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ガラスの満月<ミヅキ>  作者: ミホリボン
第1章
4/35

2球目 「四の顔を持つ一本道」

***



9回裏2アウトランナー2、3塁。


この日7回から投手として登板した島内 満月(みづき)は、毎回ランナーを背負いながらもピンチを抑え、チームメイトが作った3-2というリードスコアを死守していた。


満月(みづき)が所属する中学男女混合野球チーム ”富士村シニア“ のライトには小宮山 果凛が守る。富士村シニアの3点の内1点は、果凛がスクイズで入れた点数だった。


あと一人アウトにすれば試合終了のこの場面、満月(みづき)が投げた球はキャッチャーの遥か上に弧を描くすっぽ抜け。ランナー2人がホームへ生還し、チームは逆転負けを喫したのであった。



***


「う、うう......」


沸騰したやかんは火を吹かなくなったが、やかんの中身は沸騰したままである。


果凛もここまでになるとは思わず、赤面の満月(みづき)を励ました。


「ん?」


果凛の鼻に花びらが落ちる。その花びらを見ると果凛はすぐさま首を上に向けた。


満月(みづき)ちゃん、上見てよすごいから!」


一本道の両側の路側帯には等間隔に桜の木が植えられていた。 入学式の時期、2人が住む埼玉県は丁度桜が散る時期であった。


「すごいよ、桜吹雪!」


「お、おお、おおおおおお!!!」


上を向いた満月(みづき)も驚きと興奮が混じった声を出す。 話に夢中で桜に気づかなかった2人は、いつの間に桜吹雪に閉じ込められていたのだ。


「ここは季節によって4つの顔を見せるのよ」


そう呟いたのは、2人の興奮を側から見ていたおばあさんであった。


「あ、おはようございます!わざわざありがとうございます!それにしても4つの顔って......?」


いきなり声をかけられあたふたするも果凛は聞き返す。


「ここに植えられている木は全て桜の木なの。春はこのように桜を咲かす。夏は葉っぱの衣を着けて、秋は衣を紅く染める。冬は衣を脱いで...四季によって姿を変えるのよ。」


「あなたたちそこにできた新しい高校 “三吉女子高校”の方々でしょう?」


2人はおばあさんが指した方を向く。そこには「三吉女子高等学校」の文字が書かれた看板が見えていた。


あっ!と満月(みづき)が言うと果凛もスマホを見て、時間がないことに気づく。


おばあさんに手短にお礼を伝え、2人は桜吹雪をかき分け、校門へと駆けて行った。



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