試験
蓮が訓練場に来た時もう既に五人人がいました、30代後半のようなスキンヘッド、蓮と同年代、つまり16歳の少年2人と少女1人、そして受付嬢1人でした。
「あの受付嬢美人だな……」
蓮は思わず口に出してしまいました。スキンヘッドからは興味の目で、少年少女からは敵意の目で見られてしまいました。ここは思っても口に出すべきではありません。
「全員きたな、俺が試験官、元Sランクのドランだ。お前らの名は?」
この世界のギルドのランク制はFから始まりAに向かい、S、特Sランクへ上がるようになっています。つまりドランは上から2つ目、特Sは神話級の化け物なので実際まともな人類では最強候補でした。めちゃくちゃ凄いです。
「俺は、ハンズだ……」
髪の毛ツンツンの少年が言いました。背中には剣と盾を身につけています。
「僕はショルダ……」
気弱そうな黒髪の少年が言いました。背中には大楯を身につけています。
「私はリップよ」
少女が自信を持って言いました、腰には杖がぶら下げられています。次は順番的に蓮の番です。
「俺は、蓮」
思いっきり緊張しています、そりゃそうでしょう、目の前にかなりヤバそうなハゲがいるのですから。少年少女達は蓮を軽蔑の目で見ていました。
「よし、じゃあこれから試験を始める、内容は簡単この俺と戦うこと、俺は極力怪我をさせないように手を抜く。何か質問は?」
ドランがいいました。
「はーい、蓮です。冒険者は主に魔物と戦うのに何故人と戦う?」
蓮は正直に聞きました。
「おい、お前、それはそうゆう物だろ!」
ハンズが言いました、何も考えていなさそうです。
「冒険者は確かに魔物と戦うことの方が多いが人と戦うこともある、よって人と魔物両方に対応できる能力が求められるからだ、まあそれ以前に魔物持ってくるよりそこそこ実力ある人間が見たほうが安くつくってのもあるな。これでいいか?」
ドランが答えました。蓮は少し考え、納得しました。
「ああ、分かった、それじゃあ試験を始めてくれ」
蓮の緊張がほぐれてきています、慣れるのがとても早いです。
「じゃあハンズ、来い。」
ハンズは右手に剣を、左手に盾を持ちドランに走り込みました。
「シャアッ」
ハンズはドランの背後に躍り込ようにして切り込みました。ドランはハンズに踏み込み、ハンズの盾と触れ合うほど近づきました、ハンズの剣は己の盾に阻まれました。
「そこまで、Fラン合格だ、身体の使い方は上手いがパワー、スピードともに低い、気などを習得し上昇を図れ」
偉そうにドランは解説しました、えらいですからねドランは。ちなみにドランは冒険者ギルドアスト支部長です。
「次、ショルダだ、大楯使いに来いと言ってもアレだから俺から行くぞ」
ドランは大楯を構えたショルダに蹴りかかりました、いわゆるヤクザキックです。
「うっ……はっ!」
ショルダはドランの蹴りを大楯を肩で支えながら受け、ナイフで反撃しました。
ドランはショルダのナイフを掴みました。
「そこまで、攻撃の受け方は良かったが反撃の時迷いがある、あとはハンズと同じく気を習得しろ、Fラン合格だ」
次はリップの番です。
「次は私ね!」
「お前は魔道士か?多分そうだな、じゃあ来い」
リップはドランから背を向け走り、距離をとってから呪文を唱えました。
「詠唱完了!マナ・インパクト!」
ドランに白い魔力弾が向かいました。ドランは半歩移動して避けリップのところまで踏み込みました。
「そこまで、合格だが別途魔術師講習が必要だ、初級魔法でそこまでの威力が出るのは称賛に値するが、それだけだ、相手から目線を離すな、背を向けるのは論外だ、詠唱が長すぎる、せめて5秒程度にしろ」
次は蓮の番です。
「俺この雰囲気で試験受けるの怖いんですけど……」
「お前の武器は何だ?」
当然の疑問です、蓮は作業服のような物を着て、武器の類は一切身につけていないからです。
「あ、そうだ、一応徒手空拳でお願いします、これでも護衛志望なので……」
蓮は気を全身に張り巡らせドランに踏み込み、ローキックをかましながら通り抜けて行きました。ドランはローキックを半歩移動することで避けカウンターをかまそうとしたらもう既にに距離をとっている蓮をみました。
「ほう……気の習得者か、それだけではなく動きに迷いがない……センスはあるようだな」
蓮はドランの1メートル前にまだ距離を詰め、フェイントをかけ、半歩後ろに下がりました。ドランはフェイントを無視し、直接蓮に殴りかかりました。蓮は5メートルほど吹っ飛びました。
「悪い、力を込めすぎた、蓮、Eランク合格だ、気を習得してからどれくらいたった?」
「えっと……十二時間くらいです」
蓮は答えました。
「嘘だ!こいつは自分をよく言ってランク評価を高くもらおうとしているんだ!」
ハンズとリップがいいました、かなりうるさいです。
「いや、それはないな、蓮は確かに平気で嘘をつくような人格をしていそうだが、この俺の前で嘘をつけるほどの度胸はない。習得してすぐにそれほど動けるのなら二年以内にCランクも目指せるぞ」
「ありがとうございます!」
蓮は喜びながら冒険者証をもらいました。