再会①
僕は1人、街の片隅の路地で箒を動かしていた。
現在太陽が狭い路地も照らす昼過ぎ。
今日はお店は休みなので、一週間空けていた店内や店周りの掃除をしているのだ。
ナツはというと、長い移動に疲れて森の自宅で睡眠中。
「ふぅ…この辺りは終わりでいいか」
箒……といってもこれも魔道具としての改造がされた物。埃や落ち葉などが箒の先に付きにくく、かつ持ちやすいように重さを調整できる機能付き。
見た目は学校で使う竹箒そのままだけど、竹…は僕の知る限りこの国には出回ってないものらしいので、竹に似た素材を探してきた。
個人的にはかなり満足している。
店内の掃除は雑巾やもう少し小さな室内用の箒を使う。実はこっそり、元の世界で見たことがあるル○バ的なお掃除機を作ってみようかなと考えていたり。
「んーーっ。日差しが暖かいや」
軽く背伸びをしてみる。
今ならナツが眠くなるのも分かるような気がした。
お店の扉に寄りかかり、一息着いてふと路地への入口へと視線を動かした。
すると、向こう側から歩いてくる二人の人影を見つけて視線を止める。
「あっ!セイタさん!!帰っていらしたのですね!」
「アヤメさんにミオンさん。お久しぶり…でも無いですね。ミオンさんも無事なようで安心しました。本当はお二人の無事を確認してから外出したかったのですが、急な用事が入ってしまって……」
「ああ、君のおかげでこのとおり。お嬢様に魔道具を作っていただきありがとう。お礼を言いたくて待っていたのだ」
「いえ、そんな……自分もご一緒出来れば良かったのですが。ところで、こんな時間に…どうしてここへ?」
「はい!偶然です!」
「ぐ、偶然…?」
元気いっぱいの嘘を感じられない声色で、彼女はそう応えた。
「お嬢様、省きすぎです。私から説明させてくれ。…といっても、今日は私の休暇日でお嬢様と街を回っていた。その途中に帰って来ているかと様子を見に来た次第だ」
「わざわざすみません。余計な手間をかけさせてしまったみたいで…」
「そんなっ!助けられたのは私たちの方ですから!」
二人が無事なのをこの目で確認し、少し安堵する。
いくら母様から大丈夫だと聞かされていても、やはり心配はしてしまうもの。
実際に会うことで、その心配は消え去った。
「ところで……その…」
アヤメさんが周囲をキョロキョロして、少し恥ずかしそうに尋ねてきた。
「あ、すみません。ナツは帰ってきたばかりで疲れているみたいで、自宅で寝ています」
「えっ?!な、何でばれっ」
「あはは。何となくです」
「お嬢様……顔に出ておりましたよ」
「うぅ……恥ずかしいです」
静かな路地裏にも、時折こうした明るさが舞い降りる。
それがまた、僕にとっては心地よい。
「ところで…お二人はこの後も予定があるのでは?」
「私たちですか?そ、そうですね……」
「これ以上お邪魔するのは申し訳ないですし、僕もこのあとまだやる事がありますから、この辺りで」
「あ、はい!改めてありがとうございました!」
「はい。僕の方こそ、ここまで来ていただいてありがとうございます。では」
お二人のデートをこれ以上邪魔はできないかな。
おそらくこっちから話題を切り上げないと、あのまま話が続いてしまっていた。
僕は一度頭を下げ、箒を持ってお店の中へ引き上げて行った。
あとに残った二人はと言うと……
「気を遣わせて……しまいました?」
「の、ようですね……」
「……い、行きましょうか…ミオン」
「はい。アヤメ様」
そんな彼の行動を、理解出来てしまっていた。
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さて、時間は戻って。
こちらは師匠と弟子の話。
「んで、この手紙の内容は本当なのか?」
「私が嘘を着いたことある?」
「むしろ嘘つきのイメージしかないが。よくそれでそんなにドヤ顔できっ」
「全くー!生意気なのは相変わらずね!」
アルゴートの返事に、拳が先に入る師匠……母様。
現在二人がいるのは、自宅のある迷いの森。
その中心部に位置する泉の近くだ。
「森の結界の効果が薄れてきているのは事実よ。外からの侵入者が増えているのが何よりの証拠。まだ効果範囲が狭くなってきているだけだから、森に被害が出たってことは無いけれど」
「そういう精霊たちの身の危険があることは、早めに対策しておきたいってことだろ。……ま、師匠にも守りたいものができたってことか」
「なーに?その意味ありげな笑みは」
「いや。あの大精霊様に子どもができるとは……時代は変わるって事か」
「バカにしてる?」
この弟子と師匠。
言い合う姿はまるで親子。
泉に群がる小精霊たちも、何やら呆れたような動きをしているよう。
「アルにしか使えない魔法でさえ無ければ、私がチャチャッと治したのに」
「族性魔法の宿命だぜ。諦めて弟子を頼りやがれ……って、ん?知らねぇ付与が…」
「あぁ、それはあの子がこの森に来た時に付与した結界よ。森の中にいる特定の生命の魔力を底上げする魔法。この森の中に入れば、私たち精霊の魔力は通常の二倍以上ね」
「……さすがに言葉にならねぇ。なんだそのぶっ壊れた才能はよ」
「全部ナツのためだって。妹が大好きなお兄ちゃん、いいじゃない」
「はー、親バカもいいところだぜ」
驚いたり呆れたり。
適当なやり取りをしながらも、アルゴートは壊れかけの結界を手際よく治していく。
この巨大な森を覆う結界。
そんな大規模な魔法を、この短時間に編み上げる技量の高さ。彼ら兄妹を見ていなければ、これでも充分に天才である。
「ほらよ。これで数百年は問題なく動くはずだ」
「ほんと、種族なんてもの、なんのために作り出したのかしら」
「んなもんこの世界を作った野郎にでも聞きやがれ」
「できるのならそうしてるわよ。神なんて、使い物にもならない」
「…"神殺しの英雄"様は言うことが違ぇぜ」
「怒るわよ」
「はいよっと。せっかく来たことだし、少しの間ここで過ごすかな」
「帰ってもいいんだけど」
「呼びつけたのはそっちだろ!」
言い合いが止まらない師弟。
騒がしい二人の周りに、小精霊が楽しそうに飛び回っていた。
どうも、深夜翔です。
実に数話ぶりの登場になりました姫と騎士。
待ちに待った少年との再会。
さらに、師匠と弟子の数百年ぶりの再会。
また、次回は彼と彼女らの思わぬ再会が…?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




