先は長い
ジャックが魔法使いになり意気込んだまま寝てしまったころ蓮は屋敷に帰りました。
「おーい、ウェイトさんいるかー?あ、ウィズさん、ウェイトさんいたら修練場で俺が読んでいることを伝えてください」
蓮はそれを言い残し修練場へ駆け出して行きました。
「呼んだ?」
蓮がストレッチをしているところにウェイトがやってきました。
「遅くなってごめんね、書類片付けてたの」
「いや、全然大丈夫です…だいぶ話し方砕けましたね?」
「あ、うん。こっちが素だよ、初対面の人だとどうしても緊張しちゃってね」
このままのんびり話しても話題が進む気がしません。
「あ、なんで呼んだの?」
「えーと……今日冒険者ギルドで試験受けてた時にそういえば俺武器ないなってなって、確かに気の効果は凄いけど刃物持った人に素手で挑む程度胸ないしどうしようってなって」
「あ、なるほど!じゃあついてきて」
蓮はウェイトに連れられて倉庫にやってきました。
「ここはアスト家の倉庫、武器とかメインに置いてるからなんか使いたい武器あったら教えて?」
「なら、銃とかはあります?」
蓮が質問するとウェイトは困ったように笑いました。
「あるにはあるけど、ほらこれ、リボルバー?っ言うんだっけ?」
ウェイトはそう言うとリボルバーと袋を蓮に投げ渡しました。
「その袋に弾が入ってるよ、銃は常人に使うならなんにも問題はないけど、魔物や魔力、気習得者には全く威力が足りない。僕に撃ってみて?」
「エアガンしか触ったことないけどまあいいか。念のため下腹部狙います」
蓮はウェイトの下腹部に狙いをつけリボルバーを撃ちました。
「ほれっ」
ウェイトは弾丸をつかみました。
「さすがにこれはどこを狙ってるか分からないとできないけど、そこそこの気の習得者であれば撃たれても打撲くらいで済むね。まあ護身用くらいにならちょうどいいね。いる?弾丸は作ってる人いないけどウィズ様にお願いしたら多分作ってくれるから」
「ください、超ください、リボルバーは男のロマンなんで!」
蓮は食い気味に答えました。
「うん、後はメインとなる武器を選ぼう」
そう言うとウェイトは訓練用の刃を潰した剣、ナイフ、戦斧、そして弓、盾を持ってきました。
「この中でしっかりくる武器を選んで、そしたら、使い方を教えるから」
「じゃあこの戦斧をってさすがに重いか。日本刀が有れば選んだけどこのナイフでいいや」
「日本刀?まあいいか、とりあえず修練場に行こうか」
修練場に着くとそこにはジェーンがいました。
「剣の練習にてつだえ!」
「分かりました、蓮が相手をします、いつも同じ相手だと変な癖がつくし」
「おい待て、俺勝てるのか?なんか強そうなんだが?」
蓮の抗議も虚しくウェイトに必要最低限の構えを教えられ、修練場の中央に運ばれて行きました。
「言っておくとこの俺、ジェーンアストはかなり強いぞ?本気でこい!」
「はーい、まあやれるだけやってみますか」
ジェーンが跳ねるようにして蓮の真上まで移動しました。蓮は後ろに下がるとジェーンも空中を蹴りさらに近づき剣を振り下ろします。
「いった!おい、なんだよそれ?チートだろチート」
蓮ははナイフを左手に持ち替え、右手を開き斜め上に構えました。再びジェーンが跳びつきます。蓮は一歩踏み込み剣を振り込もうとしたジェーンの腹をナイフを持った左手で押し、バランスを崩したジェーンの服の袖を掴みナイフを押し付けようとしました。
「危なっ」
ジェーンはそう言うと地面に落ちながら蓮の腹を蹴っ飛ばしました。
「なんだよもー!」
ウェイトが蓮のそばまで走り腹に触れ、回復魔法をかけました。
「一応応急手当てはしといたよ、もし違和感が続いたらウィズ様にお願いしてしっかりした回復魔法をかけてもらって」
「おい待て、ウェイトおまえ回復魔法も使えたのかよ」
ウェイトは蓮の質問に軽く笑ってジェーンの方を向きました。
「ジェーン様、どうでした?」
「いっつも剣の相手ばかりだったから少し慣れなかった、あと足を掴まれた時には少しびびった」
脳筋感のあるジェーンですが剣に置いては頭も使えます。
「はい、まずナイフは剣に比べて身軽に動けるので上から跳んで斬りつけるのは悪手です。格上だと蓮のように腹を蹴る余裕もなく斬られます。あと蓮はやっぱり気の出力が低いよね。そこさえクリアすればできることは多いし頑張って、後で寝る前に手軽にできる気のトレーニングの仕方を教えるから」
ジェーンも蓮も先は長いようです。