それぞれの戦い方
「"迅速なる弾丸"」
魔物との戦闘に入った三人の中で、セイレーンに向かっていったのはセイタだけだった。
音による攻撃は聴いていない。
ゴーレムと同じように攻撃を仕掛けるが、ナツの補正が無い魔法はお世辞にも命中率が高いとは言えない。
それでも魔物の中央引きつけるには十分過ぎる威力だ。
「キキュ…」
しかし、セイレーンの攻撃は何も音だけではない。
元が水霊族の名の通り、水属性の魔法を使用してくる。それも自身の強化魔法の付与が成された魔法を。
「"氷結"!」
セイレーンがセイタに向けて放った魔法"水柱"は、彼の背後から放たれるもう一つの魔法によって為す術なく霧散されていく。
水属性の対策はと聞かれた場合、答えは決まって"水属性"。水を凍らせる事ができるのもまた水属性魔法だからだ。
セイタはまるで、それが分かっているかのような動きでセイレーンに攻撃を続けいていた。
念の為に再度伝えておくが、彼女らは今、何一つ音が聞こえない状態で戦っている。
「はぁっ!」
自身の魔法が氷漬けにされて驚いているセイレーンの隙を付いて、セイタがセイレーンの核を蹴りつける。
「キキキ…キュガガガァァ」
蹴りつけた位置は完璧だった。
当たった手応えもあった。
だがその手応えはまた別のモノ。
(核を守る防壁……やっぱり通常の攻撃程度じゃ壊せないよね)
一般に、魔物の核は簡単に破壊できる。
人間の心臓と同じようなものだからだ。
しかしボスの場合はそうもいかない。
核から発生する魔力を最大限活かすため、身体の目立つところに核があり、代わりにその核を守る強固な結界が常時展開されている。
本来はボスに攻撃を与える事で、その治癒に魔力を割いている間に核を破壊するのが鉄則。
もしくは、倒された狂人狼のように、人体…生命活動において致命的な部位の欠損や損傷をする。
魔物や魔獣にはこのような倒し方がある。が、超高速回復をする相手にはどちらもかなりの難易度であることは変わりない。
「キ……ピァァァァァァ」
耳栓をしている彼女らには聞こえないが、セイレーンが今まで発した事の無い声を上げた。さらに、その声に呼応するように地面が揺れる。
それは徐々に壁へと伝わり、一際大きく揺れた時、壁から2体の魔鉱石ゴーレムが壁を破壊して現れた。
それも通路で倒してきたモノもは桁違いに大きなゴーレム。広い空間とはいえ、この大きさのゴーレムが二体ともなればかなり回避に制限がされてしまう。
ゴーレムもまともな攻撃はできなさそうだが、その巨大な体でセイレーンの前に立ち塞がる。
(これじゃ攻撃場所を視認することが出来ない)
「キキュ……」
「ニアっ!!」
セイタは魔法の発動と同時に、ニアを抱えて壁に向かって回避する。すると、数秒前までニアが立っていた位置に巨大な水柱が現れる。
(発動場所が分からない……魔法の妨害が攻撃速度に追いつかないか)
ニアがセイレーンの魔法を発動前に霧散できたのは、彼女の眼によって魔力の流れを読み、だいたいの魔法発動位置を予測していたからだった。
(ならゴーレムを倒すのが優先だ)
そう結論づけたセイタは、片側のゴーレムを指さしてその旨を伝える。
(……壊せ…って事かな?敵の位置見えないもんね)
セイタの動きを理解した彼女は大きく頷いて立ち上がった。次の攻撃が来る前に、彼らはゴーレムに向かって走り出す。
(これだけ大きなゴーレムだ……核もその分大きよね!!)
人型ゴーレムの核は人間の心臓と同じ。
つまり中心からやや左。
セイタはいきなりゴーレムの正面まで飛び上がり、身体を回転させて核の部分目掛けて回し蹴りを炸裂させた。
「"烈脚撃"」
威力の底上げと、魔法による当たり面積の増幅、何より当たった場所から追撃のように放たれる凄まじい衝撃波が発生する。
いくら魔法で強化された魔鉱石であろうと、内部の核を巻き込んで粉々に粉砕する。
走り出してからここまで、僅か7秒半。
巨大であろうと動かないければただの的。
(……ニアも大丈夫そう)
さすがにこの速さには着いて来れないかと思われたが、ニアも核を壊すのに時間は要らなかった。
「"絶対零度"」
初手で放たれる上級広域魔法。
「大きいだけじゃ意味無いんだよ"氷粉砕"」
全体を凍らせてから核をピンポイントで狙った破壊。
この空間で上級広域魔法を放つ勇気と魔力制御。
どちらにしても簡単にできることでは無い。
核が無くなり、鉱石となって消え去った2体のゴーレム。残されたのは変わらず強化を続けるセイレーンだけとなる。
(……そろそろかな)
(えっと……たぶんもうちょっとだよね?)
しかし、その後の戦闘は長くは続かない。
二人は作戦通り時間を稼いだ。
「……ん…いけ……る」
今まで姿を見せなかったナツが、突如として空中に現れた。
膨大な魔力を纏っているナツに、驚いているのはセイレーンだけ。
「キュアっ!!」
慌てたように攻撃をするも…
「"迅速なる弾丸"」
「"氷結"」
地上の二人がそれを許すはずもない。
そうしてセイレーンはただ、膨大な魔力が形になっていく様を見つめる事しか出来なかった。
死を覚悟するしかない時間とは、一体どのような感覚なのか。この時の彼女には理解出来た。むしろ、彼女にしか理解できないだろう。
「"天の神罰"」
その刹那、セイレーンの姿は光の底へと消えていった。
どうも、深夜翔です。
今回は予告通りボス戦でした。
音が聞こえない状況に、壁役の魔物呼び、定番ではありますが、一瞬の危険も少年にかかれば回避は容易い。
ですがやはり、ボス戦と言えば大迫力の大魔法が鉄板です。ほとんど出てこなかった彼女に決めてもらう、実は時間稼ぎでしたという戦闘も、これはこれでありです。
次回はようやく魔道具完成なるか?!
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




