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街の小さなアイテム屋さん  作者: 深夜翔
第一章 : 街の小さなアイテム屋さん
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再会②

翌日は空一面を灰色の雲が覆う微妙な天気だった。

起きてから数時間。

店の中から見える外の景色には、雨の様子は描かれていない。

しかしどんよりとした曇り空に、この気温の低さ。

こんな日は普段より来店数は少ない。

振り返れば、レジ横の定位置でナツが寝ている。

とはいえゼロではない以上、商品の整理をしながらのんびりと過ごしていた。

「おぉ、これは……。こっちも初めて見るぜ。…何だこれ?!どうやって使うんだっ?」

……静か、では無いけれど。

「あ、アルゴートさん。他のお客さんが来てる時は歩き回らないでくださいね」

「おう、分かってる。商売の邪魔はしねぇよ。…うわ、こっちも面白ぇ形してんな!」

アルゴートさんは、この街にしばらく滞在することにしたらしい。今日は朝からずっとあの調子で、店内の魔道具を見て回ってはしゃいでいる。

製作者としては直接褒められているようでむず痒い。

が、いち店員としては、営業中の店内で騒がれるのはあまり好ましくない。

……ナツが寝ているし。

(お客さんなんていないじゃん…って言われたらそれまでなんだけどね)

レジ台のあるカウンター席に頬杖を付いて、一度整理した店内を改めて眺める。

「あれ?」

僕が彼女に気がついたのと、カラカラと入口の扉に付いていた鈴の音が鳴ったのはほぼ同時だった。

「ミオンさん。おはようございます」

「あぁおはよう。突然すまないな」

「いえ大丈夫ですよ。見ての通りお客さんはいませんから」

「ん?客ならそちらにひと………き、貴様はっ」

店にやってきた騎士様は、アルゴートさんの顔を見て驚きの声を上げる。咄嗟に指さした腕は、心無しか少し震えている。

「んぇ?」

対するアルゴートさんは、彼女が入ってきた事に気が付かなかったようで声を聞いて大層間抜けな反応を返していた。

「何故貴様がここにいるっ!!アルゴート!」

「声がでかい客だn……ん?お前は………」

しかし何やら知っている様子。

「あの時の脳筋剣士!」

「うるさい黙れっ」

おおよそ女性に言ってはいけない覚え方に、さすがの僕もジト目を向けた。

「何故…どうしてこいつがここにいるんだ少年!」

騎士様は顔だけこちらを見やって言う。

「な、なんと言いますか……こちらの事情で助けていただいきました。しばらくこの辺りに滞在するということなので、こうして僕の店に案内したんです」

「……そうか。すまない、取り乱した」

「大丈夫ですけど…お二人は知り合いだったんですね」

「私は知り合いたく無かったが」

「何を言う。どうしても魔法が使えるようになりたいと押し掛けてきたのはそっちだろうが」

「あの時はまだ理解していなかったのだ。人に物を頼むにも、相手をよく選ばなければならないと…」

「全く…酷い言われようだぜ」

「当たり前だ!人が頼み込んでいるものを、『お前は才能が無いから剣でも振ってろ』などと追い返す教師がいるかっ!」

「あれは事実を言ったまでだ。魔法の適性が無い者がいくら時間を使っても無意味」

あのアルゴートさんが、そんな事を言うなんて……。

騎士様の戦いを見ればわかる通り、物凄い剣の腕を持っている。それは才能と剣にかける膨大な時間の努力があって初めて為せる………

(そうか)

アルゴートさんは、剣の才能がある事を見抜いていたんだ。だから、ワザと…?

「ツンデレなんですね」

「「は?」」

「え、あっ、いえ!その……アルゴートさんは教師を成されてたんですか?」

何故か二人からキレ気味の返答をされ、慌てて話題を変えた。…なんでだろう?

「まぁな」

そして歯切れの悪い返事。

なんだろうと純粋な疑問を、騎士様に視線を移すことで解決に促す。

「こいつはこの国最大の魔道学院、第一魔法研究学院の理事長だ。とは言っても、姿を見せるのは数年に1度。ふらっと現れては何もせずいなくなる。栄えある学院の創立者とは思えない」

この情報にはさすがの僕も驚いた。

だって1度もそんな話を聞いたことが無かったから。

そんな念を感じ取ったのか、アルゴートさんは笑って

「だって聞かれてねぇからな」

と一言。

なんというか、食えない人だ。

「それで、お前はどうしてここに来たんだ?」

「そうだ!貴様のせいで忘れるところだった。少年に頼みたいことがあってな」

「僕に?」

「あぁ、実はもうすぐ騎士団の入団試験が始まるのだが、実技用の木刀が足らない。作っては貰えないだろうか」

「大丈夫ですよ。先に本数と期限だけお伺いしても?」

「本数は5本、出来れば来週までにお願いしたいのだが……」

「はい。確認しました」

入団試験の剣ならば鍛冶屋なのではと一瞬感じたが、木刀であれば僕の専門で間違いない。

依頼としてメモをしておく。

「来週……入団試験。もうそんな時期か、俺もたまには顔を出しに行くかな」

その会話を聞き、アルゴートさんが小さく呟いた。

「ほんとうだサボり魔め。学院の卒業試験くらい、理事長の貴様が顔を出せ」

騎士様の発言からして、本当に稀にしか顔を見せに行かないらしい。学院の理事長……学校の校長先生って感じかな?

卒業試験や入学式には立ち会ってあげて欲しいけど。

アルゴートさんは多分気にしてないだろうなと、これまで一緒に居てそう思った。

……でも、魔法が好きなら見たいとは思わないのかな。

「俺は、地位やら権力で成り上がった貴族の子ども共が、なんの研究もせずに既存の魔法を魔力の限りぶっぱなすところなんざ見たくねぇんだよ。

一体なんのために学院を創ったと思ってやがる。

権力者の実力を見せびらかすためじゃねえっての」

あ、そういうことか。

質問する前に、自分で答えてくれた。

これは僕の想像でしか無いけれど、立派な学校にはそう言った偉い人が集まりやすい。

力を見せつけるいい場だから。

昔に読んだ小説にも、そんな描写が描かれていた。

「あんな学院に引きこもるくらいなら、セイタと一緒にいた方が何倍も楽しいってもんよ」

「……それには少し同意だな」

渋々ながらも、騎士様すらも同意する。

何となく、過去に苦労してきた感じが伝わってきた。

「あっ……雨」

そんな彼女の心情を現すかのように、外はどんより曇った空から冷たい雨が降っていた。

この様子ではしばらくは止みそうにない。

「えっと、休んでいきますか?」

「はぁ、すまない。お言葉に甘えさせてもらおう」

過去でなくとも、休みたい日はあるだろう。

昨日は休日のようだったけれど、病み上がりに休日が一日だけでは疲れも溜まる一方。

「何か飲み物用意しますね」

たまには雨も、いいのかもしれない。

どうも、深夜翔です。

まさかの魔法オタクのアルゴートが、有名学院の理事長でミオンとも知り合いだったとは。

意外な組み合わせもあるものです。

それも、立場的には生徒と教師。

そのうち面白い話が聞けそうですね。

次回は、話題に上がった入団試験のお話です。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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ではまた次回……さらば!

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