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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第一章 : 街の小さなアイテム屋さん
37/84

大事な下準備

「うーーん………えー……」

「……にぃ…どう……した…の?」

「セイちゃんが悩むなんて珍しいわねー。何を作ってるの?」

「『短時間で魔法を無効化する何か』かな。依頼されたモノなんだけど、こう……発想っていうのかな?いつもみたいにぱっと思いつかなくて」

「ありゃ我儘騎士の無茶ぶりってやつだ。完成しなくても誰も文句は言えない代物だぜ」

「魔法の無効化ねー。魔法最大の対策でもあるけど、裏を返せば魔法最大の脅威よね」

そう。

魔法の無効化は、魔法という概念が存在するこの世界において、最も脅威となる。

地球には機械、科学という自然のエネルギーやそれらを応用した物を使って生活するように、この世界では魔法がその役割を果たしている。

それを無効化……消し去るということは、世界の危機を意味する。

そのため、魔法の無効化には大掛かりな魔法や魔道具が必要という世界単位での調整(ゲームバランス)が成されているのだろう。

それを壊さないためには、()()()()()()()()()()()

手軽に魔法を無効化できる。

しかし、それ相応の欠点がある。

この制作に求められているのは、そのバランスだった。

これがかなり難しい。

誰かに意見を貰うことも考えた。

が、アルゴートさんならまだしも、母様とナツには……あまり期待できないのが事実。

悲しいことに。

「にぃ、てん…さい。きっと……できるっ」

「ほら!!コナツがこう言っているんだから、頑張って!!」

そもそも協力しようという考えが無い。

丸投げ。

いつもの事だけれど。

唯一頼りにできるアルゴートさんは…

「エルフって種族は、他の種と比べても魔法の依存度がかなり高い。俺自身も魔法と共に暮らしてきたみたいなもんだからな。それもあってエルフの掟みてぇな物に、魔法の無力化は禁忌って暗黙の了解があるんだ。協力してぇのは山々だが……悪いな」

至極当然の理由で断られた。

同胞を脅威に晒すかもしれない魔道具の制作に関わりたくはないだろうから。

「いっそ反射でもしてみるのはどう?」

「それは思ったけど、城下町に隣接する王城だよ?城壁から無差別に反射なんてしたら、それこそとんでもない被害がでる」

「あーー、あまり想像したくないわね」

「だい…さん……じ」

「んーーーー」

結局一人、机に座って頭を抱えるしかない。

壁……無効化…簡単………壁?

ダメだ。

外を散歩でもすれば、考えも多少まとまるだろうけど、さすがに夜に出歩くのは宜しくない。

「それよりもセイちゃん〜、私はお腹が空いたわ」

そんな中、こちらの事情はお構い無しに、母様が緩く提案してくる。そういえば夕食を作っていなかった。

今更ながら僕自身もお腹が減っていることに気がつく。

「はぁ…腹が減っては戦はできないか」

一度考えることを諦めて席を立つ。

「あ!そうだわ。話は変わるのだけど、外に置いてあるバケツが錆び付いていたの。新しいのを作ってくれる?」

キッチンに移動した僕に、母様が会話の流れを一切無視した話題を振ってくる。

話、変わりすぎでは?

「バケツって、いつ使ったのさ。母様が外に行くなんて」

「私って……そんな引きこもりみたいに思われてるの…?」

「はははっ!師匠は引きこもりだr」

「アルはお黙りなさい」

金属製の道具は、この森と相性が良くない。

霧に覆われていたり、太陽の光が差し込みにくかったり、小さな泉が点在していたりと、湿気った場所が多いからだ。

普段あんまり森に用がないから、外で使う道具を気にしていなかった。錆の対策をしておかないと。

「錆…か。湿気対策に外側をコーティングすれば………」

その時。

自分の言葉にひらめきを感じて手を止めた。

外側をコーティング……。

道具に直接…塗る?!

「これだ!!!」

パズルのピースが上手くハマったような気持ちよさ。

今まで悩んでいたのが嘘のようにスッキリとした気分。

後は素材を集めるだけ。

しかし僕は、感情だけで体が勝手に動くほど脊髄だけで行動はしない。

止めた手を慎重に動かしながら、頭の中で必要な素材を取り揃えていく。

(吸魔草は……森に生えてたよね)

今日は唐揚げにしようと思う。

(それだけじゃ効果が薄いし…効果増強剤的な薬も欲しいかな)

手元では鍋を用意して肉と油とを手際よく準備する。

(入れ物にも何かしらの付与があれば……いける!)

「できた!」

「からあげ…だっ」

「お〜さすがセイちゃん!」

ちなみに、お肉の下準備は予めやっておくのをおすすめするよ。僕は朝のうちにやっているからね。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「相変わらず素直じゃねーな師匠は」

「…なんのことかしら」

子供たちが寝静まった夜のこと。

森の中の一軒家の一部に灯りが灯っている。

「しらばっくれんな。あの会話の流れで、バケツを思い出すわけが無い。違和感しかなかったぞ」

「セイちゃんはすんなり受け入れていたけれど」

「あれは諦めてるというか……適応力が高すぎるっつーか……。師匠がそういうもんだと呆れられてんだよ」

「わ、失礼ねー」

「そういうとこだぞ」

ため息をつくエルフの男。

「普通に助言してやればいいってのに。悩んでる息子の顔を見て笑ってんの、悪趣味にも程がある」

「いつも簡単にいくとは限らないものよ。なんでも出来ると思ってはいけないから」

「まー、師匠なりの考えがあるのならいいけどよ」

「それにコナツにはバレていたみたいだし」

「察し能力は妹の方が上ってことだな」

窓から見える静かな森。

兄妹の成長を見守る保護者たちの、短い時間が過ぎていく。

どうも、深夜翔です。

何事もにも、基礎や事前準備が必要になります。

正確には、しておいた方が後々便利になったりスムーズに事が進むのです。

設計図、作成前段階の思考もその一つに入るのではないでしょうか。

そこに悩む兄の姿はいかがでしたでしょうか。

珍しいこともたまにはあります。人間ですから……ね。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って頂けたら、感想や評価、Twitter(@Randy_sinyasho)のフォローをよろしくお願いします。

ではまた次回……さらば!

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