過去の英雄と伝説
昔は、今より少し種族間のいざこざが多かった。
差別やら迫害なんて言うのも少なからずあった。
今のこの国では考えられないでしょう?
そんな中、私がいたパーティは他種族混合の、世界で見ても私たちしか居ないであろうパーティだった。
ドワーフ、エルフ、人間、獣人、精霊、竜人…そして魔族。
まー、こう言ってはなんだけど、周囲からの目は良くなかったわ。大きな街ではあまり無かったけれど、小さな町や村なんかでは宿屋に泊めてもらえない事もしばしばって感じ。
この大陸では、主に人間が多く住んでいた事も関係しているのかも知れないわね。
他の種族に比べて身体能力に劣る分、仲間意識が高い。
仲間割れ?
そんな事は1回もなかったわよ。
年齢も種族も違うけど、似たような性格の集まりだったもの。宿屋で休めない時は、皆で野宿して、夜中まで騒いでいたのが懐かしいわ。
そんなある日ね。
『神の騒乱。邪神アルステッドがユーランダの神と戦争?!』
街中で配られていた新聞記事の内容で、小さく無い騒ぎになっていた。
今のこの国って、守ってる神がいないのよね。
信仰とか神様うんぬんの話題を聞かないのはそのおかげなのだけど、その原因はここにある。
殺されたのよ、ユーランダの神は。アルステッドに。
負けた…と表現するのが正しいのかも。
それほどの力を持っていたのよ。邪神アルステッドってやつは。
一時は国中の雰囲気が絶望的でね。
神が死んだ。この大陸は終わりだ…って。
そんな中、ディーノ……あ、竜人族の仲間ね?が、「この雰囲気は気に食わねぇ。邪神なんてもん、ぶっ飛ばせばいいだけの話だろうが」なんて言うの。
バカなんだと笑ったけど、やってみる価値はあると感じたの。どうせ、何もしなくても私たちに明るい未来なんかやってこない。いっそ神なんて要らないって事を知らしめてやろうじゃないか、今までだって理不尽な目にあってきた私たちにはそれを否定する言葉は無かったの。
そう結論が出てからは早かったわ。
必死こいてアルステッドの居場所を探し出して、信者共を薙ぎ倒して。結局途中で探すのが面倒になって、わざと信者どもに召喚させてね。
ボコボコにしてやったわ。
こっちも満身創痍だったけれど、無力化には成功した。
ただ、流石は神ってとこね。
殺して死ぬような存在じゃ無かった。
だから、封印したの。特別な儀式を行って。
結果、大陸の一部を犠牲にして封印に成功した。
そんじょそこらの封印魔法と一緒にしないでよ?
期限付きの封印なんかじゃない。
外側からの破壊が無ければ、二度と復活する事は叶わない、最強の封印魔法。こうして、少しずつではあったけどユーランダ大陸にも平和な時代と呼ばれる日が訪れたのよ。
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「"神殺しの英雄"なんて呼ばれているけれど、あれは嘘。邪神は滅んだと言うことにしたかった当時のお偉いさんが、手を加えて広めた伝説よ。
真実は"神を殺した邪神を封印した英雄"ってとこかしら」
それなりに長く話し終えた母様は、最後にそう付け足した。これでも短くした方なのだろう。そこに至るまでの苦労は僕らには計り知れない。
「じゃあ九人の英雄って言うのは……」
「ええ、おそらくは私たちのパーティのことでしょうね。人間だった二人は既に亡くなったと聞いているから、今生きているのは7名……何処で何をしているのかも分からないけれど」
意外だった。
年中森に引きこもっている母様にも、そんな冒険者時代的なものがあったなんて。
それとは逆に、母様の底知れない強さに納得する部分もあった。神を封印できるほどの実力。
(……まぁ、強いのは知ってたけど)
普段怠けている母様からは想像できない。
けれどその強さを僕は知っている。
いや、改めて知ることが出来た。
「母様、僕ら、アルステッド教に狙われているらしいんだ。その辺りに関しては何か分かる?」
納得した上で本題を尋ねる。
「そうねー、少なくとも私が外で活動していた頃にアルステッド教なんて信仰、聞いた事無かったわ。そいつらの活動目的が分からないとなんとも言えないわね」
「どうせアルステッドの復活……とかじゃねぇのか?」
「それは不可能に近いと言っていいわよ。確かに外側から破壊すれば封印は解けるけど、そんなやわな造りでは無いわ。一級の魔法使いでも破壊するのに数十年は要するでしょうね」
母様がそう宣言する程だ。
その封印に費やした知識は計り知れない。
「……いや、そもそもだ。復活だとしたら、セイタを狙う理由はなんだ?他に理由がある……と考えて良さそうか」
もはやアルゴートさんは独り言のように呟いている。
「あ、そういえば交戦したとき、相手が不思議な能力を使って来たんだけど…関係あるかな」
「不思議な能力?」
僕は二人に、魔力の反応がない異能力について話す。
「魔力を使わない…?魔法ではない、ということか」
「そうです。僕だけならともかく、ナツまでもが視えなかったとなると、魔力は一切使っていないのだと」
「んな馬鹿な。俺の知る限りじゃ、魔力を使わない能力なんて聞いたことない」
あのアルゴートさんが知らない…となると、一体あれは?
「母様は何か知っていますか?」
「……」
「母様?」
「一つだけ、心当たりがある。それも、もし真実なのだとすれば………セイちゃん。あなたにも関係があるかも知れないわ」
今まで以上に神妙な顔つきで、そんなことを言う。
「ただ、それを知るのはあまりに残酷で……この世界のことを嫌いになるかもしれない」
話がより壮大になっていく。
世界を嫌いに?
難しい話で、正直問われても困る。
けれど、僕には優先するべき存在がいる。ナツが笑顔でいる場所を守るためならば、どんな話も受け入れる。
「僕は大丈夫。だから話してよ」
「……そう…分かったわ。ただし、これはあくまで私の憶測だと言うことだけは、念頭に置いて聞いてね」
母様は僕の目を見て、真剣に話しを再開した。
どうも、深夜翔です。
語り継がれる伝説なんて、大抵が脚色され、誇張される運命にあるのです。何せ、噂というのは大抵、誰かがつまらない日常に彩りを添えるために大袈裟に想像するものだから。
私の好きな小説内で、"噂とは一番つまらない答えが真実なのだ"と言われていました。
まさにその通りだと思います。
次回は、明かされる兄妹の真実です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




