルフは元々動物に好かれやすい。
ニアは、優しい雰囲気が動物達にも伝わっているのだろう。
僕はと言うと、おそらくナツの特殊な魔力で好かれているに違いない。少なくとも、僕一人では寄ってこなかっただろうから。
……何にしても、敵の多い小動物にからすれば、これ程安心して雨をしのげる場所も無いはずだ。
「たまには、ゆっくり…しよ?」
「そうだね」
雨の降る森の中。
まだしばらくは、止みそうにない。
どうも、深夜翔です。
ニアも加わり移動販売を始めた4人。
向かうは貿易都市エルドベル。
長い道のりも、彼らのペースで進んで行く。
しばらくは道中のお話になりそうです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!
PS.こちらの事情にて、次回の投稿は5月末もしくは6月頭になります。




