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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第一章 : 街の小さなアイテム屋さん
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騎士団長は休めない

「団長、先日の会議の報告書の提出の催促が」

「ヒムイ大臣か。明日にでも報告しに行くと伝えてくれ」


「昨日の試験の結果なんですが、応募人数が多く、募集人数を大幅に超えて…」

「人数の調整に関しては副団長に通しておけ。具体的な話は王との相談になる」


「試験の際に捕らえた人物についてですが」

「何か新たな情報は得られたのか?」

「い、いえ……。現在国中を周り自白魔法を使える者を探しております」

「そうか。第一魔法学院内で起こった騒ぎとの関連も随時調べてくれ」

「了解ですっ!」


「はぁ……」

大きく息を吐き出した騎士団長、ミオン。

山積みの書類を手にして不機嫌な表情。

ガチャ。

「まだ何か用でもあったのか」

もはや目線を動かしもせず、ぶっきらぼうに尋ねる。

「もう、ミオン。そんな怖い顔をしていては、騎士団の皆様が怯えてしまいます」

「あ、アヤメ様っ?!す、すみません…」

団長室に入れ替わるようにして入ってきたのは、見慣れた少女。

「遊びに来ただけですから、気にしないでください。それにしても…とても忙しそうですね」

「厄介な事案が入団試験と重なってしまったのは正直痛手です」

「無理はしないでください……と言っても難しい話ですね。ミオンは目を離すと直ぐに無理をするんですから」

顔を膨らませて少し怒った表情をする王女、アヤメ。

騎士団の皆から、こっそりと相談されていたことは口に出さない。王女様が一般の騎士団員と仲が良いのは今更聞くまでもない

「すみません……。ですが、他の団員たちも頑張っているのですから、私だけが休む訳にはいきません」

「"このまま待っていては、無理をしてでもお店に来ようとしてしまうでしょうから、依頼を頂いた商品はアルゴートさんに頼んでこっそりミオンさんの元に届けておきます。体調を崩さぬよう、適度な休憩を挟んでくださいね"」

「…?」

王女様の意見の前ですら引こうとしないミオンに、アヤメは突然と一枚の手紙を声に出して読み始めた。

「"余計なお世話かも知れませんが、疲労によく聞くお茶をお付けしておきました。休憩時に是非飲んでください"」

戸惑う団長を置き去りにし、アヤメは手紙を最後まで読み切る。内容の真意とは裏腹に、笑顔な彼女がそこにはいた。

「ミオンはもう少し周囲の方々に目を向けるべきですよ?あなたのことを、こんなにも心配して……思っている人達がいるんですから。もちろん、私もその一人です」

「あ、アヤメ様……」

「と、いうわけで、少し休憩しましょうミオン!私がお茶を入れますね」

「そ、そんなっ!私が…………、いえ、それではお願いします」

「ふふ。今日くらいはそのままでいてください」

先程の会話を得て、ミオンはこれ以上アヤメに心配をかけては行けないと理解した。

その長い思考の中には、王女様の入れたお茶が飲めるという、絶対にバレては行けない欲があった……のかも、本人にしか分からない。


「ミオン団長?本当にこれで魔法を防ぐことが?」

「私が最も信頼する道具屋に頼んだ物だ。正直私も驚いているが、きっと依頼通りの出来になっているのだろう」

壁内の庭で、副団長シモンと団長ミオンが話し込んでいる。内容は言わずもがな、城壁への魔法対策。

彼に頼んでいた品が届き、検討しているところ。

届いた品は、ミオンの想像の遥か右を行く物で、それが数百個、丁寧に袋にびっしり入った状態。

金額はともかく、この短期間に作ったという事実と、その形状に驚くのは無理もない。

「しかし…一度試してみる必要はありそうだ」

「そうしましょうか」

彼らが手にするそのビンの蓋には、こう書かれていた。

"魔力吸収()()"と。


訓練施設には、様々な武器や防具が常備されている。

現在シモンが手にしている盾も、対魔獣の練習用に作られた大盾である。

「この前面に塗った。後は誰か軽く魔法を撃ってくれればいい」

「それは僕がやろう。盾はそこに立てかけてくれ」

「助かる」

吸魔草を使っているが素肌に触れて害はない。

制作者の腕の賜物である。

「行くぞ」

「あぁ」

二人しかいない広々とした空間で実験。

「"エクスジオ"」

唱えた彼の手先から人が走る程度の速さで赤色のモヤが放たれる。

それはただ直進し、例の盾に着弾。

「「……………」」

無言、静寂。

何も起こらないまま、短い時間が経過する。

「すごいね。本当に魔法が無力化した」

「第三者から見ても、いまいち分かりにくかったが」

「しっかり魔法は当たったよ。もしも無力化されなければ、その盾は今頃粉々だ」

「シモン副団長の魔法を無力化したとなれば…」

「充分に実用可能ってことだね」

「早速外壁に塗らなくては。空いている騎士団員に招集をかけ、できるだけ早く安全を確保する」

「了解」

シモンはにこやかに返答し招集をかけに立ち去る。

練習用人形に立てかけられた大盾を見て、ミオンは1人、大変驚いていた。

「頼んだ側だが……彼にはいつも驚かされてばかりだ。そのうえ気の遣い方も上手いとは、恐れ入る」

それは塗料の入った袋、これを詰めてくれたであろう人に対する、独り言だった。


この日から数日間、王城の外壁に、何人もの騎士団が何かを塗りまくる様子を見ることになる。

街では密かに、団長を怒らせた騎士団への罰なのではないか……などと囁かれていた。

どうも、深夜翔です。

慕われる人は、自分が感じている以上に周りから心配されているものです。

優しい人の周りには、それ相応の方々が集まるみたいですね。日頃、騎士団員や王女様の苦労が伝わったでしょうか。

伝わっていたら嬉しいですね。

適度な休憩。お忘れなく。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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ではまた次回……さらば!

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