また逢う日まで
ここはユーランダ大陸の一部。
この大陸で最も発展し、巨大な国ルイドの城下町ライード。そんな街にも、人気の少ない裏道が存在する。
その中の一つ、噴水から街中に流れる人口川が見える位置にひっそりと店を構えるアイテム屋。
……いや、今はただの空き家。
しかし、その中から一人の少年と少女が顔を出す。
「しばらくは戻って来ないだろうから、しっかり掃除しないと」
黒髪で青い瞳の人間。
兄、セイタ。
「……ねむ…い…」
美しい銀髪、同じく青い瞳。
妹、コナツ。
種族は精霊。
兄妹であり、同じ地球からの転移者・転生者。
二人はこの世界でまったりとアイテム屋を営み、平和な日常を過ごしていた。
しかし兄妹の兄、セイタを狙う謎の邪教徒、アルステッド教によって平和な日常が失われつつあった。
そこで、彼らはアルステッド教の情報を集めるため、街を出て移動販売という形を取る選択をした。
今は、街を出る前にお店を大掃除をしておこうと、一日の時間を設けたところ。
「棚の商品とかは全部持っていったから、簡単に掃き掃除からやっていこうか」
「……そうじ、めんど…くさい」
「そう言わないの!また戻ってくるにしろ、長い期間空けるんだから、この場所に感謝してさ?」
「………すぴぃ」
「空中で寝ないでナツ!!」
「今日…いいてんき」
「聞いてないね……」
兄妹で漫才のような会話を繰り広げながらも、手は着実に動かしていく。
その手際の良さたるや。
とても16歳の少年とは思えない。
対して妹の方はと言うと…
「……すぅ………、?!ね、ねてない…」
年相応の反応とも言える。
やはり、単純作業の繰り返しである掃除はつまらない。ただでさえ眠い少女には、一点を見つめているだけで夢の世界へ旅ってしまいそうだ。
晴れの日が多いこの世界では、ナツは起きている方が大変なのだ。
「午前中にのうちに終わるかな…」
そんな妹を背後から見ていて、不安を抱くセイタ。
結局、午前中には終わらなかった。
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「ふー。やっと終わった」
店の掃除が終了したのは、昼過ぎ。
時間にして2時頃。
小さな店といっても、戦力はほぼ一人。
これだけの時間がかかったのは致し方なし。
「ナツー、せめて椅子で寝なよ」
掃除を始めて早々に戦力外通告を受けたナツは、雑巾を持ったまま台の上で丸くなっている。
抱いている人形は、ナツのお気に入り。
「ナツー、って聞いてる?」
あまりに反応を示さない妹に、何かあったのでは心配して様子を見る。
「……にぃ、あや…め」
実は既に起きていて、背後の存在に気がついていた。
なんて、都合がいいにも程がある。
しかしそれは現実。
「お、おはようございます……セイタさん、ナツちゃん」
「アヤメさん!!少しお久しぶりで……お一人ですか?」
「え?!あ、えっと……はい!」
嘘である。
実はすぐ目の前までミオンと一緒に来ていた。
事情をミオンから聞いていたアヤメは、なんだか二人に会うのが気まづくなってしまっていたのだ。
そんな事情を知って知らずか、ミオンは外で待っているから一人で行ってきなさいと送り出された。
そして、声をかけようか迷っていると、先にナツが気づいたという。
「危ないですよ?一国のお姫様なんですから。今日はミオンさんに聞いて?」
「…その、はい。お二人が…街を出る、と」
「すみません、急な話な上に、本来は僕達から会いに行くべきなんですけど……お忙しかったみたいで」
申し訳なさそうに謝るセイタ。
彼の反応に、街を出る事が事実であると理解してしまった。その瞬間、色々と言いたいことが吹き飛んで、言葉に詰まってしまう。
「………あのっ」
かろうじて口から出たのは、慌てた結果の裏返った声。それでも、ここまで来て、言わなければならない。
「ま、また…帰ってくる……んですよね。このお店も、まだ、続けるのですよね」
一生懸命に、悲しみを飲み込んで、そう尋ねる。
彼女の精一杯な質問に、セイタは本心の笑顔で応えた。
「はい。絶対にまた、ここに帰ってきます。僕はこの街が大好きですから」
「……ナツ…も」
「っ…!!」
危うく、目から水が零れるところだった。
急いで目を擦り、それでも溢れ続ける涙を放置して。
「約束っ…ですよ!!絶対、絶対に。また会いますからね!!」
「はい。約束です。またここで…」
会いましょう。
そう言い終わる前に、アヤメはセイタに飛びついた。
涙も、地位も、プライドも。
そこに彼女の押さえ込んだ感情を邪魔するものはいなかった。
ナツが近寄り、アヤメの服の裾を掴む。
扉の外の影が、少しだけ揺らいだ気がした。
(また、平和な日々を取り戻したあとで)
最後の思いだけは、胸の中に固い決意としてしまって置く事にした。
どうも、深夜翔です。
次回はいよいよ出発の時。
最後の最後に、彼女が登場しますよ?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




