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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第一章 : 街の小さなアイテム屋さん
33/84

城内見学

「はい。これで全部です」

僕は作ってきた木刀を目の前の女性に手渡す。

「ありがとう。本当は私が取りに行くべきなのに、わざわざこんな場所まですまないな」

「大丈夫です。金属の剣と違ってそこまで重くないですから」

「そ、そういう問題では無いのだが……」

騎士様が複数の木刀を受け取る。

背後には王城に続く大きな橋と、この国の象徴とも言える巨大な王城。普段はお店でしか姿を見ないためか、こうして見ると本当に騎士様なんだと謎の納得感があった。

「それにしても凄い数ですね」

そんな橋には現在、入団試験応募者が続々と王城内へと入っていく様子が見られる。

入団試験には、予めこの日に受け取る書類を持参しなければ、試験を受けることが出来ない仕組み。

願書提出…?そんな感じ。

そして僕横で、先程から上を見上げて黙っていたナツ。

「……おおきい…お城…」

ふと、感動に近い声をあげた。

基本的に外には出ないし、僕のお店のある辺りでは遠すぎてその大きさを感じにくい。

ナツにとっては初めて見るも当然なんだ。

「だね。間近で見ると凄く大きい」

「ふふっ。この国で一番偉い国王がいる場だ。それに相応しい建物だろう」

「…ん、おうさま……すごい。お城も…すごい」

珍しく、ナツが興味を持っている。

その事実に嬉しさを噛み締める。

「………」

「あの、黙って見つめられるとさすがに恥ずかしいと言いますか…」

「あっ、すまない!そんなつもりでは…」

喜ぶナツとそれを嬉しがる僕を何も言わずに見ていた騎士様は、またしばらく黙った後、こう言った。

「入団試験は4日後だ。その日なら、城内に入っても問題無い。私は審査員ではないから自由に動ける」

「それって…」

「4日後、城内を案内してやろう」

「ほんとですか?それは嬉しいですけど…」

「心配は無用だ。業務に支障は無い。むしろ、あの時助けてもらったお返しができるのであれば、こちらからお誘いしたいほどだ」

「そんなことはっ……いえ、それじゃぁお願いします」

ナツが嬉しそうにしているんだ。

ここで断ることは出来ない。

せっかく騎士様が快く案内してくれるというのだから、今回はそれに甘えさせてもらうことに。

「では4日後、ここで待ち合わせよう。木刀、助かった」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「二人とも!待たせてすまない」

「大丈夫です。僕らも今来たところですから」

入団試験当日。

4日前は店の依頼ということで普通に会っていたものの、今日は試験者では無いので目立つ可能性があり、僕らは普段着ないような服装でやって来た。

一見普通の服装だけれど、魔力遮断と認識阻害魔法が付与されているので、魔力は漏れないし、魔力を通せば姿を隠すこともできる。

「残念だが、城内部には関係者や城の一部の者以外立ち入れない場所も多い。そこは勘弁してくれ」

「こうして案内していただけるだけで充分ですから。そんなに申し訳なさそうにしなくても」

「ん……」

「そうか。では中に入ろう。入団試験で人が多い、はぐれないようにだけ気をつけてくれ」

そんな騎士様の後に続き、僕達は初めてお城の中に足を踏み入れた。


入ってまず初めに感じたこと。

それは、『壁の外と内で世界が違う』ということ。

そして、

「庭が広いんですね……お城と同じくらいの広さだ」

「すごい……ひろくて………人がいっぱい」

「ははは。試験会場はあっちの騎士団の訓練所だが、ここよりもたくさんいるぞ」

人の多さに少し日和るナツに対し、騎士様は慣れた足取りで人の隙間を縫って通っていく。

日頃から体を動かしているかの差が歴然としている。

「まだ始まったばかりだから入団希望者が大勢いるみたいだ。先に城の中を案内しよう」

「お願いします」

人混みを避けるように、広い庭を迂回して正面玄入口へと向かう。真ん中には大きな噴水があり、その入口も見上げるほどに大きい。

「見ての通りここが城の入口だ。大広間に繋がっていて、そこから会議室や玉座の間に行ける。各部屋にも繋がる廊下があるが、そちらは別の入口を使用した方が早いだろう」

「おうさま……こわい?」

「国王様はとても優しい。誰にでも優しく、守るための知識と実力がある、尊敬できる御方だ」

「ミオン…も……やさしい」

「そ、そうだろうか?」

ナツが褒める姿も珍しい。

そして、騎士様は照れている。

そんなやり取りをしつつお城の入口を横切り、もうひとつの入口……裏口というより二つ目の出入口のよう…を使って中に入った。

「ここはメイドや料理人、あとは警備の騎士団の人がよく使っている。……お嬢様が脱走する時もここが使われる」

「だ、脱走って……」

「城の中でじっとしていられる性格では無いのだ。城の皆からも愛されているため、見つかってもさほど意味をなさない」

「あ、そういえば初めて会った時も……」

「よくある事だ」

「よ、よくあっていいのかな……」

そのまま、キッチンや倉庫、使用人たちの部屋や着替え部屋など、たくさんの部屋の前を通り過ぎて2階に上がった。

「ここは図書室。国中の書物がここにある。恐らく国内で最も書物が置いてある場所と言えるだろう」

「す、すごい……」

もはや声にならないほど巨大な空間。

そこにびっしりと詰まった書物の数々。

頭上にはただの図書室という一室に、反対側へ移動できる橋がかかっている。部屋に橋?と思うだろうが、見たままの事実である。

「……となり…は?」

「あぁ、そっちは自習室だな。基本的に王子と王女たちが使われている。……ん?そういえば今日のこの時間は…」

「あーーーーーっ!!!ナツにセイタさんではないですか!!何故ここに?」

「お嬢様……自習の時間では?」

「そうですよ!休憩中にお二人の声が聞こえたような気がしたのでつい」

「おはようございます、アヤメさん」

「……ん」

「か、可愛い…可愛らしい服装ですねナツ!!!」

「んぁ〜」

「お嬢様、嫌がってますよ」

「ハッ?!す、すみません……」

いつものようにナツを抱きしめている。

お城の中でも外でも、あまり変わらないようだ。

皆から好かれているというのも頷ける。

「それで……お二人はなぜ?」

「この間のお礼に、お城の中を案内しているのです。興味がおありのようでしたので」

「それなら私もっ!」

「勉強はどうするのですか」

「そんなものは後です、後。友人との交友の方が大切でしょう!!」

「また勢いだけで押し切るつもりですね……。こうなると止められないのですが、お二人共構いませんか?」

「むしろ、お時間を取らせてしまってすみません」

「それは違います!優先順位というものですから」

「べ、勉強もしっかりしてくださいね?」

こうして、お城の見学にアヤメさんが加わることになった。騒がしさが増す中、さらに案内は進む。

どうも、深夜翔です。

ファンタジーな世界の本物のお城。

それも、国王様の住まう場ともなれば、その大きさは想像を絶するものでしょう。

興味が湧くのも仕方がありません。

ここまで楽しそうにしているナツは、かなり珍しいですよ?


次回は、見学の続きに入団試験……事件の香りも?


ここまで読んでいただきありがとうございます。

面白いと感じて頂けたら、感想や評価、ブックマーク登録をよろしくお願いします。

Twitter(@Randy_sinyasho)もやっているので、そちらのフォローも是非。

ではまた次回……さらば!

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