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ガラスの満月<ミヅキ>  作者: ミホリボン
第1章
5/35

3球目 「素人2人」


ーー1年1組 教室ーー


「疲れたー!」


満月(みづき)の体が机へと倒れこむ。


3時間近くかかった入学式の後、クラスメイト総勢39名の自己紹介を終え、解放されたのは13時半であった。


「お疲れ満月(みづき)ちゃん、私も自己紹介するの緊張しちゃって疲れちゃったよ〜」


カバンを机に置き、満月(みづき)の前の机で帰る準備を進めるのは果凛であった。


「同じクラスで席も連番なのは驚いたよ、考えてみれば島内と小宮山は近いからね」


「それにしても果凛、富士村シニアに入団した時ぶりの “カミカミ自己紹介” だったねふふ」


満月(みづき)はカミカミ自己紹介を思い出し、ついニヤけてしまう。



***


(こ、こみゃ!......こ小宮山果凛です! と戸山西(戸とやまにし)中学校出身です!すす好きな教科は......数学です!よろしくお願いします!)


***



「し、し、しょうがないよ、自分は人見知りだってことはよく分かってるから!満月(みづき)ちゃんの方こそ私の自己紹介の番まで寝ぼけてたの知ってるんだからね?」


「え?あ〜、あははは....見られてた?」


満月(みづき)が苦笑いを浮かべた、その時であった。


「しまうちさあああああああああんんん!!!!」


教室の後方ドアから怒鳴り声が聞こえた。“しまうち”はクラスに自分以外いない。満月(みづき)を呼んでいたのは確かであった。


満月(みづき)はゆっくりと声のする方へ振り向く。怒鳴り声がした先にいたのは、後方ドアに手をかけながらこちらを見る赤茶髪の女の子であった。


「...誰?」


心当たりがない満月(みづき)を側に、赤茶髪の女の子は満月(みづき)の元へと駆け寄る。


「君が島内満月(みづき)さん?まんげつ、とかいてみづき!」


女の子の勢いに押されただ頷くことしかできない満月(みづき)の手を取り、女の子は話を続ける。


「一緒に野球、やろう!!!」


満月(みづき)は目をパチパチとさせるだけで動かず、果凛の目も点となり固まったままである。


「......あー、自己紹介がまだだった!わたしの名前は本間 始音(ほんましおん)!島内さんのことについては功太(こうた)から聴いてるよ!” すっぽ抜けピッチャー “ だって!」


功太と聞いた瞬間、顎が外れたかのように2人の口が開いた。


知らないはずがない。功太はかつて富士村シニアでキャッチャーをやっており、満月(みづき)とバッテリーを組んでいた事もあったのだ。


「......あのヤロー覚えておけよ......」


誰にも聞こえない程小さく薄れた声で満月(みづき)は呟いた。その後、自分の手を取った紫音の手を、今度は満月(みづき)が両手で手に取る。


「やろう!私も野球上手いって訳じゃないけど......ポジションはどこをやってたの?」


「まだ野球やった事ないんだー、プロ野球はよく見てるけど!」


最初は驚いた2人であったが、一呼吸置いて果凛が口を開けた。


「わ、私も中学校から始めたから.......うん、紫音ちゃんの野球へのやる気があれば全然大丈夫だよ!」


満月(みづき)もこの言葉に頷く。


「ちょ、ちょっといいかな......?」


声に一番近い果凛がその声の方へ振り向く。


「あっ、あなたは同じクラスの......」


「五木理子です。わたしも未経験者だけどちょっと興味あるの.....話聞いていてもいいかな?」


そう3人に話しかける理子は、始音の赤茶色を少し茶色に染めた色をした満月(みづき)より髪の長いポニーテールで、目がぱっちりとしていた。


理子の言葉を聞いた 3人は目を丸くし、理子に詰め寄るであった。


「ポジションはどこ希望???キャッチャー?ファースト?あっ本間さんも一緒に決めてーーー


「あっもう一回自己紹介しておくね。わたしは小宮山果凛、こっちがーーー


「未経験者歓迎!わたしもそうだ!未経験者同士助け合って頑張ろうではないか!」


元気溌剌(はつらつ)な4人の声が、1-1の教室で飛び交う。


その様子を、教室の後方ドアから1人の少女が睨みつける表情で覗いていた。

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