襲撃者①
「晴れてよかったね」
「…ん」
「こうしてナツと街の中を歩くのは久しぶりだ」
「……んっ」
(できれば邪魔しないで貰いたいんだけどなぁ)
背後の人影に向かって悪態を着いた。
兄にとって一番大切で嬉しい時間。それを邪魔する者は誰であろうと容赦はしない。
無論、兄は監視されている事に気がついている。その上で無意味に目立つ事は避けたい、この時間を大事にしたいという本来の目的と離れた心情に悩まされていた。
「にぃ、いい…の?」
「まだ具体的な目的が見えてないから……それにここじゃ目立ちすぎる」
当然、セイタが気が付くということは、妹が気付かないはずもない。
泳がせるという名目も兼ねて、しばらくは知らないフリを続ける選択を取る。
ナツの手を握る手は離さず、セイタは広々とした青空を諦めの心で胸中嘆いた。
"ナツと出かけるにはいい天気なのに、問題が山積みだよ……。誰か代わりに片付けてくれないかな"
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現在の状況を簡単にまとめて置く必要がある。
第一に、今日の外出は現在起きている事の可能性を確定させるためのものであること。
第二に、最悪の予想が当たっていた場合、どう対処すべきかを考える。
第三に………既に最悪の予想が的中してしまっているこの状況に対する文句がありすぎる。
そう、先日より続くお店の大繁盛という、一般の店ならば大歓喜の現象。その原因の予想の一つとして、人為的に誰かが何かの目的で起こしたものである可能性。
本来は否定したいところだったが、店を出て早々に何者かにつけられていることが判明。
なんとも言えない感情に襲われる。
と、ここまでが簡単なまとめ。
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街を歩いてしばらく。
王城の外壁が見える、噴水広場の1箇所にやってきた。
「いつ見ても大きい。あの壁に人力で塗料を塗ってるのを考えると、ちょっと申し訳ない気がするよ」
「……きしだん、…ごきぶ」
「それ以上は辞めてあげようね」
遠くに見えた外壁で、作業する騎士団が見える。
さすがにそれは可哀想だぞ妹よ。
自分で作ったとはいえ、人の手で巨大な壁に塗るということをもう少し考えて置くべきだったかもしれない。
時間に猶予が無かったわけだし、今回は致し方ない…かな。
試験のために木刀を作った時もそうだったけど、短い時間の中で開発を頼まれることが増えたし、予め色々な物を試して……。
「木刀、か」
ふと、木刀を作った時のことを思い出す。
ミオンさんに渡して、城内の案内をしていただいて。
そこで侵入者を見つけて。
(思えばその後からだったような……)
翌日からお店に人が沢山入るようになった。
これを偶然だと割り切るのは難しい。
思考の沼に落ち、広場の隅で急に立ち止まる。
だが、のめり込む前に右手を強く引かれる感覚に現実へ引き戻される。
「…にぃ………」
「"人払い"の結界っ。いつの間に」
監視していた影には注意をしていたはず。
やはり僕らにアクションを起こしていた何者かは一人では無かった。
ナツと僕が気が付かない結界、相当な実力者がいる。
「に…じゅう……さん」
「囲まれてるってことか。街への被害なく引かせるには、結界の発動者を見つけるのが早い」
ナツの魔法は威力が高いから、こんな街中で放つのは危険すぎる。かと言って、僕の方も選択肢は多くない。
「っ?!にぃっ」
「ナツ、少し捕まって」
僕はナツを抱き寄せ、そのまま両腕に抱えるとそのまま空中へと飛び上がった。
と、その瞬間。
たった今僕らがたっていた空間に二本の短剣が突き刺さる。少しして、すぐ近くに二人のローブを着た人影が現れる。
「姿を消す……あれは魔法?」
「…んん。魔力……かんじなかった」
「だよね。僕も」
少なくとも魔力を発生させていれば、近づかれた時点で気が付く。
「魔道具か……、魔法じゃない別の能力か」
足元で起きた不可思議な現象に、多くの疑問が降りかかる。確かめたいがそんな時間はない。
飛び上がった先では、またしても魔力の感覚のない攻撃が放たれている。背後から氷の槍。
「"リフレクト"」
すかさず攻撃に反射を合わせる。
跳ね返った槍は術者へと牙を剥く。
それを見届ける間もなく、今度は頭上から巨大な岩が落下してくる。
「"烈脚撃"」
一回転した脚で、岩を粉々に粉砕。
(やっぱり、魔力は無し…か。発動されるまで対応出来ないのは辛いところ)
脅威とまでは呼べないが、街への被害を一ミリも気にしていないのは厄介。ただ避ければいいダンジョンよりも工夫がいる。
「ナツ、結界を張ってる術者は分かる?」
「……すごくうすい…けど、たぶんあれ」
建物の屋根に数人のローブの影。
その奥に一人、守られるように座っている影。
魔法陣は見えないが、動かないということは結界の維持をしている可能性が高い。
「"迅速なる弾丸"」
ナツとの阿吽の呼吸で標的を定め、一切の躊躇なく魔法を放つ。
「「「〜〜〜……〜!」」」
目では追えない程の速度で放たれた弾丸は、標的に当たることなく霧散した。
正確には、屋根上の数人が何かをした。
結果、弾丸はそれ以上奥へと進まなかった。
そうして防いだ彼らは、よく分からない言語を使って何かを唱え始める。
「…………えっ?」
その瞬間、空中で留まるために使っていた"空力"が消えた。魔法が消滅したのだ。
魔法で空中にいた僕らは、当然重力に逆らうことは出来ない。その体は為す術なく地面に引き寄せられる。
「まずいっ」
咄嗟に空力を使おうと試みるも、何故かなんの変化も起きない。
もはや衝撃に耐える他なく、何としてもナツだけは守ろうとナツを抱き寄せて衝撃を待った。
「………わ?!」
しかし、予想していた衝撃は一向に訪れず、代わりに誰かに抱えられた感触がやってくる。
「大丈夫か二人とも」
「ど、どうしてここに…?」
「私か?私は……説明すると長くなるが、彼女がここまで連れてきてくれた」
スタッと地面に着地し、僕らをゆっくり下ろす。
「とはいえ話はあとだ。こいつらは敵…で間違いないな」
そして華麗に剣を抜き何者かと対峙する騎士団長、ミオン。
「私も加勢するよ!!セイタ!ナツ!」
「ニア?!」
窮地に駆けつけてくれたのは、予想外の組み合わせの二人だった。
どうも、深夜翔です。
街での戦闘で最も厄介なのは、主人公側、もしくは守る側は、街への被害を考えなければいけないことです。
そこに人数不利に、見たことの無い攻撃。
珍しく二人が苦戦を強いられている場面です。
さて、ヒーローは遅れてやってくるように、間一髪のところで団長に助けられた兄妹。
果たしてこの状況を突破することはできるのだろうか。
次回に続きます。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




