最後の準備
ズドンッ、ゴロゴロ………
特殊な石で出来た壁の崩れる音が、遺跡内部に響き渡る。
「"迅速なる弾丸・連"」
まだ土煙が収まっていない間に、続けて魔法を撃ち込む。視覚的にも魔力探知でも位置が分からないが、これだけ撃ち込んで置けば、核に当たらずとも少なからずダメージは与えられているはず。
「残ってるゴーレムの数、分かる?」
「……んん。…けど……5体?…かも」
「了解!ニア、手分けして倒そう」
「えっ……ああ、おっけー!」
崩れる壁を見て絶句していたニアは、声をかけたことで現実に戻ってくる。
壁に何か見えてたのかな。
特に変な事はしていないはずだし……。
「…にぃ、分かって……ない」
「えっ?!何を?」
ナツに何故か怒られてしまった。
頭の上にはてなマークを浮かばせたまま、残りのゴーレムを一掃するために動きだした。
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「ふぅ、全員片付いたね」
「うへぇ……今みるとすごい数いたんだねー。先制で数を減らしてくれてなかったら大変なことになってたかも」
「ニアもすごく良かったよ。核だけを狙って氷粉砕してくれたおかげで、魔物化してた鉱石を回収できる」
「鉱石……?あっ!ここに来た目的って魔鉱石を手に入れるためだった!!」
「…忘れてた?」
「えへへ」
「…ニア……あほ」
「うっ」
セイタの魔法と魔鉱石ゴーレムの相性があまり良くないため、攻略にニアがいてくれて助かっていた。
魔鉱石の身体を強化される前に凍らせる、彼女の技量があってこそ楽に倒しきることができていたのだから。
「…にぃ……あそこ、たぶん…」
話しながら鉱石を回収する三人だったが、不意にナツが奥の通路を指さした。
セイタはそれに応じて頷く。
「何があるの?」
「遺跡の核……強化魔法を発生させてるボスがいる」
「へーボス……えっ?ぼ、ボスぅ?!」
「ニア…うるさい……しゃらっぷ」
ボス戦前の緊張感を台無しにされて、ナツがちょっと怒り気味。案外この遺跡攻略を一番楽しんでいるのはナツなのかも。
「鉱石の回収はこんなとこで、奥に進もう」
奥……というよりも、今度こそ通路の行き止まりの大きな扉の先に。
ギギギギギ………。
長いこと使われていなかったような音とともに扉が開く。
今までの通路とは違い、かなり大きな空間と一際強い魔力を放つ中央の何か。
「……人?じゃない、あれって…」
「水霊族……とは少し違う。魔物化したセイレーンかな」
「ま、魔物化?!」
「うん。有名なのは人狼族と狂人狼だけど、他の種族にも魔物化が起きる可能性がある。水霊族とセイレーンもその中の一種なんだ」
ニアにとってはどれも初めて聞くことだらけ。
しかし、兄妹にとってはほんの数日前に魔物化した敵を倒したばかり。説明しながらも、セイタは頭が疑問で溢れていた。
(こうも立て続けに魔物化した種族と出会うことになるなんて……偶然?それにしては…)
広い空間で立ち止まるセイタだったが、セイレーンはまだ三人の存在に気がついていないのか。
目を閉じたまま微動だにしない。
「あれ?あのセイレーン、何か持ってるよ」
「あれが遺跡の核、強化魔法を使ってる媒体だ。彼女が魔物化してしまったのも、もしかしたらアレのせいかも」
「セイタっ。魔物化って戻せないの?」
「それは無理だよ。一度魔物になってしまったら、二度と戻ることは無い。何より魔物は倒したら身体は魔力になって消えてしまうから…残るのは魔石だけ」
「そ、そんな……」
「キ…キュアァァァァ!!」
「気づかれた!」
甲高い叫び声が空間内に響く。
同時に辺り一面の魔力が不自然に動き始める。
「な、何……変な音」
「ナツっ、結界を!!」
「"防音壁"」
異変に気がついたセイタは、迷うこと無くナツに指示を飛ばす。その指示に、全てを理解してナツが結界を張る。
瞬間、三人は外の音が一切聞こえなくなった。
「えっ?!今度はなに?!」
「これは安全な結界だから安心して。ナツもありがとう、凄い早かったよ」
「…ブイ……」
手を伸ばしてピースする妹を撫でる兄。
魔物の目の前にいるとは思えない空間が作られる。
「セイレーンは、歌や言葉といった"音"を使った魔法を得意とする魔物なんだ。セイレーンの歌には人を魅了する力があるっていうのは聞いた事あるでしょ」
「じゃああの音は……」
「たぶん、あのまま聴き続けてたら危なかったと思う。魅了自体は直ぐに解除できるけど、効果が魅力だけだとは限らないし」
「ど、どうするの?!ここから出たら防ぎようが無いんじゃ…」
「大丈夫。二人ともこれをつけて」
セイタが用意していたのは、耳に収まる程度の小さな円柱の物体。
耳栓だ。
「これでも防音の付与がされてるから、どれだけ大きな音も通さない。音さえ聞こえなければ、セイレーンの攻撃は無力化できる」
「わ!凄い!!用意周到だね」
「たまたま昔に作った物を持ってただけだよ」
セイタは嘘と事実が入混ざった言葉で返した。
昔に作ったというのは事実、たまたま持っていたのは嘘。
持っていたのは、セイタが普段、一人でゆっくりしたい時に使っていたから。本人もまさかこんな場面で役に立つとは考えてもいなかった。
「にぃ……でも…それ…指示が……」
「うん。戦闘中に音が聞こえなくなる。だから、二人には今から伝える作戦で動いて欲しい。音が聞こえないといつも以上に集中力を使うから、なるべく早期決着の方法を教えるね」
声が届かないため、その場での連携が不可能。
耳栓に通話機能をつけておけば良かったと、彼が謎の後悔をしていたのはニアには分からない。
セイタはできるだけ詳しく、簡単な説明で作戦の内容を二人に伝える。
「分かった!」
「…ん、りょー…かい」
やる気充分、内容もきちんと伝わった様子。
「開始は5秒後、行くよ」
全員が耳栓をつけた事を確認し、セイタが指でカウントする。
5…4…3…2…1……
0。
同時、結界が消えて三人は一斉に飛び出した。
どうも、深夜翔です。
前回、次回はボス戦だと言いました。
ボス戦(目の前で準備)なので、実質ボス戦ですよね。
このままボス戦まで書こうとすると倍以上の長さになってしまうので、今回は許してください…なんでもしm
今度こそ、次回はボス戦です!!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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ではまた次回……さらば!




