情報こそ勝利への近道
『諸事情によりしばらくお休みします』
扉の前にはそんな張り紙。
しばらくがどれだけの時間になるかは分からない。
できるだけ早い解決を…。
そう思う事しか叶わない。
「………はぁ。どの本にも書いてあることは同じだなぁ」
お店はお休みしているものの、レジ台に大量の本を積み重ねて読み漁っている。
調べているのはただ一つ。
アルステッド教について。
母様が全然本を読まないから、市場に行ってそれらしい本を購入してきた。しかし、どの書物を確認しても記されているのは似たような情報ばかり。
他の大陸と言うのもあり、そのどれもが信憑性が低くパッとしない。
この本も諦めてまた1つ手に取る。
「セイター!いるーー?っていた!」
そのタイミングで、一人の少女がやってきた。
張り紙など一切見ていないのが分かる。
「ニア、今日はお店休みだよ」
「うん、知ってるよ。手伝いに来たの!」
「手伝い…?」
「そう!セイタの事だから、何か調べてるんじゃないかなーって。それで覗いて見たら予想通り!本に埋もれたセイタを発見したってわけ!」
「それで直ぐに入ってこないで、外をウロウロしてたんだ」
「あれ?バレてたのかー」
「覗くならせめて、隠れる努力をしよう」
手伝い…というより、どちらかといえば邪魔な気もするが、ニアの明るい性格のおかげで少し気が紛れた。
沈んでいた気持ちも、明るさを取り戻す。
「あはは。ニアに感謝だね」
「んーー?なにかしたっけ」
「なんでもないよ」
本人は知らない。知らない方がその力を発揮しやすい。
無理に笑うニアを見たくはないし。
「あ、そういえば昨日、ニアはどうしてミオンさんと一緒にいたの?知り合い……では無かったよね」
「あの騎士様のこと?会ったのは偶然だよ!と言うよりも、誰か戦える人を探してたら騎士様の方から声をかけてくれたの」
困っている人を見かけたら助ける。
なるほど、ミオンさんらしい出会い方だ。
「本当は、セイタを先に見つけてね。声をかけようとしたら、突然大きな結界が張られたのが見えて。私一人じゃ危ないかなって」
結果論で言えば、その判断は素晴らしいものだったと思う。あの時、ミオンさんが助けに入っていなければ、危うかったのは事実。
ニアの瞳と事情を理解してくれるミオンさんのおかげで、あの場を凌げた。
命の恩人と言っても過言ではない。
「あっ!セイタ!これってあのきょうだん…?ってやつだよね!」
「……その本はもう読んだよ」
「あれ?そっかー」
「あはは。今分かってる情報は共有しておくべきだったね」
本の下から1枚のメモを取り出す。
ある程度アルステッド教について調べて分かったもの。
「わー!たくさん調べたんだねえーっと……
『アルステッド : 過去にいくつもの大陸を支配し、世界全土までもその手の内にしようと企んだ邪神。
それぞれの大陸の神をも凌駕。最後は英雄によって封印され、今も何処かに眠っている』
なんだか怖いね、邪神。神を凌駕って、あの神様よりも強いんだ……。あ、でもこの"英雄"は私も知ってるよ!」
コロコロと表情の変化するニア。
ただのメモひとつで大袈裟な反応だ。
「"九の英雄"の伝説。別称では"神殺しの英雄"なんて呼ばれてる。けど、それ以外のことは何も分かっていないよ。どの書物にもはっきりとしたものは無くて、どれも噂話の域を出ない」
どこに封印したのかも、ましてやどんな戦いだったのかさえ、記述された本は無い。
架空の物語だと言う学者も少なからずいる。
「でもさ。封印して何処かに眠ってるんだよね?あるす…てっど教が信仰してるのなら、南の大陸に封印されているってことじゃない?」
「まぁ、そう考えるのが妥当かな」
最も信仰の厚い地域。
そこに封印した邪神がいる。でなければ、何故彼らは南の大陸を行動の拠点としているのかが謎。
「約500年前の話……」
渡したメモを読んでいたニアは、とある一文で止まる。
「セイタ。この戦争?って、500年前の話なんだよね」
「調べた限りではそうだと思う」
「500年ってさ、もしかしなくてもまだ当時の英雄のことを知っている人が生きてるかも知れないって事だよね」
「っ!!そうか!」
僕もニアの考えに気づき、盛大に反応した。
「人間の寿命は100年だけど、他種族なら!」
そう。
ここは異世界。
魔法があり、適応した文明や伝説があり。
多数の種族が生きている。
彼らの寿命は人間の比ではない。
「アルゴートさんならなにか知ってるかも」
「探して見よ!!」
ニアの核心を着いた閃きに、いてもたってもいられなかった。
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「アルを探して、何故ここに来る?」
「な、何となく…です」
騎士団本部。団長室。
僕はミオンさんの元を訪れていた。
「アルゴートさん、学院の様子を見てくると言っていたので、もしかしたらここに来ているのではと…」
「念の為先に言っておくが、ここは学院では無いぞ」
「あ、はい。そうではなくてですね……アルゴートさんが学院に向かった理由が侵入者の件なのだとすれば、ここに来てないかなと思いまして」
「この間の会話、聞かれていたか」
「あはは…一応、僕の店の前ですから」
あの話の流れ的に予想しただけ……とは口に出さない。
「残念だがアルゴートは来ていない。が、おそらく既に学院にも居ないだろうな。用があるにしろ、奴がそう何日も学院に留まっているとは思えん」
凄い私怨が篭った確信だ。
……少し共感してしまったけれど。
「分かりました。突然押しかけてすみません」
「ああ。問題ない……ん?そういえばセイタ、どうやってここに?正門には見張りの兵がいたはずだが」
「えっと……秘密です!」
まさか、転移の魔法を使った……なんて言える訳がない。
どうも、深夜翔です。
勉強している時、その学習に詰まってしまうと中々に気分も下がり気味。
そんな時に気分を明るくしてくれる存在は、やはり貴重な存在と言えるでしょう。
兄、セイタは協力者の手伝いのおかげもあり、調査が一歩前進。
果たしてこの一連の物語の核心に迫ることはできるのでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




