入団試験
「ここは衣装室ですね!お城でのパーティや、他国との交渉などが行われる際に着るものが収納されています」
「お嬢様、あまり廊下を走るのは宜しくないです」
「そういうミオンだって、よく廊下を駆けているではありませんか」
「あれは緊急の要件が…」
「ふふっ、冗談です。少しはしゃぎすぎてしまいました」
僕らの先頭を楽しげに歩くアヤメさん。
いつも以上に動きが活発なのは、お城の中だからだろうか。
「ナツちゃん!!何か着てみたい服とかありますか?」
「……んん。この服……にぃが…え…だ……から」
「ナツ、どうしたの?」
「な……んでもっ……ない」
ナツに顔を背けられてしまった。
「仲のいい兄妹で羨ましいです……。ナツちゃんはセイタさんのこと大好きですね!」
「僕だってナツのこと大好きだよ」
「〜〜〜〜っっ?!」
「ちょっ…な、何?!」
「あららー」
素直な感想を述べたのに、何故かナツに叩かれる。
表情を見ようにも目を合わせてくれないし……間違ったことを言ったのかな?
アヤメさんに助力を求むも、優しげな目で笑われてしまう。
………しばらくはこのままかも。
「最後に、ここが私の自室です!!ちょうど入団試験が始まったみたいですよ!ここからなら上から見ることができます」
「今年は実力者も多いと聞く。優秀な者が合格してくれるといいのだが」
「今年もきっと大丈夫です。騎士団の皆さんはとってもいい人ばかりですし」
アヤメさんの自室には大きな窓があり、先程通ってきた庭や訓練所を一望することが出来た。
外には入団試験者たちが一生懸命試験を受けている様子が見て取れる。さすが国の中心とも呼べる城の騎士団希望者、皆が皆、剣の太刀筋が綺麗で動きもいい。
素人の僕でも分かるのだから、試験官の騎士団の人達は選抜が大変だろうな。
「ミオン大変、あそこ!」
「む、喧嘩か?この入団試験会場で騒ぎとは……一体どんな輩なのか」
「口が悪いですよミオン?止めに行かなくてもよろしいのですか」
「……案内を途中で放置するのはいささか不満があるのだが……お嬢様、少しの間よろしくお願いします。二人とも、すまないが少し行ってくる」
「はい、ミオンさんも気をつけてください」
「あの程度の喧嘩など、何も問題は無い」
「気をつけてくださいねー!」
そういうと、颯爽と部屋から出て行ってしまった。
今さっき廊下を走るのは……見たいな話をしていたような?緊急で時間も限られているし、仕方ないだろうけど、アヤメさんにまた反論されそうだ。
「……にぃ、…あそこ……」
「うん、何か企んでるねあれは」
その間、ナツは外の様子を見続け、ある数人のグループを指さした。あとから見た僕にもひと目でわかった。
喧嘩とは真逆の位置、城壁の木の影で何かコソコソと動いている怪しい人の姿が。
「どうかしたのですか?」
「あ、いえ……これだけ人が入っていると、騎士団の方々も警備が大変そうだなと」
「騎士団の皆様にはとても苦労をかけています。私もよく遊びに行くのですが、毎日厳しい訓練をして、警備のお仕事も……私から見ても大変だと思います」
それでも……と彼女は言う。
「騎士団の方々の頑張りがあってこそ、この国が成り立っていると言っても間違いではありません。ですから私に出来ることは、大変ですねと同情する事ではなく、その頑張りに応えられるように私も努力することだけです」
アヤメさんのその言葉は、決して上辺だけのものではない。王族としての覚悟や、皆の上に立っているという事実を持っていた。
そう感じるほどに、彼女の言葉には重みと信念が詰まっていた。
「アヤメ……頑張って………る」
「ナツちゃんっ!!」
「…やっぱり、うそ……」
褒めて伸ばすことに失敗したナツが、案の定アヤメさんに抱きつかれる。
負けじと反撃するナツだが、彼女のメンタルの前には無に等しい。
「アヤメさん、少しだけ席を外してもよろしいでしょうか?」
「え?は、はい…大丈夫ですけど……どこへ?」
「トイレに行きたくて」
「あっ、わ、私ったら失礼なことをっ!すみませんっ」
「大丈夫ですよ。少し失礼します」
彼女のことはナツが何とかしてくれるはず(たぶん)。
僕はその間に、来た道を引き返して庭へと向かった。
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「…ここからなら」
「あぁ、これで……ー…様の役に」
「こんなに簡単に乗り込めれるなんて、この国は騎士もこの程度か」
背後から近づく人影に気が付かないほど、彼らは夢中になって話し込んでいた。
「トーマス、ここはどうすればいいんだ?」
「………」
「トーマス?」
僕に気がついたのは、既に5人のうち二人が意識不明の状態に陥った後だった。
「なっ?!お、お前っ」
「"スリープ"」
反撃される前にさらに1人。
「なにをしてるんですか」
「な、何者だお前っ!」
「何しやがる!!」
「それはこちらの質問なんですけど……」
僕は眠らせた一人を地面に寝かせ、すぐさま"テレポート"で残り2人のうちの小柄な方の背後に回り、後頭部に手刀を入れる。
「グハッ」
手刀で気絶……と言うよりは、ただの催眠魔法を後頭部に押し付けただけ。
状態的には混乱に近い。
「このまま自分で話してくれると助かるんだけど…、とりあえずミオンさんのとこに連れて行くよ」
「ちっ…こんなところで邪魔される訳には行かねぇん
「"バインド""魔封じ"」
「むぐ……ん〜っ?!んーーーっ!!」
魔法を使えなくし、5人全員を魔法で縛り上げる。
効果はかなりの時間永続する。
(……誰かに見つけてもらうのが楽なんだけど…ミオンさんを探した方がいいよね)
このまま放置しても、余計な面倒事が増えるだけだと思い、僕は庭に来ているはずのミオンさんを探しに人混みの中を進んで行った。
どうも、深夜翔です。
皆さんはお城、好きですか?
お城と聞いて、どんな場所を想像しますか?
今回、読んでいただければ分かるように、あれだけ大きなお城にも、誰かが住み、管理し、生活を営んでいるのです。
もしも巨大なお城のある世界に行った時、そこにはそこら中から生活感が溢れでていることでしょう。
それを感じていただけたなら、嬉しいです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




